雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

風の行方・原発回帰  あの時の教訓はどこに生かされたか 

2023-02-11 06:30:00 | 風の行方・原発

風の行方・原発回帰  あの時の教訓はどこに生かされたか

原発の運転期間は、2011年の福島第一原発事故後の原子炉等規制法が改正され、
原則40年。
原子力規制委が認めれば20年延長できると定められ、
最長で60年の運転が認められた。

事故以降、歴代政権は原発への依存度を低減する方針を掲げてきた。
岸田首相は再稼働を進める一方で、
新増設や建て替え(リプレース)は現時点では想定していないとしてきた。
新たに建てなければ、いずれ原発はゼロになる。

新増設に転換すれば、将来も長期にわたり原発に依存することになる。
原発は自然淘汰され、再生可能エネルギーが普及していくのか。
それとも、地球温暖化問題で脱炭素を理由に復活し、電力の安定供給に舵を切るのか。
  
福島原発1号機水素爆発の瞬間(2011.3.12午後3時36分)と崩壊した建屋。
左写真は『福島中央テレビ』の映像で、全国放送された。
日本記者クラブ特別賞を受賞。

原発回帰(原発政策の転換)
  あれから11年が過ぎた、2022年秋、突然のように原発政策の転換が示された。
  原発の新増設や建て替えを検討し、
  原則40年の運転期間の延長も検討すると。
   脱炭素の加速化や、ロシアのウクライナ侵攻に伴いエネルギーの供給が不安定になっている。
    電力の安定供給は喫緊の課題だろう。
    しかし、11年前の福島第一原発事故の痛ましい人災事故を忘れてはいけない。
    3基の炉心溶融(メルトダウン)は、日本だけでなく、
    世界をも震撼させたほど甚大な被害をもたらした。
    「在日アメリカ人は本国に帰国すべし」と友好国のアメリカは最大の危機感を持った。
    周辺の住民は故郷を追われ、23年の現在でも帰還困難区域に指定され、
    避難を余儀なくしている人々も多い。

         帰還困難区域の除染もままならず、廃炉などの事故処理の見通しさえつかない。
    汚染水の海洋放出は漁民の反対にあい、保証金をちらつかせながら見切り発車をせざるを得ない。
    高レベルの放射性廃棄物は、
   最終処分地が決まっていない。
   放射能が十分に下がるまでに数十万年もかかるといわれている。
   こんな危険なものを地下深く埋めて、だれが責任をとれるのか。
   使用済み燃料のプルトニウムは核兵器の材料になるから、国際的に厳しく管理されていて、
   日本はプルトニウムの減量を国際公約しているのだが、
   高速炉の開発は、巨費をつぎ込み、挙句の果てにとん挫したままだ(バックエンド問題)。
   経産省の試算によれば、2030年に新設の原発は、事業用の太陽光発電よりも割高になる。
   加えて、新型炉には開発初期のリスクもある。

   原発のコストは規制の厳格化などにより、高騰している。
   原発事故前に1基約4千億円だった建設費は事故後、欧米などでは1兆円を超えるという。
   新規建設はもはや、国による補助なしには成り立たず、国民負担はまぬがれない。

   ざっと上げただけでも以上のような難問がそろっている。
   原発関連の反対運動が起きれば、政府は札束で頬を打ち強引に政策を推し進めてしまう。

   脱炭素問題やロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機を踏まえて、エネルギーの安定供給
   に舵を切る。
   昨年暮れには、原発が再稼働に必要な審査などで停止している期間を除外する改正案を提出。
   つまり、最大60年とされた運転は、仮に運転停止期間が10年あれば、
   最長で70年間運転できることになる。
   
そうして、廃炉を迎えた原発の代わりに新しい原発をつくる「建て替え」を進める
   方針も明らかにした。
      まとめ・自民党総合エネルギー戦略調査会の骨子
           原発の新増設・建て替えを推進する。
           運転期間の延長。
           使用済み核燃料の処理(バックエンド問題)の推進。
  
 あの悪夢のような11年前、
 
浪江町に住んでいた佐藤さんは
 「原発が爆発して2回も避難した。これからどうなってしまうのだろう」と不安をつぶやく。
 「俺、ちと長生きしすぎたな。いやなもの見ちまった」と被災直後の4月、
 飯舘の自宅で、104歳の命を絶った大久保さん。104歳まで生きて、最後の選択に「自死」を
 思うとやりきれない。(2022.12.24朝日新聞天声人語参照)

  当時の記録や被災者の声を改めて読み直せば、被災者の声が、現在でも生々しくよみがえってくる。
  原発事故からたった11年、その傷も癒されぬうちに、
  前述のような大きな問題を抱えたまま、原発回帰・推進に舵を切る岸田政権に、
  いったいこの国のリーダーは、国の未来にどのような設計図を描いているのだろうと不安になる。
  世界を震撼させた原発事故の教訓はどこに生かされたのだろう。

        (風の行方・原発№42)             (2023.0210記)
  
 


         

   

 


   


   

 

 


    

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どうする 原爆6千発分…

2018-07-22 17:30:00 | 風の行方・原発

どうする 原爆6千発分…
  行方定まらない難破船・原子力日本丸

  核燃料サイクル
  原発の燃料として使用したウラン(使用済み燃料)を再処理工場
  (青森県・六ヶ所村)でプルトニウムを取り出し、
  高速炉で再び発電に利用する。
  しかし、このプルトニウム消費の本命である高速炉は、
  原型炉「もんじゅ」の廃炉で開発が行き詰まった。
  「資源を輸入に頼る我が国にとって有意義な原子力政策」と位置付けていた。
  さて、残るはもう一つの原子力政策である、
      プルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料を原発で燃やすプルサーマル計画であ。
  この計画も福島第一原発の事故を境に停滞している。

  核燃料サイクル政策が破綻してしまうと、
  原発政策を推進する意味もなくなってくる。


 プルトニウムの問題点
    ① プルトニウムは原爆に転用できるため、
      核不拡散条約の下では非核保有国による再処理は許されない。

                ただ一つの例外が日本である。
      日本とアメリカの間で締結されている「日米原子力協定」が「核燃料サイ
      ク
ル」を認めているからだ。
      使うあてのなくなったプルトニウムの所有は諸外国の批判を浴びて当然だ
う。
      諸外国にしてみれば、
               「日米原子力協定」で日米双方が結んだ協定なのになぜプルトニウム
      の保有について日本だけが特別扱いされるのか理解に苦しむ。
                (トラの威を借るキツネ・コバンザメなどと有り難くない名称を授けられる所以だ)

    ② 原爆6千発のプルトニウムを保有する。
      (国内に10㌧、英仏に37㌧のプルトニウムを所有する日本) 
      核拡散やテロの標的にさらされる危険性を考えれば、
                国際的な批判は当然のことだと思う。
      気まぐれなトランプがカードの選択を変えてしまえば、
      わが国の核燃料サイクルはたちまち破綻してしまう。
      危ない綱渡りの政策は危険である。
      依存度が高ければ高いほど日本の自立性は失われていきます。


    ③ 核燃料サイクルから撤退するということは……
      青森県・六ヶ所再処理工場運転開始は閉ざされてしまう。
      地元自治体の財政や雇用状態にも影響が出る。

      全国の原発から集められた使用済み核燃料は、利用価値を失い、
      放射能廃棄物として処理しなければならない。
     
      だがここに大きな問題が浮上する。

 歴代の青森県知事と経済産業省の約束。
 「青森県を廃棄物の最終処分地にしない」

 

 

 

 

  もしも、六ヶ所村再処理工場が使用済み核
    燃料を再処理できない状態になるなら、
  県は「原発から集めた核廃棄物をもとの所有者に引き取ってもらう」と
  牽制球を投げている。

     行方の定まらない難破船・原子力日本丸のかじ取りを、
     安倍政権はどのようにしていくのか、私たちはこの舵取りを
       厳しい目で見つめていかなければならない。
            (2018.7.22記)
  (風の行方№41
) 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原発・残余のリスクとハインリッヒの法則 ①

2018-05-19 07:57:19 | 風の行方・原発

原発・残余のリスクとハインリッヒの法則 
 ① 原発を取り巻く状況と残余のリスク
 第5次エネルギー基本計画の原案によると、
  政府が2030年度にめざす原発比率を20~22%とすること。
  そのために必要な原発の稼働は約30基程度を稼働させる必要がある。
  現時点では8基が稼働しているのみで、
  はたして再稼働反対の国民の意志に反する再稼働の目標を達成することができるのか。
  この基本計画原案では、
  「原発への依存度を可能な限り低減させる」としながらも、
  「重要なベースロード電源」と従来の基本計画と変わらない位置づけをしている。

  プルサーマル発電や原発輸出も
  「世界の原子力の安全向上や平和利用などに積極的な貢献を行う」として、
  原発政策に積極的に取り組む姿勢を推進するようだ。

  福島第一原発の事故の混乱を忘れたわけではあるまい。

  拡散された放射能の恐れや不安は今なお被災者を苦しめ、
  故郷さえフレコンバックの仮置き場として、
  先の見えない原発政策の犠牲となっている。

  原発の危険性を指摘されると、
  「世界一厳しい原発規制」だからと、新原発神話をお題目のように言うが、
  具体的に日本の原発規制を世界の規制と比較した説明を国民に明示したことはない。

 残余のリスク
  最高の科学技術ゃ頭脳を持ってしても、「完全なもの」など作れるわけはない。
  二重、三重の安全セキュリティーを追求した原発でも、これを扱うのは生身の人間だ。
  ヒューマンエラーという考え方がある。  
  安全を極めてなお、
  事故は絶対に起こらないとは言い切れないことが、
  原発事故ではよく起こる。

  安全を極めてなお
  残余のリスクを内包していることを忘れてはならない。

  原発のような制御不可能なものは作ってはいけないのだ。

  フクシマの悲劇を二度と起こしてはならないということが、教訓なのだ。
  その教訓を生かすことができなければ、
  かけがえのない命を奪われた人々や
  故郷を失った人々に何と説明していいのか
  私は分からない。

            (つづく)
         (2018.5.14)    (風の行方№39)
                    次回は「ハインリッヒの法則」について述べます。
読者の皆さんにお詫び
      ①と②を間違えてアップしてしまいました。
    
  ①(残余のリスク)は後日アップします。
      ②は5/16にアップしています。




 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原発・残余のリスクとハインリッヒの法則 ②

2018-05-16 08:03:29 | 風の行方・原発

原発・残余のリスクとハインリッヒの法則 
 ②潜在的危険・ハインリッヒの法則
 「重要なベースロード電源」である原発は、再稼働の反対を押し切って
 現在8基が稼働している。
 稼働していない原発はどうか。
 例えば新潟県柏崎刈羽原発の場合。(朝日新聞科学者接担当・村山知博記者の記事引用)
  ひろい構内を車が行きかい、放射線管理区域のゲートを作業員らが出入りする。
  原子炉の周りやタービン建屋など、あちこちにひとの姿がある。
  原発が動いていなくても6千人が働いている。 
 
 取材に訪れた村山記者は、
 長いこと稼働していない原発に携わっていて、作業員の士気の低下につながらないか。
 単純な質問だが東電社員から帰ってきた答えは重い。
 「士気は大丈夫ですが、長期にわたる運転停止はリスクです」

 
 士気の低下は、施設内の訓練や研修等により維持できるが、
 マンネリは大きなミスを併発する原因となる。
 訓練や研修を続けても所詮は「本物ではない」物への試みだ。
 
 錆びによる腐食やネジやバルブのゆるみなど思わぬことが事故に繋がっていく。
 記者が、「士気は大丈夫」かとした裏には次のような小さな事故があったからだ。
   2018.3 九州電力玄海原発3号機 蒸気漏れトラブル
                 7年3カ月 ぶりの再稼働から1週間後の事故だった。
                 九電は「機械を長く止めているのはリスクが大きく、
                 緊張感を持っ再稼働に臨む」としていたが、
                 トラブルを防ぐ瀬ことはできなかった、と記事は報告する。
   2015.8 九州電力川内原発1号機 2次冷却系に海水が混入。細管5本に穴が開いていた。
                 再稼働9日後のトラブル
   2016.2 関西電力高浜原発4号機 変圧器周辺の設定ミスで緊急停止。
                 再稼働3日後のトラブル
   そして、最も新しい再稼働におけるトラブル
   2018.5 関西電力大飯原発4号機 蒸気発生器の水位の低下を知らせる警報が鳴る。
                 再稼働2日目のトラブル。(問題のないことが確認できれば予定通り
                 11日夕から発電・送電を始める。14日現在予定通り再稼働された)
  ハインリッヒの法則
     一つの重大事故の背後には29件の軽微な事故と300件の異常がある、という説。

   事故と言えないようなトラブルだが、
   侮(あなど)るなかれ再稼働に携わる人々よ、
   心して気を引き締めて欲しい。
   この法則が決して実証されてはならないのだから。
           (2018.5.14記)    (風の行方№40)
         
読者の皆さんにお詫び

      ①と②を間違えてアップしてしまいました。
    
  ①(残余のリスク)は後日アップします。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原発問題どうすればいいのか 8党公約

2017-10-21 16:22:47 | 風の行方・原発

原発問題どうすればいいのか
 8党公約(要旨)
自民党
原子力は安定性に寄与する重要なベースロード電源。
原子力規制委員会による世界最高レベルの新規制基準に適合すると認められた場合には、立地自治体等関係者の理解と協力を得つつ、原発の再稼働を進める。

希望の党
新規原発の建設は認めない。40年廃炉原則を徹底。
2030年までに、「原発ゼロ」を実現。
原発の再稼働は認めるが、再生可能エネルギーの比率を30%まで向上させるための、開発導入支援を行う。

公明党
原発の新設は認めない。省エネルギーや再生可能エネルギーの最大限の導入を図る。
火力発電の効率化を計る。
原発に依存しない社会・原発ゼロを目指す。

共産党
再稼働は認めない。再稼働した原発は停止させる。核燃サイクルからは直ちに撤退。
原発輸出をやめる。2030年目標に電力の4割を再生可能エネルギーでまかなう。
被災者生活再建支援法の支援金を300万円から500万円に引き上げる。

立憲民主党
原発ゼロは、未来に対する私たち世代の責任だ。
再生可能エネルギーや省エネ等の技術開発によって、もはや原発ゼロはリアリズムだ。
原発ゼロ基本法を策定。

維新の党
原発再稼働には五つの条件を盛り込んだ法整備が不可欠
① 安全規制の制定。②原子力損害賠償制度の確立。③避難計画策定への国の関与。④地元同意の法定化。⑤使用済み核燃料の最終処分を内容とする「原発再稼働責任法」を制定する。

社民党
被災者生活再建支援制度の上限を500万円にする。
再生可能エネルギーの割合を50年までに100%にすることを目指す。
核燃サイクル計画から前面撤退。

日本のこころ
被災者の自立を徹底支援。

原発政策については、どの党の政策についても一長一短があり、どの党の政策がいいというものではない。ただ、私としては、原発を推進する政策には、反対したいと思う。反対しながらも、実現可能な内容を持つ政党を選びます。
原発反対政党であればどの党でもいいかといえば、やはり「憲法」「経済・社会保障」「原発・復興」「教育」「外交」「安全保障」など、総合的に判断して一票を投じたい。
本音をはけば、少々しんどいと思うが、これは選挙民に託された義務であり権利だから、今夜一日よく考えたい。
  (2017.10.22記)      (風の行方№38)


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「原発事故の賠償費」 何故私たちが負担しなければならないのか(3)

2017-04-28 23:20:45 | 風の行方・原発

「原発事故の賠償費」
       なぜ私たちが負担しなければならないのか(3)
          東電と朝日新聞の対応
  
前回(2)に示された図・電力七社が電気料金で回収する福島原発事故の賠償費をによれば、
   東京電力の場合、1年度あたり一般負担金の額を567億4030万円としている。
   これは、あくまでも朝日新聞の試算であるが、
  上記の金額をどのように回収するのか、前回のブログの内容の最後の部分を再掲載します。
  
  この試算によると一世帯当たり1年で587~1484円ぐらいになるらしい。
  しかし、前にも述べましたがこうした金額は各家庭に配布される料金の内訳が書いてある
  「検針票」には載せてありません。
  一世帯当たりの負担額を筆者の家の電気料金に当てはめて計算すると次のようになります。
  関東地方の筆者は東京電力管轄になります。
  3月の検針票によれば1カ月の使用料は255KWhになります。
  計算式は以下のようになります。
  1カ月の使用量(255kwh)×0.25円=63.4円
   3月は月額63.4円の負担になるわけだが、請求金額に含まれている様子が感じられません。
   1年分の金額は 63.4円×12カ月=761円となる。
    
  検診票にはこのことには一切触れいない。
  新聞記事も徴収方法については具体的に触れていない。
  何度も記事を読み返し、推測できることは新電力の託送料金に上乗せする。
  電気会社が出した利益は、従来であれば電気料金の値下げとして消費者に還元するのだが、
  それをしないで、賠償費に充てるということなのだろうか。
  この記事も、一番肝心な部分で不親切である。

  以上が再掲載部分ですが、算式に基づけば私の家の3月の負担額は63.4円だがこれは、
  電気使用量によって違ってくる。
  しかし、検針票にはこの金額は表示されていない。

  どのように回収されるのか?
  
  それで、検針票の「お問い合わせ先」に電話する。
  先方が出たところで、
  私は一般消費者であり、特定の団体等に所属するものではないこと、

  この電話はクレームのための電話ではなく、個人的な疑問を解消するための電話であることを申し上げる。

  ○○新聞では、一般消費者家庭の電力消費量に対して、
  どのくらいの賠償費を負担しなければならないのか、
  その数式が出ているが、何故御社では負担額を検針票に掲載しないのか?

  返ってきた答えは、新聞社独自の計算方式で東電とは一切関係ない。

  木で鼻をくくるようなそっけない対応である。
  質問の答えになっていないことを言っても、「関係ない」の一点張りだ」
  原発事故が発生した当時、パートの検針員まで、
  「この度は、皆さんに大変ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした」などと言わせ
  平身低頭した当時の姿勢は何だったのか。
  
  新聞社の記事は、東電と関係がないと言うのなら、東電としての「原発事故の費用負担」についての
  見解を教えてほしい。
  
  上記の問いには答えないで、
  「お客様番号」を教えてくださいと、またしても話のすり替えだ。
  教えるのはやぶさかでないが、どうして身元の特定ができる「お客様番号」が必要なのか。

  解りやすい説明をするために、お客様の個人情報が必要なのです。
  それなら、私の一か月分の電力消費量と料金内訳がわかればよいわけですね。
  「お客様番号」がなくても、電話のやり取りで説明できると思いますが……。

  以上のようなやり取りが、約1時間近く続き結局、私が納得できるような回答は得られなかった。

  最後の言葉は極め付けだ。
  「原発事故の賠償費ばどのようにして確保するのか、御社の見解を教えてほしい。解らない訳はないですよね」
  上司に伺ってきます。
  しばらく待たされた末に、
  「原発稼働の利益で確保します」
  「通常、利益が出れば、電気料金の値下げをするのですが、その値下げはないということですね」
  「そういうことになりますね」
  
   防御姿勢で固まった、これが東電姿勢なのか。
   時間の浪費と空しい徒労感が残った東電とのやり取りでした。

   次に、朝日新聞に電話を入れる。 
         4月7日付新聞記事は、「原発事故の賠償費」についてとても分かりやすく説明してあるが、
   肝心の消費者の負担額については、あいまいでわかりずらい。
   と説明したところ、即座にその記事を検索し、
   「読む時間を頂いてもよろしいですか」…3~4分が経過した。
   「確かにその利通りですね。担当記者にその旨を連絡し、
   分かりやすい記事を掲載するよう努力いたします」
   
   東電とのわけのわからないやり取りに疲れた私は、「よろしくお願いします」と電話を切る。
   なんともあっけない幕切れで、後味の悪い思いをした体験記だつた。

   目に見えない負担を国民にまでおしつける原発が、
   他の発電(水力、風力、太陽光等)に対し本当に本当にローコストなのか疑わざるを得ない。
   廃炉・賠償費用も含めて原発が低コストであるならば、事業者負担とすべきではないか。
   しかも報道によるとこのつけ回しは、2060年頃まで約40年以上も続くという。
  
 明らかに負の遺産となった原発事故の費用負担を、
 次世代まで負担させるのでは国民の理解は到底得られない。
                       (風の行方№37) (2017.4.29記)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「原発事故の賠償費」 何故私たちが負担しなければならないのか(2)

2017-04-19 16:49:27 | 風の行方・原発

「原発事故の賠償費」
   なぜ私たちが負担しなければならないのか(2)
    負担の理由と負担額、そしていつまで負担したらいいのか
    原子力発電は1960年代からある設備なのに、
     事故を起こした時の賠償への備えをしていなかった。
     そのツケをどうして国民に負担させるのか、納得がいかない。
    
     経産省の説明
     「原発事故の賠償費は本来、
      日本で原発が動き始めた60年代から確保しておくべきだった。
      だから、過去にこのコストが含まれない安い電気を使った人に負担を求めるのが適当だ」

       必要な備えを半世紀近くも怠っておいて、
       その責任を電力会社に問わずに国民に負担を求めるのはいかがなものか。
       現在に至るまで、政府や電力会社は原発の電気は、
       他の火力発電(天然ガス、石炭)や水力発電に比べて低コストだと説明してきた。
       しばしばいわれているように、原発の事故リスク費用を価格に備えとして加えていなければ、
       価格競争のスタートラインそのものが揺らいでしまう。
       それなのに、「過去にこのコストが含まれない安い電気」を使っていたのだから、
       「電気代に上乗せしますから負担してください」というのはあまりに虫のいい話ではないか。

     原発優遇策(託送頼み)
       福島第一の廃炉費などにも、新電力の送電線使用料金(託送料金)に上乗せして、
       費用捻出しようとしている。
      
       電力自由化を推進しながら、その裏で新電力会社には全く関係のない賠償費の一部を
       託送料金に上乗せして負担させるというのは、自由競争の原則に反するのではないか。
       原発に関するコストは、原発を持つ事業者が担うものではないのか。

 

     具体的に見ていこう
             事故の賠償費を東電を含む大手電力9社が負担している。
       そのうち下図の7電力が電気料金に盛り込んで消費者負担としている。
       しかも、この負担金額は料金の内訳が書いてある検針票には載せていない。
       商取引ではこのやり方は詐欺にあたり、クレーム対象になります。


               電力7社が電気料金で回収する福島原発事故の賠償費
(下図)



一年度あたり
一般負担金の額

1KWhの
負担額(概算)

1世帯の2016年
の負担額(概算)

北海道電力

65億2000万円

0.22円

1034円

東北電力

107億  910万円

0.14円

 774円

東京電力

567億4030万円

0.25円

1159円

中部電力

124億2060万円

0.11円

 587円

関西電力

315億2420万円

0.25円

1212円

四国電力

 65億2000万円

0.26円

1484円

九州電力

169億1940万円

0.22円

1127円

 

                                           (朝日新聞による試算)
    この試算によると一世帯当たり1年で587~1484円ぐらいになるらしい。
     しかし、前にも述べましたがこうした金額は各家庭に配布される料金の内訳が書いてある
    「検針票」には載せてありません。
    一世帯当たりの負担額を筆者の家の電気料金に当てはめて計算すると次のようになります。
    関東地方の筆者は東京電力管轄になります。
    3月の検針票によれば1カ月の使用料は255KWhになります。
    計算式は以下のようになります。
    1カ月の使用量(255kwh)×0.25円=63.4円
     3月は月額63.4円の負担になるわけだが、請求金額に含まれている様子が感じられません。
     1年分の金額は 63.4円×12カ月=761円となる。
    
    検診票にはこのことには一切触れいない。
    新聞記事も徴収方法については具体的に触れていない。
    何度も記事を読み返し、推測できることは新電力の託送料金に上乗せする。
    電気会社が出した利益は、従来であれば電気料金の値下げとして消費者に還元するのだが、
    それをしないで、賠償費に充てるということなのだろうか。
    この記事も、一番肝心な部分で不親切である。

    釈然としないので、東電と記事を掲載した新聞社に電話をして質してみた。
    次回はこのことについて、簡単に述べたいと思います。
      (風の行方№36)                           (つづく)
                  (2017.4.18記)

       
       
     

    

   
 (風の行方№36)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「原発事故の賠償費」 何故私たちが負担しなければならないのか(1)

2017-04-15 11:33:52 | 風の行方・原発

 「原発事故の賠償費」 
     
なぜ私たちが負担しなければならないのか(1)

  (1)  賠償費の内訳と事故原子炉の現状

 福島第一原発事故の賠償や廃炉などの費用が21.5兆円になるという。
 従来の試算(2013年時点)では11兆円だから、今回の試算は約2倍近くに跳ね上がる。
 (下図参照)
     原発事故の処理費(朝日新聞2016.12/9引用)

 

2013年時点の試算

2016年12月
 の試算


どのようにまかなうのか

廃炉・汚染水対策

  2兆円

  8兆円

原則東電負担。送配電子会社の合理化利益は、値下げせずに廃炉に回す仕組みを新設する。

賠   償

  5.4兆円

  7.9兆円

原則東電負担。一部はほかの大手電力や新電力も送電線使用量に上乗せして負担

除   染

  2.5兆円

  4  兆円

国が持つ東電株の売却益を充てる。 

中間貯蔵施設

  1.1兆円

  1.6兆円

税金を投入

合    計 

 11兆円

 21.5兆円

 

    一気に4倍になった「廃炉・汚染水対策」に要するお金だ。
  なぜ一気に4倍に膨張してしまったのか。
  経済産業省は米スリーマイル島原発事故(1979年)費の「約50~60倍」にはなる、と説明。
  どんぶり勘定と言われても仕方がない。
  本当にこんな金額で処理できるのか疑問だ。
  たった3年で合計が倍の21.5兆円に膨れ上がっているのだ。
  
  福島第一原発事故では、
  6年経った今でも事故現場は高い放射線に阻まれ、
  処理作業は難航している。
  溶け落ちた核燃料はスリーマイル事故とは異なり、原子炉を突き破り
  内部がどうなっているのか見当がつかない。
  
  1月末、遠隔調査ロボット「サソリ」を投入したが、
  メルトダウン(炉心溶融)した原子炉内部は、爆発の残骸と高濃度の放射線に行く手を阻まれ、
  2㍍進んで立ち往生してしまった。

  溶けた核燃料が原子炉の外に出た事故は、
  旧ソ連のチェリノブイリ原発事故に例を見るが、
  事故後30年を経過した現在でも、取り出しに着手していない。
  老朽化した石棺の上に、さらに石棺を覆いかぶせ、応急措置しかしていない。
  廃炉作業を無理に進めるよりも、こうしたやり方は、処理費用が安くてすむ。
  原因究明よりも経済優先の政策だ。
  数えきれない村が放射線汚染で消滅した。
  我が国のように除染をするよりも、帰還困難区域に指定し、
  新たな土地を提供し、新しい村を作る方が、費用が掛からない。
  広大な国有地があるから可能な方法だ。

  つまり、事故から30年以上経過してもチェリノブイリ事故では、
  何ひとつ解決していないし、事故の教訓も残されていないのだ。

      事故から6年。
  事故を起こした原子炉の中にサソリが入り、黒い塊を撮影。
  これが、核燃料なのか。
  この黒い塊のがどのくらいあるのか、広がりはどうなっているのか。
  具体的状態がわからない。

  だから、廃炉に向けての具体的計画が立てられない。
  溶けた燃料を取り出す方法は、作業員の被曝をどう抑えるのか、
  取り出した燃料をどこに保管し、処分するのか。

  原発3基がメルトダウンしたのだ。
  世界でも例のない廃炉作業は、まだ何も決まっていない。

  表に示した「原発事故の処理費」は、
  このような現状を踏まえての経済産業省の試算です。
  合計21.5兆円ですむわけがない。
  一体、廃炉が完全に終了するまでに、
  どれくらいの費用と、労力と、時間がかかるのか。

  取り出した核燃料を地中深く埋めたとしても、
  安全を確保できるまでには、
  10万年という膨大な人知を越えた時間が必要とされる。

  政府は原発再稼働に向けて、舵を切っているが、
  このように考えてくれば、本当に原発による発電電気が
  他の発電電気より低コストだなどと言うのは、
  信じられないと言われても仕方がないでしょう。
    (風の行方№35)        (2017.04.15記) (つづく)

  次回は、私たちに課せられた負担額はどれくらいなのか、考えてみます。




 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原発事故の費用  何処で負担するのか

2017-01-12 13:44:25 | 風の行方・原発

原発事故の費用  何処で負担するのか    
膨らむ原発事故費用

事故処理費用の推移

 

総費用

中間貯蔵施設

除染

廃炉

賠償

2011 年  事故発生

6  兆円

1兆円

5兆円

2013   中間貯蔵施設に国費投入決定

11 兆円

1.1兆円

2.5兆円

2

5.4

2016   新電力負担決定

21.5兆円

1.6

4

8

7.9

2020   デブリ取り出し開始

 

 

 

 

 

 

2030~     デブリ取り出し完了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2060  国民の費用負担(ツケ回し)終わる

 

 

 

 

 

 

  原発事故の(処理)費用は総費用で
   6兆円➡11兆円➡21兆円
  処理費用は事故発生から5年で総費用で4倍弱にまで膨張しています。
  特に廃炉費用はなんと事故当初の8倍の8兆円にも膨らんでいます。
  デブリ取り出し開始から完了までに、10年以上かかると考えられています。
  (デブリとは、メルトダウンした核燃料を核燃料容器から取り出す作業ですが、
  今度のメルトダウンで核燃料は圧力容器や格納容器を貫通してと思われているので、
  デブリ完了までにはもっと多くの時間が必要かと思われます)

  廃炉に関しては、未経験で原子炉格納容器の中がどうなっているのか予測が尽きません。
  放射能の極めて高い内部で、技術的にも改変していかなければ手の施しようがない状態です。
  廃炉作業員の被曝の問題も含め、難題山積です。

  見積もりを立てるたびにどんどん膨張していく事故(処理)費用は何処で負担するのでしょうか

  
 事故処理費用は何処で負担するのか
  21.5兆円の費用負担は次のようになります。
   中間貯蔵施設 ➡ 税金を投入
   除    染 ➡ 国保有の東電株の売却益を充当
   廃    炉 ➡ 東電が負担
   賠    償 ➡ 新電力も一部を負担する。国民負担は月額18円。

  賠 償
   注目して欲しいのは『賠償』です。
   追加分の2.5兆円は2020年から2059年まで
   40年かけて送電線の利用料に上乗せするというものです。

   送電線は大手だけでなく電力自由化で参入した、
   原発を持たない新電力にも負担の義務を負わせる。
   従って、電力消費者は契約先に関係なく、
   月平均で18円の負担が課せられることになります。
   これは、実質上の電気料金の値上げではないでしょうか。
   (システムには経産省の理由付けがあるのですが、ここでは割愛します)。

   事故前までの電気代は事故対応費を含まず、国民は安い電気を使ってきた。
   その間に集め損ねた事故対応費の分をこれから
   国民に2020年から40年かけて払ってもらう
(朝日編集委員・上田俊英)

   原発事故の2011年に生まれた人は、このとき50歳目前です。
   自分たちが生まれた年に起こった原発事故の責任をなぜ私たちの世代が負わなければならないのか。

   原発コストは他の電気エネルギーと比べて安いと政府は、公言してはばからないが、
   本当にそうなのでしょうか。

   世代間で継承し良いのは、次の世代に引き渡してもきちんと説明のつく施策です。

   負の遺産はその世代で解消し、後の世代に継承しない。
   施政者のそして私たちの戒めとしなければならないことではないでしょうか。

   これまで見てきたように、原発事故の費用負担は、未来の世代にまで負担を強いる。
   高速炉の実証炉の建設も、今の子どもたちの世代が負っていきます。

   使用済み核燃料から出る「高レベル放射性廃棄物」は、
   10万年もその危険と向き合わなければならず、
   現在、その隔離方法さえ確立されていない。

   私たちはこんな危険な得体のしれないものを発明し、手なずけようとしている。
   それはあたかも、科学者のフランケンシュタインが作り出した「怪物」のように一人歩きし、
   どうにも手におえないものを、私たちは手なずけているようにも見える。
   
   プロメテウスの火にならないように、私たちは次の世代に、
   「昔こんなことがあった」と説明できる大人として責任を持ちたい。
                              (2017.01.12記)

 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どうなる川内原発 鹿児島県知事・三反園氏の動向(2)

2016-12-01 18:00:00 | 風の行方・原発

どうなる川内原発 鹿児島県知事・三反園氏の動向(2)

三反園知事は川内原発の一時停止と再点検を公約に掲げて初当選。8月と9月の二回、
九電に即時停止を要請して拒否された。
その知事が気になる発言をしている。

 10月28日、就任会見以来3カ月ぶりに開いた記者会見での発言。
「私がどう対応をとろうとも、九電は稼働させていくことになる」

また、11月11日、原発内を視察した後の発言。
「私には稼働させるさせないの権限はない」

 停止をめぐる発言は徐々に、トーンダウンしていく。

熊本地震の不安を背景に、三反園知事の発言。
「安全性が確保されていない原発を動かすわけにはいかない」

8月26日には県庁で、9月7日は九電本社ビルで九電社長に直接、直ちに停止
を要請した。しかし、九電から拒否されると、
「また要請しても、結論は同じかもしれない」。
事実上の原発停止要請敗北宣言だ。

 相手の懐深く踏み込んでいく勇気がない。
 こちらの胸の内を公表してしまう。
 知事ともあろうものが、なぜ敵の本陣に「要請書」を持って行ったのか。
 知事が直接行動したのだ。
 本陣に切り込んだのだ。
 それなりの成果を得なければ、笑いものになりますよ。
 こともあろうに、「また要請しても、結論は同じかもしれない」
 なんて弱音を吐いてしまえば、これはもう敗北宣言だ。

 理念なし、戦略なしの知事の姿勢は、戦う前から敗北の結果が見えている。

 「今さら権限がないというのなら、なぜ九電に止めろと言ったのか。
 パフォーマンスにしか見えない」
  という声も聞こえてくる。
  脱原発の旗を掲げて支持した選挙民が、
 「公約違反だ」と憤るのも無理のない話だ。
                                                                                (2016.12.01記)

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする