読書案内 「霧笛」ルイ・ブラッドベリ著
短編集太陽の黄金の林檎より
眠りから覚めた一億年の孤独
孤独岬の灯台。
突端から2マイル(約3200メーター)離れた海上に70フィート(約21メーター)の高さにそそり立つ石造りの灯台。
夜になれば、赤と白の光が点滅し船の安全を見守る。
霧の深い夜には霧でさえぎられた灯りを助けるように、霧笛が鳴り響く。
霧笛の音……。
〔……誰もいない家、葉の落ちた秋の樹木、南めざして鳴きながら飛んでいく渡り鳥にそっくりの音。十一月の風に似た音、硬い冷たい岸に打ち寄せる波に似た音、それを聞いた人の魂が忍び泣きするような音。遠くの町で聞けば、家の中にいることが幸運だったと感じられるような音。それを聞いた人は、永劫の悲しみと人生の短さを知る〕
寂しくて孤独に震え、一度聴いたら忘れられない霧笛の音が、濃い霧に覆われた孤独岬の灯台から流れる。
霧の出始める九月、霧の濃くなる十月と、霧笛は鳴りつづけ、やがて十一月の末、一年に一度、あいつが海のかなたからやってくる。深海の暗闇の眠りから目を覚まし、一族の中の最後の生き残りが、海面に姿をあらわす。
全長九十から百フィート。
長く細長い首を海面に突き出し、何かを探すように、霧笛の流れる霧で覆われた海面を灯台めざして泳いでくる。
永い永い時間のかなたで絶滅してしまった恐竜。
数億年の眠りから目覚めその霧笛に向かって、恐竜が鳴く、霧笛が響く…。
恐竜の鳴き声は、霧笛の音と見分けがつかないほど似ている。
孤独で、悲しく、寂しい鳴き声だ。
霧笛が鳴る…恐竜が吠える…お互いが呼び合い、求め合うように呼応する。
霧笛を仲間の呼び声と錯覚し、深海の深い眠りから目を覚まし、数億年待ち続けた仲間の呼び声に孤独な怪物は灯台に近づいてくる。
その時、燈台守が霧笛のスイッチを切った。たった一匹で気の遠くなる時間にじっと耐え、決して帰らぬ仲間をただひたすら待たなければならなかった孤独。
彼は霧笛の消えた灯台に突進していく……。
喪われ二度と会えないものを待つ孤独が、読む者の心を切なくさせるSF短編である。
ハヤカワ文庫2006年2月刊 評価 ★★★★★
『原子怪獣現わる』(げんしかいじゅうあらわる、The Beast from 20,000 Fathoms)は、1953年に制作されたユージン・ルーリー監督によるモノクロ特撮怪獣映画。製作はアメリカ合衆国のワーナー・ブラザース映画。
核実験で現代に蘇った恐竜と人間との攻防を描き、映画史上初めて核実験の影響を受けた怪獣が登場した作品[4][5]。『Monster from Beneath the Sea』のタイトルでも知られる。「核実験で蘇った巨大な怪獣が都市を襲撃する」という本作の設定や特撮技術は、『ゴジラ』(1954年)など後世の作品にも大きな影響を与えた[6][7]。