映画「リチャード・ジュエル」 監督イーストウッド
メディアに取り囲まれ、沈痛な表情でうつむくリチャード・ジュエル。
ジュエルの後ろには、
たった二人の味方のうち最強の味方になる弁護士のワトソンが厳しい表情で寄り添い、
リチャードの隣で母ボビが悲嘆にくれて涙ぐんでいる。
母は息子・リチャードの無実を信じ、心のよりどころとなる。
(母さん、僕はだいしょうぶだよ。親子が抱き合い、それを後ろから見つめる正義派弁護士。
幾分、首を傾げ無言で見つめる弁護士の姿が印象的だ)
爆発物発見した警備員・リチャードが、
一転して爆破事件の犯人とされてしまう大きな要因となる記事を書く
アトランタ・ジャーナルの女性記者や
事実を折り曲げ、 捏造するFBI捜査官の姿も見える。
89歳になるクリント・イーストウッド監督の40本目の映画です。
『アメリカンスナイパー』2014年、
『ハドソン川の奇跡』2016年、
『15時17分、パリ行き』2018年、
『運び屋』2018年と、実話を基に映画を作ってきた。
実話に基づいた映画「リチャード・ジェル」は、
1996年のアトランタで起こった爆破テロ事件に題材をとり、
冤罪がどのようにして作られていくか。
メディアの報道がいかに民衆を煽りたてるか。
民衆がメディアの報道をうのみにしてしまう危険性を感じさせる映画です。
警備員リチャード・ジュエルの迅速な通報によって、
数多くの人命が救われた。
だが、爆弾の第一発見者であることでFBIから疑われ、
第一容疑者として逮捕されてしまう。
弁護士・ワトソンは
「彼を陥れようとしているのは、政府とマスコミだ」
と冤罪事件の告発をする。
(リチャードを犯人に仕立て上げようとするFBI捜査官は、リチャードに声のサンプルの提供を強要する)
冤罪を作り出そうとするような警察権の在り方。
しのぎを削り、スクープ記事を争う中で、真実が見えなくなってしまうメディアの在り方。
読者(民衆)がメディアの報道をうのみにしてしまう危険性など、
多くの示唆を含んだ映画だ。
決して、米国の話ではなく、
我が国においては、
サリン事件の発端となった
「松本サリン」事件が
警察権、メディアの報道の在り方を通して、
報道をうのみにしてしまった私たちの苦い思いが記憶に残ります。
孤立無援の嵐の中で、
決して高ぶらず、
冤罪であることを冷静に主張し続けた河野氏の姿が印象に残っています。
(映画№19) (202001.19記)