雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書案内「絵本・母と暮らせば」

2016-10-30 11:00:00 | 読書案内

読書案内「絵本・母と暮らせば」
文 山田洋次  絵 森本千絵  講談社2015.11 初版 
 
山田洋次監督 吉永小百合 二宮和也で2015年12月に映画化された。これはその絵本版です。

 長崎に原爆が落とされ、死者は7万人。
その中の一人に息子の浩二がいた。
母さんに会いたい会いたいと思い続けて、
とうとう亡霊になって3年目の命日に母に会いに出てきてしまった息子と母の物語。

どんなにつらい悲しみも、時間が経てば和らぐ、なんていうけどそれは嘘。
「悲しくて悲しくて、死んで会えるものなら死にたいと何べんも思ったとよ」。

 
愛する者を喪った悲しみは、当事者にしかわからない。
他者は傍観するしかない。
言葉はいらない、そっと寄り添うことが一番の心の慰めになるのかもしれない。
毎晩のように現れる息
子との交流は母の生きる力にわずかながらの光を指したが、
冬の訪れとともに母の身体は衰弱していく。
亡霊の息子には、なす術がない。
毎夜訪れる息子は母の命がもういくばくも残っていないことを悟る。
戦争でひとりぼっちになってしまい、生きる力をそがれた母。
息子の亡霊との語らいは唯一の心のよりどころだったのだろう。

母さんがぼくにしがみつく。
ぼくはその母さんを抱かえるようにして星空に向かう。

 死ぬことによってしか得られない、心の安堵。

この場面とアンデルセンのマッチ売りの少女が天国のおばあちゃんのところに召されていくシーンが
オーバーラップする。

「浩二、天国に戦争はないと?」、「なかよ、そがんもん」「じゃあ、きっとよかところね」。

二人は手を取り合って夜の空を駆け登っていく。 (2016.10.29記)           (読書案内№89)

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読書案内「秋萩の散る」 澤田瞳子著

2016-10-28 17:00:00 | 読書案内

読書案内「秋萩の散る」澤田瞳子著
           徳間書店 2016.10初版
  
弓削道鏡が下野国薬師寺に別当として配流されてからの失意と悔恨の日々を描く。
 
遠い京から下野にやって来た道鏡の心は、敬愛する女帝への一途な思いと、
  それとは反対に自分をとりこにした女帝(孝謙天皇)への恨みが千々に綾なして、
 失意と悔恨の内に送る道鏡70歳を過ぎてからの煩悶である。

  昨春、七十の坂を超えて以来、日ましに足は弱り、目や耳までもが随分覚束なくなってきた。
 加えて、昨年末からはかれこれ半年以上、帝の看病に奔走し、その疲れも癒えぬうちに、
 下野国(しもつけのくに)に追いやられたのだ。病みつきこそせぬものの、身体は綿を詰めたように重く、
 なにをするにもひどく億劫でならなかった。
 
 「帝位すら譲ろうとした女帝の厚遇を想えば、彼女の死後、何らかの処分が下されるのは当然だ」
 と覚悟をしていた道鏡だが、突如、下野の国薬師寺別当に任ぜられたのは、
 女帝が高野山陵に葬られたたった四日後の事だったことを思えば、
 道鏡を取りまく社会の風当たりがいかに強かったか想像できる。 

 人は、ある人とのかかわりの中で、挫折したり、どん底まで落ちてしまった時、
 自分の不運や力不足を嘆く一方で、
 あの人さえいなかったら、あの人と深いかかわりを持たなかったらと
 憎悪の炎を燃やすときがある。
 憎悪はやがて恨みへと昇華し、自分を見失ってしまう時がある。

 女帝に取り入り帝位を簒奪せんとした妖僧、自らの肉親に次々高位高官を与えた末、
 女帝の死とともに全ての職を剥奪された破戒僧ーというおよそ真実とは異なる道鏡の噂は、
 京(みやこ)からはるかに隔たった東国にまで知れを渡っている。
 
     
 心の内を言ってしまえば、言い訳になり、
 しかも自分の女帝に対する純粋な気持ちを誰も信じてはくれないだろう。
 解っているだけに、「あのお人さえいなかったら」と恨む気持ちも出てくる。

 歴史上、道鏡は欲と色に憑りつかれた悪僧として、記録が残されているが、
 記録は常に、勝者側の視線で書かれ、敗者は黙して語れない。
 
 自分はただあの氷の花の如く気高く美しく、そして哀れな女帝を、御仏の慈悲をもって、
 わずかなりとも楽にしてあげたかっただけだ。

 王朝絵巻の中で悪僧と位置付けられた道鏡も、この短編小説の中では、歴史の中で翻弄(ほんろう)された
 
普通に悩み苦しむ失意のうちに生涯を閉じる僧として描かれている。

 表題にある「萩の花」のイメージが何度か出てきて、小説に趣と深みを与えている。
 「盛りを過ぎた萩の花」が、道鏡には、最後まで自分を頼りにし続けた女帝の涙のように思えたり、
 子供に石をぶつけられる道鏡の目には、「萩の花」は血の粒のように見えるときもあり、
 「色あせた萩の花」が、まるではかない夢のごとくはらはらと散っているようにも見える。

 自分を片時も側から離さず、世間からは「寵愛」といわれるほどの女帝の行為は、
 孤独ゆえの淋しさの表れではなかったか。

 くまなく慈悲を垂れる御仏を、そして、御仏の弟子たる道鏡を寵愛することで、
 己の心の空隙を埋めんとしたのであった。

 
やがて道鏡は、煩悶の末に女帝の本当の心にたどり着き、
 たった一瞬でも女帝を恨んだことを恥じる心境に到達する。

 下野の国薬師寺別当に追いやられた道鏡は、
 やっと開眼に似たすがすがしい気持ちに到達していく。

 最後にまた「萩の花」の登場でこの短編は幕を閉じる。

 盛りを過ぎた花のごとく散った女帝の思い出を胸に抱くこの身には、
 もはや呪詛も、恨み嫉みの感情も必要でない。
 この広大なる秋の野に散った萩の一片、美しい過去の思い出のひとかけらがあれば、
 これからも自分は生きていける。
     
     
この短編集には表題作のほかに、凱風の島、南海の桃李、夏芒の庭、梅一枝が収められている。
     いずれも、古代奈良・平安の歴史に題材をとった古代歴史短編小説集。
 (読書案内№88)                                (2016.10.28記)

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新潟知事選(9) メディアの反応 新聞各社の社説(3)

2016-10-24 16:43:35 | 昨日の風 今日の風

新潟知事選(9) メディアの反応 
新聞各社の社説(3)
 
今回は東京新聞社説と地元紙新潟日報の社説に見る新潟知事選です。

 東京新聞社説 見出し: 「新潟」野党勝利 再稼働反対の意思示す
  
出しは単純明快。今まで述べてきたどの新聞社説(朝日、読売、毎日、産経)よりも解りやすく、
  新聞社の意思表示としては理解しやすい。
  冒頭の一文も明快に新聞社の意志・姿勢を打ち出した解りやすい文章だ。

  東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に対する県民の反対の強さを全国に示した。
  
  安倍政権は選挙で示された民意を真摯に受け止めるべきだ。


  東京新聞のこの単純明快さが私は好きだ。
  民進党についても、分かりやすい文章で軸足の定まらない迷走ぶりを次のように述べている。

  県知事選で民進党は支持組織の連合傘下に電力総連がある事情から早々に自主投票にとどめた。
     終盤
に なって蓮舫代表が米山氏の応援演説に駆けつけたが、与党と野党のどちら側につくのか、 
     ……猛省して今後の選挙戦略を練り直すべきである。


 新潟日報社説 見出し: 再稼働「ノー」の民意示す。
  
国の今後のエネルギー政策にも大きな影響を与えることになる。
  県政史上初めて野党系知事となる、49歳の若きリーダーの手腕に注目したい。

  地元紙だけに、投票率が意外と伸びなかった理由に、「原発再稼働」が大きな争点となった結果、
  それ以外の政策論争が低迷だったことをあげている。少子高齢化や人口減少への対応、景気・雇用の回復など課
  題は多いのに、政策論争にまで発展しなかったことを懸念している。
 
  県人口は230万人を割り込んだ、少子高齢化や過疎化が進み安倍政権が進める経済政策「アベノミクス」の恩
  恵は地方には届かず、格差は拡大している。

  ……若者の県外流出に歯止めをかけ、県税収入を上げていくためには一層の産業振興が必要だ。

  中央紙が、野党勝利と原発再稼働に歯止めがかかるのかと
、論点を絞った社説の中で、新潟日報は地元紙らし
  い論旨のすすめ方で好感が持てる。
   

まとめ
    各新聞社の社説で、新潟知事選をどのようにとらえているのか。争点となった原発再稼働の問題を新聞各
    社はどのように考えているのかまとめてみたい。                                                              

  朝日新聞 …… 脱原発 原発稼働には慎重 
          泉田氏の路線を継承する米山氏の当選は、新潟県民の原発に対する不安の表れだと評価し、
                            安倍政権の原発に対する舵取りの方向転換を促す。
  読売新聞 …… 原発推進
          安全性が確認された原子力発電は、再稼働する必要がある。
  毎日新聞 …… 
社説ではそこまで踏み込んだ論旨を展開していない。リベラルな論旨の展開だけに私には                ちょっと物足りなさを感じる。社説では誰にでも受け入れられるような優等生の論旨ではな                    く、毎日新聞としての姿勢を明確に表現して欲しい。今回の社説は解説文を読んでいるよう             
     でした。 
    産経新聞 …… 原発推進
         『原子力発電が必要だと考える多くの人がいる。勝利におごり、そうした声に耳をふさげば、 
            新潟県だけでなく日本の将来に影が差す。』と言い切る厚かましさには憤りを感じる。
 東京新聞 …… 脱原発  
         この新聞の社説は誰にでも理解できるような平易な文章で好感が持てる。 
 新潟日報 …… 地元新聞としては当然の成り行きで、原発再稼働について踏み込んだ論旨の展開はない。
            地元の安全や繁栄に寄与する地方紙としては仕方のないことなのでしょう。
                                            
 (おわり)


      
 どの新聞を購読するかは、とても大切な問題であることが理解できると思います。
       どの新聞でもよい。契約時の景品目当てに数カ月ごとに購読新聞を取り換える人も多いと聞きますが、
       新聞には新聞各社の特徴があり、ものの考え方も違ってきます。
       自分にとって、どの新聞が好みの新聞なのかを知ることは非常に難しいことですが、
       でも非常に大切なことだと思います。
                                         (2016.10.25
記)
           

           

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新潟県知事選(8) メディアの反応 新聞各社の社説(2)

2016-10-21 22:57:25 | 昨日の風 今日の風

新潟県知事選(8) メディアの反応
 新聞各社の社説(2)

 前回は朝日、読売の社説を検証した。今回は毎日新聞、産経新聞を取り上げます。

毎日社説見出し: :原発不信を受け止めよ

 見出しは朝日の「原発への不安を示した」と似ている。
つまり、民意は原発再稼働に待ったをかけたという意味か。これを受けて更に冒頭。

 安倍晋三政権と東京電力は選挙結果を真剣に受け止めるべきである。…この結果となったのは、いかに東電に対する県民の不信感が強いかの表れだ。
 論調は厳しく、7月の鹿児島県知事選の事にも触れている。

 九州電力川内原発の停止を揚げた三反園訓氏に敗れたのに続く敗北だ。再稼働に対する姿勢があいまいだった森氏に対する不満だけでなく、原発の維持・再稼働路線をひた走る安倍政権への批判も大きいとみていいだろう。

 朝日の社説が同様に三反園氏の勝利を引き合いに出し、
民意は徐々に原発再稼働に反対の方向に動きつつあることを示唆している。
また、終盤になって蓮舫代表の米山氏応援のための新潟入りについては、
「迷走」と非難し、民主党の姿勢を次のように戒めている。
 原発政策を改めて議論して党の態度を明確にしないと有権者には信用されない。

産経主張見出し: 新潟新知事は「脱原発」脱却を
 
推進論の明確な意思表示だ。
いい加減に「脱原発」から卒業したらと主張
しているのだ。

 政府与党にとっては7月の鹿児島県に続く、原発立地県での知事選連敗である。

 と認めながらも、資源小国の日本で原子力発電が果たす役割は極めて大きい。
と開き直り原発推進の意味を次のように展開している。

①原油価格に左右されない電力の安定供給。②地球温暖化問題への対策として2030年までに二酸化炭素26%削減には原発の活用が必要で、再生可能エネルギーで実現することには無理がある。

 
危険と隣り合わせの原発を推進することがいかに無謀なことか、
福島第一原発の事故究明もできていない上に、事故の教訓の欠片もない原発推進論だ。
読者のみなさん、特に産経新聞の購読者よ、だまされてはいけない。
「資源小国」とか「地球温暖化問題」などと大義名分を並べるのは筋違いであり、とんでもない論理のすり替えだ。
最後の文章は極め付けだ。

地球環境や国の将来、県の財政基盤の強化に、原子力発電が必要だと考える多くの人がいる。勝利におごり、そうした声に耳をふさげば、新潟県だけでなく日本の将来に影が差す。

  私には、こうした発言は負け犬の遠吠えにしか聞こえない。

 原発の抱える問題は、「トイレなきマンション」に例えられるように、負の要素が多すぎる。
福島第一原発事故によって被害を被り、
避難を余儀なくされた人々にとって、
原発や放射能に対する不信感は容易に拭えるものではない。

 被爆をしたのか、しなかったのか、人体に被曝の影響はないのか。
事故後5年を経てなお、こうした不安はぬぐい去ることができない。

 10月初旬、常磐高速で「浪江」、「双葉」を車で通過した。
帰還困難区域の道路沿いに立ち並ぶ家屋に人の気配はない、
田畑はセイタカアワダチソウや雑草が生い茂り、
除染の残土が黒いビニールの袋に詰め込まれ、空地を占領している。
捨てざるを得なかったふる里。
繁栄の果てに崩落した原発の犠牲はあまりにも大きすぎる。
次世代を担う子どもたちに、このような負の遺産を与えてはいけない。
(昨日の風 今日の風№46-8)
   (2016.10.21記)         (つづく)

   次回も社説で原発問題を考えてみたいと思います。

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新潟県知事選(7) 野党の勝利 柏崎刈羽原発再稼働の行方は?

2016-10-18 17:43:50 | 昨日の風 今日の風

新潟知事選(7) 野党の勝利 柏崎刈羽原発再稼働の行方は?

  各社社説を読む。
 

 16日投開票。結果、共産、社民、生活の党が推す米山氏が当選した。
米山氏は「泉田氏の路線を継承する」表明している。
総出力821万キロワットの柏崎刈羽原発の再稼働が問われる知事選の結果だ。

 
新聞各社の社説
 当選の結果が判明した17日の新聞各社の社説は、この結果をどのように見ているか探ってみたい。

 


 朝日社説見出し:県発への不安を示した。

選挙で浮き彫りになったのは、県民の原発への強い不安だ。
米山氏は「東電福島第一原発の事故や、その影響・課題が検証されない限り再稼働の議論は始められない」と公約した。
有言実行を肝に銘じ、再稼働を目指す国や東電に毅然と向き合うことが責務である。
……原発の安全を国に任せず、知事が様々な役割を果たせることを泉田とは行動で示してきたと言える。
選挙結果は、そうした姿勢の継続を望む県民が多いことを示した。

 

 概ね原発再稼働に慎重な朝日のこれまでの論調を踏まえ、
米山氏の勝利を、民意の反映として歓迎する内容だ。さらに、一歩進めて、

この夏には鹿児島県知事選でも原発の一時停止を揚げた候補者が当選した。住民の声に耳を傾けることは、国政の責任者の責務である。
として、安倍政権の原発に対する舵取りの方向変換を促す社説になっていて、私は歓迎できる。
 

これに対して、読売新聞の同日社説は次のようだ。

読売社説見出し:柏崎再稼働は冷静に議論せよ
 見出しからして、再稼働慎重派に牽制球を投げるような命令口調だ。
さらに、この見出しを受けて、第一行は次のような文章で始まる。

 安全性が確認された原子力発電所は、再稼働する必要がある。新知事には、冷静な検討を求めたい。

 

剛速球の牽制球だ。
もともと読売は、原子力委員会の初代委員長を務め、
日本の原子力発電に大きな足跡を残した正力松太郎が「中興の祖」と言われる読売新聞の社主を務めた新聞社だ。
終始原発推進の論調を展開している。
更に、犬の遠吠えのようにも思える問題すり替えの文言も続く。

 本来、再稼働に知事の法的権限は及ばない。
しかし、再稼働問題が知事選の最大の争点となり、人口減対策や地域活性化などの政策論争が乏しかったのは残念だ。

 

 県の政策を担う県知事としては、原子力のみが政策の主なるものではないことは言うまでもない。
だが、新潟知事選の社説で原発推進派の読売が言ってしまえば、
ない物ねだりの負け惜しみと取られてしまっても仕方がない。
更に次のような発言はいかがなものでしょう。

 経済活動や国民生活を支える電力を安定的に供給するには、原発の再稼働が欠かせない。

 

エネルギー問題は国の重要な課題だ。だが、その解決策を原発のみに求める姿勢はいかがなものでしょう。

 

                                      (2016.10.18記)       (つづく) 
  次回も各新聞社の社説を検証していきます。

 

 (昨日の風今日の風№51)

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新潟県知事選(6) どうなる柏崎刈羽原発(2)

2016-10-15 17:00:00 | 昨日の風 今日の風


新潟県知事選(6)
  どうなる柏崎刈羽原発(2)

 柏崎市と刈羽村にまたがる原発は、全7基が威容を誇って立ち並ぶ。
総出力で世界最大だ。
この原発が止まってから4年半が経つ。
JR柏崎商店街は、シャッターが下りたままの店が多い。
原発が再稼働しなければこの街はさびれてしまう。

「原発は30年もそこにある地場産業だ。今さらなくすわけにはいかない。
地元には、これまで国のエネルギー政策に貢献してきた自負もある」(原発関連の電気設備会社社長)

 「泉田裕彦知事のように『福島第一原発事故の検証が先』なんて言っていたら、
20年は結論が出ない」(原発関連会社社長)

 原発が立地する地方自治体は、危険手当と引き換えに膨大な交付金を受け取る。
だが、10年も経てば交付金は目に見えて少なくなり、
交付金によって建てられた公共施設の維持費すら捻出することが難しくなってくる。
だから、新たに原発を誘致することになり、原発銀座が誕生する。
かくして原発城下町では、原発の是非を問う話は歓迎されない。
誰がどんな形で原発と関係を持っているかわからないからだ。

 今度の知事選でも、「再稼働争点」と言われているが、
候補者は原発の是非をはっきり打ち出すことができない。

 再稼働に慎重な泉田知事の路線を継承する米山隆一候補は
「再稼働してまた事故を起こさないとは信じられない。
万一の時、安全に避難できるのか」
と懸念するが、
原発反対を表明しているわけではない。

「自主投票」から一転、事実上の「推薦」扱いにした民進党は蓮舫代表が演説に駆けつける。
原発推進派の自公も党幹部を応援演説に派遣し、原発がらみの選挙戦に勝利を収めたい。

 だが、忘れてはいないか。
メディアが実施するアンケートでは、いつも「原発反対」の意見が多い。
この結果と選挙の結果は一致しない場合が多い。

「選挙は再稼働イエスかノーかではなく、
原発無き後どのようにして街を活性化していくのか、
未来に向けてのビジョンを語らなければ、
厄介者の原発を排除する気持ちになれないのではないだろうか」

 明日は、「投開票日」です。
あなたの1票が、「積小為大」となり大きな力になります。
あなたの1票を無駄にしないでください。                (2016.10.15記)

(昨日の風 今日の風№51)

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新潟知事選(5) どうなる柏崎刈羽原発(1)

2016-10-14 17:00:00 | 昨日の風 今日の風

新潟県知事選(5) どうなる柏崎刈羽原発(1)
 4回にわたり泉田県知事立候補撤退と言う視点で、撤退の理由を探ってきた。
先月29日に告示され、4人が立候補し、今月16日投開票になる。

知事選の行方を追ってみたい。

「心が折れちゃった」と周囲に漏らす泉田知事。
前回までに地元紙・新潟日報紙とのトラブルの裏にひそんだ「原発問題」があるのではないかと推測してきた。

 撤退を取り消すよう働きかけたこともあったが、泉田氏の姿勢は変わらなかった。
原発再稼働を推進する安倍政権にとつて泉田氏は厄介な存在だ。
知事の首をすげ替えるチャンスを今度の知事選に求めたのもうなずける。

 こんな話がある。
陳情に来る新潟県内の首長や自民党県議に対して「まずは知事を代えてからだろう」と麻生太郎財務相などはかなり露骨な発言をしていたと複数の関係者は伝える。
 
「再稼働への環境は整った」と自民・公明両党は、新潟県長岡市長で市長会長だった森民夫氏を推薦する。
反泉田派で原発推進派の森候補の演説は
「原発は皆さんの安全が最優先。原子力規制委員会の結論が出ても、すぐ再稼働することはありません」と反原発とも推進ともどちらともとれる発言をする。
 県民の原発不信感を意識し、このような発言をする。ずるいぞ森候補。得票のための戦術なのだろうが、あいまいな立ち位置は「再稼働争点」となるべき、大きな問題をあいまいにしてしまう。

 仮に今回の選挙の結果、森氏が当選すれば、地元同意を得て再稼働への道は加速されるだろう。
原発1基が動けば、代替えで動かしてきた火力発電の燃料費を減らせるため、
東電は最大で月100億円の収支が改善されるという。東電の期待は大きい。
 

 10.14朝日朝刊は次のように伝える。
新潟知事選の支援を安倍首相が泉田氏にお願いしたという。
自公両党が推薦する、原発推進派とみられる森氏の応援を要請したという。
反泉田派の森氏の応援要請である。
厚かましいことこの上ない。なりふり構わない安倍首相。

 これに対する泉田氏の答えは明快である。

 「後継指名はしない、と最初申し上げた事実がある」

 泉田氏の立ち位置は少しもぶれていない。
泉田氏の撤退は非常に残念だが、退いてなお、「潔し」である。

 国策として原発を推進する安倍首相としては、
泉田氏が敵対しないよう動きを封じる狙いがある報道は伝えるが、
見事にこうした懸念をはねつけた泉田氏に軍配は上がる。
                          (昨日の風 今日の風 №50)

(2016.10.14記)              (つづく)     

 

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読書案内「ガラパゴス」 (2) 日本の労働現場の闇を見る

2016-10-06 21:07:29 | 読書案内

 
読書案内「ガラパゴス」 (2)    日本の労働現場の闇を見る

 被害者が遺した「新城 も」「780816」というメモに含まれた被害者のメッセージは何を意味するのだろう。
高等専門学校を優秀な成績で卒業した被害者が、
なぜ派遣労働者として働かなければならなかったのか。

単なる殺人事件ではなく、被害者の哀しい過去にもページを割いて物語に厚みを加えている。

 35歳の若さで家族も身寄りもなく、
殺されてしまう被害者の人生っていったい何だったのだろう。

 巨大な闇が見えてくる。

産業構造の中で熾烈な競争に打ち勝ち為の低価格競争の果てに、労働者が歯車の一つとして扱われる現実が浮かんでくる。

 怨恨や隠蔽、強盗や喧嘩などによる殺人ではなく、産業構造のひずみで起きた殺人であることが見えてくる。

 誰が、どんな組織が関わっているのか。

 
田川と木幡刑事の行く手に立ちはだかる、厚く高い権力の壁を二人は超えることができるのか。
 田川は事件を振り返って最後につぶやく。

「働きたい、単純にそう思うことがこんなに面倒なご時世になっているとは考えもしなかったよ」照り付ける太陽を見上げながら、田川は自分に言い聞かせるように呟いた。「普通に働き、普通にメシが食えて、普通に家族と過ごす。こんな当たり前のことが難しくなった世の中って、どこか狂っていないか?」
 

田川の言葉がこの小説の全てを語っている。

  「ガラパゴス」とは。
 
経済界を支え、景気を牽引してきた国産メーカーが、進化(成長)の袋小路に入り込み、国際競争力を失っていることを、進化の止まった孤島「ガラパゴス」にたとえて表現する言葉だが、本書がイメージする『ガラパゴス』は、産業構造の中で深刻化していく労働問題の延長線で次第に孤立化していく労働者の孤独という意味を含んでいる。

 表紙の絵は上下とも古代ギリシャ等で壁に彫刻された、労働現場の模様である。

 評価☆☆☆☆☆/5
  

 「労働現場の闇」がテーマなので、全体的に暗いトーンになっているが、久し振りで読んだ極上の小説だ。
 著者のベストセラー「震える牛」でも田川刑事が活躍する。こちらの小説は、食肉偽装問題に絡む大手スーパーの暗部を描いている。両作品に共通するものは、利益のために人をないがしろにし、部品として扱う企業への怒りだ。
二作品ともお勧めの小説です。           

                                       (読書案内№87-2)

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読書紹介「ガラパゴス」 (1) 偽装殺人の裏に隠されたものは

2016-10-05 21:15:27 | 読書案内

ガラパゴス(上・下)
    相場英雄著 小学館 2016.1刊 第1刷

 
読書紹介「ガラパゴス」(1)

           偽装殺人の裏に隠されたものは
 
  不明者リスト№902にファイルされた人物。
 2013年、東京足立区竹の塚団地で発見された死者は発見当時、身元不明のまま2年間、ファイルの中に放置されていた。
 竹の塚団地は昭和40年頃に建てられた団地だが、高齢化が進み、団地はさびれ、空き部屋が増えている。
  この空き部屋で死者は発見された。この発見場所も物語の伏線となっている。
 「空き部屋に入り込み、練炭自殺した身元不明者」としてファイル。

  殺人事件の時効が廃止され、未解決事件を再捜査する部署に所属する、
 田川という中年の刑事がファイルのふたを開ける。
 「地取りの鬼」の異名のある田川の執拗で地道な捜査が始まる。
 著者は田川刑事の相方にこわもての刑事木幡を登場させ、
 2人の絶妙なコンビネーションが物語の奥行きを深くし、事件解決へと進んでいく。

 自殺に見せかけた殺人の裏には何があるのか

 
地道な捜査が続き、闇のなかから見えてきたものは、底辺労働者の悲惨な現実だった。

 日本の労働者のうちの約三分の一に当たる2000万人が、非正規労働者や派遣労働者だ。
低賃金、雇用の不安定、過酷な労働市場。
 まともな暮らしができないから、将来に夢を持てない。
おそらく労働現場の実態は、私たちが想像する以上に過酷なのだろう。言いたいことも言えず、生活を犠牲にしてまで働かなければ、明日の職場は確保できない。このような社会構造の中で、つぶされていく人も多い。
 

 被害者の足跡をたどるにつれて浮かび上がってくる労働市場の闇。
文字どおり「地取り」の捜査が闇に隠れた謎を探っていく。
単行本上下2冊厚さだが読者を飽きさせず惹きつけるものは、著者の綿密なリサーチと筆力なのだろう。
  (2016.10.05記)                                (つづく)   


 (読書案内№87-1)

  

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一瞬の輝きに魂をこめて 運動会観戦記(2)

2016-10-04 17:00:00 | つれづれ日記

一瞬の輝きに魂をこめて 運動会観戦記(2)

 種目名には、リオ・オリンピックの直後でもあり、
これにちなんだ種目名が多く、タイムリーで思わず微笑んでしまいました。

毎年どんな種目名が採用されるのか興味を持ってプログラムを眺めています。

 プログラムの構成も、「個人」「団体」「表現」に区別して展開されているようで、
シッカリした構成に思えました。
「個人」=試練、「団体」=協調と連帯、「表現」=試練・協調・連帯・協力などの目に見えないテーマを見ることができました。

 

「表現」は苦労の跡が見える種目でした。
ラップダンスは本当に得意そうに踊っていた姿が印象的でした。


「ソイヤ!!!」とても楽しそうに踊っていた姿が、目に浮かびます。
試練・協調・連帯・協力が、このような「表現」の練習の中から生まれるのでしょうね。


 「ダンスDE玉入れ」単に玉入れ、ではなく可愛いお尻が観客の感動を呼んでいました。
別の場所にいた先生方や応援の場所にいた生徒や先生たちも
一緒になってお尻を振って競技を盛り上げてくれました。


締めくくりは5.6年生の「We are 下小 2016~193の絆=∞」
 フィナーレにふさわしい魂の輝きでした。

最後の挨拶(体育系の実行委員長か?)

 「『一瞬の輝きに魂をこめ』られた人」という声に、生徒全員が立ち上がりました。
 話は次のように続きます。

 ① 真面目に一生懸命に実行する皆さんは、最高の生徒です。

 

 ② (練習や競技を通じて)絆を深めることができたと思います。
   ③ みんなが元気で運動会に参加できるのは、自分一人の力ではなく、
   周りの人の協力
や支えがあったからということを忘れないでください。
(会場で聞いたことをメモを取らないで書いたので、要約と言う形で記録しました)

 ここでもしっかりと、スローガンのことに触れ、スローガンが決して形ばかりのもではなく、今日の運動会のバック・ボーンとなっていることに気づかされます。

「運動会は楽しくなければならない」という最も大切な要素を組み込み、その中で生きた教育の実践に取り組む学校の姿勢がうかがえる素晴らしい運動会でした。


 

 メ    モ

 

    
 放送、準備・設営、進行等多くの部分が、生徒たちの役割分担の下で行われ、先生やPTA役員の皆さんが裏で支える姿も、とても良い運営の在り方だと思いました。

 「何が一番楽しかったか」という私の問いに2年生の孫は即座に、
「ソイヤ!!!」と答えました。
この種目は「よさこいソーラン」の流れをくむ踊りなのでしょう。
赤と黒の鉢巻きと衣装が雰囲気を盛り上げていました。
 おそらく孫は、テレビの映像で見た「よさこい……」を心に描き、一生懸命なりきって演じたのでしょう。頬を紅潮させ、額に汗をかいて退場してきた姿が印象的でした。
        (2016.10.03記)          

 

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