「復興」という願い (東日本大震災№2)
5年目を迎える東日本大震災を前に、
朝日新聞と福島放送の共同企画で「福島県民 共同世論調査」を行った。
罹災東北三県のニュースには、「復興」という言葉が頻繁に登場する。
復興はどの程度進んでいるか。
街の復興は、住民の思うように進んでいるのか。
土ぼこりを舞い上げて、ダンプが高台に土を運ぶ。
津波で破壊された海岸には、見上げるような防潮堤が計画される。
土建、建築に携わる作業員が街を賑わす。
だが、住民は戻ってこない。
福島県民へのアンケートは
「復興」への道筋はついていると思うか
「あまりついていない」53% 「まつたくついていない」9%
震災5年が経過しているのに6割の人が不満を持っている。
あまりにも長い5年。家族がバラバラに避難し、
風評被害や放射能被害で農産、畜産、漁業など未だに先行きの見通しがつかない。
「復興」とは、ライフラインが整備され、住民が戻り、
働く場所が確保されて初めて実感が伴ってくる。
仮設住宅から災害復興住宅へと住まいの確保が推進されても、
それだけでは住民は戻ってこない。
「復興」が遅れれば遅れるほど、若い世代は、避難した地域に根付いていく。
若い世代が戻ってこなければ、街はやがて消滅への道を歩み始める。
住民にとって「復興」とは、街が活気を取り戻すことである。
福島の場合は、地震、津波の被害の上に、原発事故への不安が重くのしかかってくる。
放射性物質や原発廃炉作業をめぐる不安が、県民には根強く残っている。
「原発事故による」放射性物質が自身や家族に与える影響についてどの程度不安を感じるか」
「不安」と答えた人68%
「廃炉作業で深刻なトラブルが起きる不安をどの程度感じるか」
「不安」と答えた人85%
昨年9月に避難指示が解除された楢葉町では、
町民約7400人のうち、街にもどったのはわずか440人だ(2月4現在)
避難区域の除染や解除も必要なことだが、
放射線量が極めて高い帰還困難区域の今後の扱いについて、
政府は明確な方針を打ち出していない。
こうした状況下では、故郷に見切りをつけ、新しい土地での生活を確保しようとする
住民が出てくるのも必然だろう。
見通しの立たない状況下で、足踏みするのも限界がある。
人間は希望を持たなければ生きる力を徐々に削がれてしまいます。
一日も早い「復興」。
インフラ整備だけではなく、人が住み、
「活気」のある街づくりを実現することが国や地方行政に携わる人の急務だ。
そして、一番必要とされるのは、自分たちの街は、自分たちの力で作っていこうとする気力だ。
決して、国や行政任せにしてはいけない。
26兆円をかけた復興事業だ。
共同企画 共同参画という姿勢が問われる。
テレビニュースでは、死者・行方不明者1200名を出した岩手県・大辻町の
「まちびらき式」の開催もようが放映された。
「復興」への一歩が踏み出された。
(2016.03.12記)