被爆労災フクシマの現実 風の行方(№33)
前回「被爆労災初の認定」では、認定に関する現実的な問題を考えて見た。
被爆労災についての社説は東京新聞と朝日新聞が取り上げていたが、
前者は「被ばく労災 廃炉の担い手こそ守れ」というタイトルでフクシマの事故現場で働く作業員こそ、
廃炉の担い手として大切な人材だから、
被爆による労災に関する認定の見直しが必要だと、いささか論調に甘さを感じる。
対する朝日の社説は「被爆労災 救済漏れを出すな」というタイトルで一歩踏み込んだ論調になっている。
東電福島第一原発の事故現場では、過酷な廃炉作業が続いている。
厚労省によると、福島原発事故の作業での労災申請は11件。
認定例は原子炉建屋などの覆い設置などに従事後、急性骨髄性白血病を発症した作業員の例が初めての認定となる。
「何ミリシーベルト以下ならがんは発症しないという境界はない」と専門家は言う。
胃などにがんを発症し元作業員から札幌地裁に提訴された例では、
被曝線量も発症までの期間も基準を満たしていないとして、労災を認められていないが、
高線量の作業は線量計を持たずに作業に従事したという。
年100ミリシーベルトが緊急作業時の被曝限度量である。
線量計の針が振り切れるような危険な場所での作業は、
短時間の作業になるが、線量計を持ち込めば、
この限度被爆量を満たしてしまうので、あえて、線量計を持ち込まないということだろう。
線量計不携帯や鉛カバーをして線量を低く抑えるなど、被曝線量をごまかして働かせる不正が発覚している。
事故現場で廃炉に携わる作業環境は過酷だ。
事故から今年8月末までに約2万1千人が累積で被爆量を5ミリ超えている。
40年かかるという廃炉作業に向けて、今後ますますこの数字は高くなるだろう。
作業員の労働安全と健康保持のためには、リスク管理と正確な被曝管理が必要だ。 (2015.10.31記)