そもそも人生に目的はあるのか。あるとすればそれは何なのか。そんなことを思いながら読んでみた本である。
『灯火なき暗夜に生き悩む人間の一人である』と自分を位置付け、さらに『生きるためには、あたりを照らす灯火を探さなければならない。どんな小さな灯りでも、それが力になるだろう。その灯りを「希望」と呼ぶか、「信念」と呼ぶかは、あるいは「人生の目的」と呼ぶかは各人の自由である』と氏は述べている。
灯火なき暗夜で、人間は孤独や悲しみに耐えて生きていくことはできない。
かすかな明かりの先に見え隠れする「小さな希望や優しさ」があるからこそ人間は頑張ることができる。
確かに『思うとおりにならない』ことの多い人生かもしれないが、生きていく上で私たちは数え切れない「しがらみ」を身に着けざるを得ない。
「しがらみ」を捨てて、身軽になり生きていければいいのだが、地位や名誉や名声のない無欲の世界で生きていくことは、俗人には非常に困難なことである。
東北関東大震災の被災者について
愛する家族や、親しい人を失い、育て守ってきた家や財産の全てを失った時こそ、くじけそうになる心を奮い立たせて、今日を生きるための灯りを探し、その灯りを「希望」や「信念」に置き換えて、前向きに生きていこうとする姿こそ、「人生の目的」なのではないだろうか。
具体的な「目的」ではなく、生きていく過程で遭遇する「困難」や「悲しみ」を乗り越えていく姿勢、「生きる力」を「人生の目的」と考えたらどうだろうか。
誰も助けてくれない「孤立無援」の人生はない。
どこかで誰かが手を差し伸べてくれる。
そのとき、
人の優しさに気づいたら、いつか自分も他者に対して優しくなれる。
なんと素晴らしい人生ではないか。
辛い気持を乗り越えて欲しい。
※「人生の目的」五木寛之著 幻冬舎文庫 2000年11月初版刊