雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

公安が来た ④なぜ、私は公安の訪問を受けたのか 

2023-04-11 06:30:00 | つれづれ日記

公安が来た ④ なぜ、私は公安の訪問を受けたのか
      これまでの話。
        私の住んでいる町近辺で起こった過激左派による「真岡猟銃
        強奪事件」は約一年後の1972年2月19日「あさま山荘事件」
        へと拡大し、警察官2名、民間人1名の死傷者と警察官26名、報道関係者1名
        の犠牲者を出し、10日目の2月28日警察の強行突入により、犯人(連合赤軍)5人
        は逮捕され、人質は219時間ぶりに救出された。
         多くの死傷者を出しながら、犯人側が無傷で10日間も抵抗できたのは、警
        察庁長官の指示により「無事救出」を最優先とし、犯人は全員生け捕り逮捕、
        火器使用は警視庁許可(犯人に向けて発砲しない)、ことがその理由の一つに挙
        げられている。
 

   

   (写真4枚 当時のことが生々しくよみがえります。視聴率89.7%という数字が視聴者の関心の高さを物語っています。) 

        公安が来た ①では、突然の警察訪問で、訪問の理由を一切言わずに「私も、会
        社もやましいところは一切ない」と協力を拒否し、態度を硬化させた。
        今回は、その続きを記載します。

      意固地になっている私に、年上の刑事が言った。
     「これから先は、捜査ではなく、茶飲み話ということで話を進めましょう」
     「お互いに聞かなかったこと、言わなかったことにしていただいても結構です」

     新しく淹れたお茶をすすりながら、年配の方が、私の顔に視線を走らして言った。
     「確か〇〇
さん(私の名前)は、東京の大学を出たんですよね」
     質問の意図が分からず私は黙っていた。
     「〇〇学部の経済学部でしたよね」
     質問の答えを促すようでもなく、間をおいて私を見つめ、
     次の質問をどう切り出そうかと思案しながら両腕の肘を膝につけ、
     屈むような位置からすくい上げるような視線を送ってくる。
     一見柔和な目のように見えるが、送ってくる視線にはとげがあ。
     刑事の目だ。
     得体のしれない、心を鎧で覆ったようなガードの固い目だ。
     地方の警察官のようなドロ臭さなどみじんも感じさせない、
     洗練さと冷たさをほんのわずか漂わせている。
     こんな目を、どこかで見たことがある。
     私はこの特異な目を思い出そうとした。
     「学生時代に何かなかったですか?」
     私の思案など無視するように、ボソリという。
     『何か』の意味が分からず、
     「知っているなら、具体的に言ってくれ」。
     警察や新聞記者はいつでもそうだ。
     手の内を絶対に明かさない。
     手本引きの博徒が、肩にかけた半纏の内側で札を操り指を動かし、
     相手の一瞬の戸惑いを決して見逃さない。
     「『我々とあなたの接点』を思い出してください」。
     手の内を明かさないで、相手に言わせようとするいつもの手だ。
     訪問の意図が全く理解できない私は、
     「言わなかったこと、聞かなかったこと」で済ますような相手ではないことを
     十分に理解しながら、
     『私』ではなく『我々』、と言うことは警察との接点と言うことだなと、
     胸の内で反芻する。
     私には犯罪歴もないし、前科もない。
     「何か思い出すことはありませんか」と、私の胸の内を探ってくる。
     獲物を追い詰める話の筋道をたてながら、目の前の刑事は手本引きのカードを
     懐の中であやつりながら、私の出方を考えながら次のカードを探っているのだろう。
                                   (つづく)

    (つれづれ日記№84)   (2023.4.10記)
        

コメント (2)
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