マグロが危ない 漁獲規制違反
寿司は寿司屋のカウンターで好きなものを食べる。
二十歳代からの習慣だった。
大トロをはじめ、アワビ、ウニなどを自慢気に注文することに、
快感を味わっていた時代が長く続いた。
特にマグロの大トロはどの寿司屋に行っても注文をした。
グルメ指向でもないのに見栄がわたしの心をくすぐったのだ。
回転寿しなどない時代の懐かしい思い出である。
今では寿司屋のカウンター座ることもなくなり、
頻繁に回転寿しを利用している。
寿司と言えば、「まぐろ」という指向は今も変わらない。
太平洋クロマグロ(本マグロ)
近年このクロマグロが激減している。
太平洋クロマグロは14年に、
絶滅危惧種に指定される(国際自然保護連合・IUCN)。
中部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)も、
小型の太平洋クロマグロの漁獲量を半減することを決めた。
これを受けて日本では、
操業を「承認制」とし、
15年からは日本の沿岸ごとの漁獲上限が設けられた。
水産庁は上限を超えた場合は、
自粛を求める措置をとっている。
だから、次のような違反が起きてしまう。
マグロ漁獲規制すり抜け
長崎・三重で発覚 国が全国調査 (朝日新聞1/14付)
長崎県対馬市の漁船16隻が、
マグロ漁に必要な承認を受けずに3カ月にわたって計約12㌧を水揚げし、
「承認を受けていない船が我も我もと漁に出てしまった」(対馬町漁協幹部)。
その結果マグロ水揚げ量は近年、年間1~4㌧だつたのが、100㌧に急増してしまった。
三重県の割り当てられた漁獲量は約23㌧だったが、
自粛要請にもかかわらず昨年12月までに約53㌧を水揚げしてしまったと報道は伝える。
本マグロ漁違反
新に8県確認 水産庁 (朝日新聞2/4付)
長崎・三重の漁獲違反を受けて水産庁が全国調査した結果である。
本マグロは地元の漁業協同組合が漁獲量を都道府県に報告することが義務づけられている。
しかし、岩手、宮城、千葉、新潟、静岡、和歌山、熊本、鹿児島の8県で水揚げされた約10.9㌧は、
報告がなかったり、漁獲の実態を把握していなかった。
規制の周知不足や、漁業者の規則を守る意識が低いことなどが、
その理由だと水産庁は見ている。
だがそうではないと私は思う。
大きな誤りは、サンマやマアジなど7魚種は、罰則付きの漁獲制限が行われているのに、
この取り決めには罰則規定がない、ということではないか。
自治会や趣味の同好会などの約束事とは異なる。
漁獲には生活がかかっている。
金銭が絡んでくる。
自粛措置というのは、罰則規定がない、
つまり、早いもの勝、獲った者の勝ということになりかねない。
何でもかんでも、規則や罰則でがんじがらめにしてしまっては、
生きずらい社会になってしまう。
本マグロの操業を「承認制」にし、漁獲量を規制することは、
決して漁業関係者を苦しめる意図のもとに考えられたわけではない。
本マグロの保護と本マグロ漁業の将来を維持するための規制であることを忘れてはいけない。
再発を防ぐため、
違反に罰則措置もある漁獲可能量制度を来年にも適用する方針を水産庁は打ち出した。
罰則のないことをいいことに、違反者がでて資源の枯渇を防ぐことができないのなら、
やむを得ない措置なのではないか。
資源を獲り尽くし、種の絶滅を招くようなことがあれば、
それこそ取り返しのつかない過ちを我々は冒すことになるのだから。
(2017.03.21記)
(昨日の風 今日の風№69)