雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

ちょっといい話 相手に思いをはせる

2013-06-15 22:08:18 | つれづれに……

 夫と駅で待ち合わせをした約束の時間になろうとするとき、携帯メールが届いた。

「いま電車の中、15分ほど遅れる」

それならばとカバンからミステリー本を取り出そうとして、70代の男友達が語ったことを思い出した。

   若いころ、ガールフレンドとデートの約束をしたのだが、予定外の仕事が入り、連絡のすべもない。

2時間遅れで待ち合わせ場所に行くと、彼女は待っていてくれた。

 私が心を動かされたのは、その話の続きだと浜根美紀さんは言う。

ここからが、ちょつといい話。

 2時間の間、彼女は彼のことだけを考えていたという。

なにか事故にあったのだろうか、事件か、などと。

 かれもまた、彼女のことだけを考えていた。

あの人が帰ってしまうはずがない。必ず待っていてくれる。

その女性こそ、後の奥様である。

 

 浜根美紀さんは、このことについて、次のようなことを言っている。

確かに、携帯電話は便利である。「何分遅れます」と送信するだけで、安心できるし、

待たせる側にも心配をかけないですむ。

 しかし、相手に思いをはせるという、奥ゆかしくも大切な行為はなくなってしまったのではないだろうか。

私自身、メールを読んだ後は夫のことなど少しも思わず、

ミステリーに夢中になっていたはずてある、と。

           以上は、朝日新聞6月14日付け、ひととき欄に浜根美紀さんの「あなたを思う時間」という

           タイトルで掲載されたものである。

 

 経済活動を続けるにあたり、無駄をなくし、能率を追求するのは大切な要因である。

この考え方のベースに、便利さの追求がある。

 より早く、より遠くまで走る新幹線。より短時間で国境を超え、快適な旅を保証する飛行機。

高速道路の拡充は、車社会の発達とともに、流通機構をも変え、経済システムそのもの変えてきた。

インターネットは実に簡単に知りたい情報を提供してくれる。

ツイッターは、顔を持たない匿名性ゆえに、多くの人に受け入れられたが、

責任の所在があいまいなために、責任のない発言も多くみられる。

 便利さ故に、失われたものも多い。

「人を思いやる気持ち」、「家族のためにお母さんたちが費やした家事の時間」、

「少子高齢化」に伴う家族機能の崩壊。。

便利さ故に「大切なもの」が失われてしまったのではないか。

大切なものはお金では買えない。

だが一人ひとりがその気になれば、創り、育てていくことはできるのだ。

 浜根美紀さんの話も、「互いに相手を信頼する」という、関係が築かれていたからこそ

成立した話なのだろう。

 

 

 

 

 

 

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風の行方(31) 故郷は荒れた やっぱり放射能が不安

2013-06-12 21:07:58 | 風の行方・原発

故郷は荒れた やっぱり放射能が不安

風の行方(31) 第2部(20)「仮の町構想」(15)  帰らない人々(4)

  帰還意向で、判断がつかない(帰還するかどうかわからない)と回答した人の割合は、表のようになっている。

 

大熊町

浪江町

双葉町

冨岡町

判断がつかない

43.5%

29.4%

26.9%

43.3%

 平均で35.8%の人が、帰還の意志を明確に明示できないでいる。

その理由として、最も多いのが、「放射線量に対する不安があるから」(70~80%)、

そして「原子力発電所の安全性に不安があるから」を理由に挙げている人も多い。

かけがえのない故郷であるけれども、

安全神話が崩壊し、帰還困難区域に指定され、全員避難を余儀なくされた人にとって、

避難指示区域再編で解除準備区域に指定されても、

放射線量や原子力発電所への恐怖や不安はおいそれとぬぐい去ることはできない。

 当然のことだろう。

津波に襲われ、かけがえのないものを奪われた。

追い打ちをかけるように、原発事故による放射能汚染が、

見えないカーテンのように人びとを被(おお)った。

生まれて初めての死の恐怖と生への限りない不安。

 本当に故郷の家に帰れるのか。

傷んだ家 カビ ネズミのふん 空き巣に荒らされた部屋 乱雑に家具の散らばった部屋を見れば、

あの日の恐怖が、辛く悲しい記憶となって蘇ってくる。

  帰還困難区域から解除準備区域に再編されたとはいえ、

二年数か月も無人のまま放置せざるを得なかった家は、人が住めるような状態ではない。

自然の脅威は、無人となった「人間の町」を、驚くべき早さで元の自然に還そうと、

家や畑や田んぼを2年数カ月の間に駆逐してしまった。

 

  とりあえず除染により、

放射性物質の軽減を計り、地域住民の帰宅を推進する、という意図は理解できる。

 しかし、仮に早く帰ることができても、

行政やライフライン、日常生活に必要な店、病院、学校、介護システムなどが機能しない限り、

生活するのは難しい。

 だから、帰還することに、不安を感じてしまうのだ。

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