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熊本老舗の酒造会社の伝統的建物の支援を
呼びかけに集まった他県や熊本県下からの
応援大工さんのボランティアで復興するという活動に、
週末の2日間参加した。
日本民家再生協会からの呼びかけで伺った私は
設計事務所部隊として、屋根に登っての作業ではなく
落ちた瓦(落とした瓦もあり)や崩落した土壁の撤去など
瓦礫清掃担当。
創業は慶応3年だそうだから、今年で149年。
どの建物が当初からあったか社歴でも見せてもらうしか
詳しく知ることはできないが、
いずれも100年以上の建物であることは確かだ。
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屋根には、板張り、杉の皮の防水、瓦の接着用の土、そして和瓦の順に。
屋根の土の量が半端なく多いので、断熱も兼ねていたのだろうか、と想像する。
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そして、それぞれの材料の量に驚く。
今の先端だけ重ねる瓦と違い、重ね代が半分以上の瓦。
これだけの重さに、木組みがよく耐えたと思う。
杉皮もそのままに。
これだけの木を使い、自然素材のみで出来上がった蔵や住まいに
感服しっぱなしであった。
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外観だけを見て、美しい街並みにうっとり。
という世界ではなく、構造のズゴさに惚れ惚れする。
壁厚が300mmは優に超える地域の蔵は
丸々した竹そのままに、縄組の下地。
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表しになった土壁の下の竹小舞の竹の太いこと!
これだけの手の込んだ「ものづくり」だからこそ、
これだけ耐えて生きてきた。ご疲れさまと声かけしたい。
地震で倒壊しなかったのも素晴らしい!
伝統構法のメカニズムでは、地震時に、外壁が崩落しても
軸組(木の骨組み)が残って、人命を守る。
それが、まさに証明されたとも言える。
復旧、復興は大変なのは確かだ。
それでも、また建築を引き継いで行くことができるのが、
伝統構法なのだろう。
工場が動かせなくなるなど、
被災された関係者の方々の落胆は計り知れない。
それでも、こうして蘇る様を見てもらって
頑張ってもらいたい。
私自身が大地震を体験して、それなりにショックを受け
建築の限界を感じながらも、ものづくりの方向性を見失わずに
また、気持ちが奮い立った。
応援させてもらって感謝である。
遠くは、長野、そして愛知、福岡、宮崎、八代、坂本村、、
様々なところから駆けつけてくださった皆さん、ありがとうございました。
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追伸
近くの伝統構法の住まいも拝見させてもらった。
検診効果が見て取れる。基礎と柱とのズレは、約4センチ。
各箇所でズレの方向が少しづつ違っているので、
地震によってかなり動いたことが見て取れる。
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もちろんこちらも倒壊せず。一部建具が使いにくくなった程度。
基礎の上の石によるパッキンのような役割の部分
(木の小口から水を吸い上げないための処理でもある)
を復旧すれば、また元どおりである。
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壊すのは簡単。でも作り直すのは大変。
こうして、復旧しながら、住み継ぐ、使い継ぐのが
地震国日本ならではの木の建築なのである。