せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

新春の集いで、建築家の職能を考える

2019年01月21日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

↑国立競技場の進捗状況、集いの会場の途中の一枚、大屋根の軒の木製ルーバーが現れましたね。

『建築家』の言葉の響きの中には、
皆さん、どんなイメージがありますか?

最近、この専業としての『建築家』という職能が、危ういというのです。
それはもう、独立してから、随分と感じていました。

AIが発達しても、、、、
人の要望を汲み取り、
社会の課題と向き合い
アイデアを出し、
人々を束ねる、、、
そういった職能は
ロボットでは代替できないだろうと言われています。

しかしながら、近々の課題として、
力を発揮する場、自体がない
という危機感が高いのです。

建築家のアトリエで修行し(丁稚奉公)、
設計力を磨き、
クライアントさんを自分で確保できる力をつけて独立し、
住宅を設計して、
さらに事務所の規模が少し大きくなったら、
コンペに応募して公共建築を設計し、有名な建築家になる。

という先輩建築家の方々が通ってきた
「建築家すごろく」は、
私が独立する頃には、なくなりました。

社会情勢の変化で、そんな流れは期待できなくなりました。
コンペの参加資格が厳しくなったからです。

技術者が何人いるか、
実績はどれくらいあるのか、
その応募建物の経験はあるのか、

と、新しいチャレンジャーを受け入れる体制が
行政になくなったのです。

多くのプロジェクトが設計施工のゼネコンに流れたり、
専門的な事務所へと淘汰されてしまったりと、

設計監理に特化した、専業である建築家は、
新規に仕事を開拓できなくなる状況だからです。


↑スーパーゼネコンは過去最高益とのニュースも。
工程表は電光掲示板。IT活用は進む。


建築家の利益が守られないということは、
「ユーザーや発注者の利益が守られなくなっている」ということに
誰も気が付いていないのではないでしょうか。。。。

設計施工では、見積金額も
デザインや工事の内容も、請手がコントロールしやすいからです。

誰が、クライアントさんの声を代弁しますか?
誰が、トラブルが派生した時、代理人とし矢面に立ちますか?

1対1の対立の構図では、決して、ものづくり体制の
バランスが良いとは言えません。

それでも、
スケジュールが組みやすい、
金額がわかりやすい、
設計料には高いイメージがある
という効率優先、安心感優先から、様々なプロジェクトが
建築家に頼むという選択肢が外されているのです。

その危機感を、若手ほど抱いており、
私たちの力や思いで
社会情勢の把握と、問題点を分析をしながら、
自分たちも社会体制も変えていこうということが
日本建築家協会の新春の集いで、話し合われました。

海外から、このために戻ってきたという若手も。
そうなのです。もう個人の問題ではなく
すでに、これは社会問題。

公益法人で、ぜひ話し合われるべき課題と、
熊本と横浜を行き来する生活が始まってから、
なかなか参加できていなかったJIAの活動に
今春は、参加しました。

ここでいう若手は40代です。

「建築家は50歳から」と昔から言われました。
私も、若手を卒業するこの頃、
自分の職能を見極めていこうと思います。

「建築家が選択肢から外されるというのは、
こちらにも問題があるのでは?」
という耳の痛い指摘もあり、
先輩方は苦笑いされておられました。

しかし、若手と(まだ若手のつもり!?)一緒に
目の前の自分の職能としての課題、仕事に精一杯取り組みながらも
みんなで協力するという、新しいステージへ進んでいきます。

一匹オオカミ的存在の建築家の職能が
時代に合わせるのに、遅すぎるくらいかも知れないですね。

私自身は、女性は『ネットワーク』不足。
これが、弱いなぁと感じていて、
いろいろと専門外の集団にも混ぜてもらった40代。

せっかくの社会勉強と人脈を、これからの建築家の職能に
生かして行こうと!心新たに、新春の集いを終えました。

ご準備くださった皆様、発表くださった方々、
そして、懇親会では一緒に歓談してくださった建築家の皆様
ありがとうございました!

ということで、早速、「再生部会」で
熊本の被災した建物の再生事例を、話させてもらいました。



みなさま、真剣に聞いてくださり、
そして、ご経験を元に、修復への様々なご意見を頂戴できました。
まだまだ若輩者ですが、これからもよろしくお願いいたします!