せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

母の日に苦労吹き飛ぶ

2016年05月08日 | ワーク・ライフ・バランス


このブログは、開設当初、ワーキングマザーとして
ワークライフバランスな生活を送れることに
感謝しながらはじめたブログでした。

同じ女性として頑張っている建築士から、
読んで励みになっているというお言葉を頂戴したこともあります。

男性向け、女性向けというのではないのですけれど、
やっぱり同性に共感してもらえるのは、嬉しいです。

仕事のことだけではなく、
ときに家族関係や人間関係、社会のことなど、
季節や自然のことなど、、、本当に多岐にわたって、
書かせてもらっています。

ワーキングマザーの綱渡りのようなスケジューリングに
自分で自分を励ましているという部分も大きいですね。

今日は久しぶりに、ゆったりと過ごさせてもらいました。
なにせ、母の日ですから、笑。

日頃から、自分の行動に制限はありませんが
今日は、家族に付き合ってもらいました。

行きたいところに行って、
食べたいものを食べて、
欲しいものを買って、

と、ちょっとわがままに過ごす休日が、
地震の後だけに
とても特別な1日に感じられました。

私の誕生花でもあるバラ園で、かぐわしい香りを嗅いで
復旧した地元のレストランに伺い
地域のお店で子どもが選んでくれた可愛らしいシャツに
カーネーション。


地震の今後をどうするか考えて焦ったり、
余震にビクビクしたりせずに

今日は気持ちを大きく持って、過ごそう!

そう決めて、なるべく、なるべく
落ち着いていこうと決めての外出。

おかげさまで、いろんなこれまでの苦労も
吹き飛んだ楽しい1日でした。

避難生活の方を思うと、遊びや娯楽を心底楽しめないし
仕事や生活のことも気がかりばかり。

それでも、明日から、また頑張ろうっと!

そして、楽しむ気持ちを取り戻そうっと!

そう誓うのでした。

心のゆとりを得られたことに感謝して。

建築の歴史に学ぶ、歴史を創る

2016年05月02日 | 熊本便り


熊本老舗の酒造会社の伝統的建物の支援を
呼びかけに集まった他県や熊本県下からの
応援大工さんのボランティアで復興するという活動に、
週末の2日間参加した。

日本民家再生協会からの呼びかけで伺った私は
設計事務所部隊として、屋根に登っての作業ではなく
落ちた瓦(落とした瓦もあり)や崩落した土壁の撤去など
瓦礫清掃担当。

創業は慶応3年だそうだから、今年で149年。
どの建物が当初からあったか社歴でも見せてもらうしか
詳しく知ることはできないが、
いずれも100年以上の建物であることは確かだ。


屋根には、板張り、杉の皮の防水、瓦の接着用の土、そして和瓦の順に。
屋根の土の量が半端なく多いので、断熱も兼ねていたのだろうか、と想像する。


そして、それぞれの材料の量に驚く。
今の先端だけ重ねる瓦と違い、重ね代が半分以上の瓦。
これだけの重さに、木組みがよく耐えたと思う。

杉皮もそのままに。
これだけの木を使い、自然素材のみで出来上がった蔵や住まいに
感服しっぱなしであった。


外観だけを見て、美しい街並みにうっとり。
という世界ではなく、構造のズゴさに惚れ惚れする。

壁厚が300mmは優に超える地域の蔵は
丸々した竹そのままに、縄組の下地。

表しになった土壁の下の竹小舞の竹の太いこと!

これだけの手の込んだ「ものづくり」だからこそ、
これだけ耐えて生きてきた。ご疲れさまと声かけしたい。

地震で倒壊しなかったのも素晴らしい!

伝統構法のメカニズムでは、地震時に、外壁が崩落しても
軸組(木の骨組み)が残って、人命を守る。

それが、まさに証明されたとも言える。
復旧、復興は大変なのは確かだ。
それでも、また建築を引き継いで行くことができるのが、
伝統構法なのだろう。

工場が動かせなくなるなど、
被災された関係者の方々の落胆は計り知れない。

それでも、こうして蘇る様を見てもらって
頑張ってもらいたい。

私自身が大地震を体験して、それなりにショックを受け
建築の限界を感じながらも、ものづくりの方向性を見失わずに
また、気持ちが奮い立った。

応援させてもらって感謝である。

遠くは、長野、そして愛知、福岡、宮崎、八代、坂本村、、
様々なところから駆けつけてくださった皆さん、ありがとうございました。


追伸
近くの伝統構法の住まいも拝見させてもらった。
検診効果が見て取れる。基礎と柱とのズレは、約4センチ。
各箇所でズレの方向が少しづつ違っているので、
地震によってかなり動いたことが見て取れる。


もちろんこちらも倒壊せず。一部建具が使いにくくなった程度。
基礎の上の石によるパッキンのような役割の部分
(木の小口から水を吸い上げないための処理でもある)
を復旧すれば、また元どおりである。


壊すのは簡単。でも作り直すのは大変。
こうして、復旧しながら、住み継ぐ、使い継ぐのが
地震国日本ならではの木の建築なのである。