この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

自分がアカデミー会員だったら間違いなくこれを選ぶ『1917 命をかけた伝令』。

2020-02-15 23:46:34 | 新作映画
 サム・メンデス監督、ジョージ・マッケイ主演、『1917 命をかけた伝令』、2/15、イオンシネマ筑紫野にて鑑賞。2020年10本目。


 米国アカデミー賞の作品賞をポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が受賞しました。
 同じアジア人として実に誇らしいことだ、と言いたいところですが、正直『パラサイト』が映画史を塗り替えるほどの傑作だとは思いません。
 『パラサイト』は現代韓国の貧困と格差社会を描いた作品と言われていますが、作中のキム一家のパラサイト生活が破綻したのは結局は彼らの愚かさのせいであり、引いては彼らが貧困にあえいでいるのも同じ理由によるように自分には思えます。
 キム一家が格差社会の底辺で貧困にあえいでいたとしても、格差社会の底辺で貧困にあえいでいる韓国人のすべてがキム一家のように愚かだということはないでしょう。
 ですから自分は『パラサイト』が現代韓国の貧困と格差社会を描いているようには思えないのです。
 『パラサイト』を高く評価しない理由はそれだけではありませんが、ともかく(自分がアカデミーの会員だったとしたら)『パラサイト』をアカデミー賞の作品賞に選ぶことはありません。

 では自分がアカデミー賞の作品賞に選ぶ作品はどれかというと『1917 命をかけた伝令』ですね(ノミネート作品をすべて観たわけではないですが)。
 全編ワンカット撮影が話題となっている本作ですが、そう見えるように編集されているというのが事実のようです(とはいえ、それでもすごいことには変わりないですが)。
 ただ、映像だけがすごくて、内容がそれに伴っていなければ、何だそれ、ということになると思うのですが、本作の場合、ちゃんと中身が伴っているというか、そのように編集されているのは、それが作品を表現するのに最も的確な演出であるからのように思えます。
 戦場の空気の殺伐さ、不条理さ、朴訥さ、そういったものをこれほど見事に表現出来ている戦争映画を自分は知りません。
 なぜ本作がアカデミー賞を受賞しなかったのか本当に不思議でなりません。

 映画のことで一つわからないことがあって、スコフィールドが故郷には帰りたくない、というような台詞を口にするシーンがありますよね。
 そして作品は、彼が家族写真を見るシーンで幕を閉じます。
 写真に写っていたのはおそらく彼の妻と娘であり、妻と娘が待つ故郷に帰りたくないというのはどういう心境なのかがちょっとわかりかねます。
 自分の手は血にまみれているので妻や子を抱くことは出来ない、だから帰りたくないということなのか、それとも妻と娘は不慮の事故で亡くなっていて、待つ者のない故郷には帰りたくないという意味なのか、、、正しい解釈をご存知の方はおしえて下さると幸いです。


 お気に入り度★★★★☆、お薦め度★★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント
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