この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

ちまちまと。

2006-03-11 22:55:36 | 日常




ちまちまと連鶴の新作など折っているところです。

自分の場合、まず設計図(のよーなもの)をテキトーに描いてから、製作に取り掛かるんですけどね。
設計図を描けば、とりあえずその作品が折り上がるものなのかどうかわかるのですが、たまーに頭の中で思いついたアイディアが実際には製作不可能だということもあるので、でもどんな作品になるのかは、実際折ってみないとわかりません。
本サイトトップページに飾ってある『雪華折り』も実際折り上がってみて、あ、雪に見えるじゃん!って思ったぐらいですから。

たまにメールとかで、連鶴を折ってて接続部が千切れちゃうことないんですか?って質問を受けるんですけど、お答えしましょう、滅多にないですが、今回やっちゃいました。ふぅ、って感じです。

今製作中の作品が完成した暁にはまた記事にする予定ですけど、今度ぶっ千切れたら製作を放棄します。
そうならないよーにどうか祈っててください。
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笑わない王子様。

2006-03-10 23:27:48 | ショートショート
 昔々、遠い昔のこと、あるところに笑わない王子様がいました。
 王子様もまだ幼い時分にはよくお笑いになられたのですが、十を過ぎ、身体が大きくなる頃には滅多に笑みを浮かべることもなくなり、十五となった今ではもう感情を表に出すことさえほとんどありませんでした。
 そんな王子様のことを憂いた王様が国中に、見事王子を笑わせることに成功した者には金貨五百枚を与えるものとする、というお触れを出しました。
 そのお触れを見た、人を笑わせることに自信を持つ者たちがこぞって王宮へとやってきました。
 王宮の庭を埋め尽くす人たちに、王様が高らかにこう宣しました。
 お前たち、見事王子を笑わせた暁には、その者に、金貨五百枚を褒美として取らせよう。だが、誰一人として笑わせること叶わぬときは、罰として、しくじった者全ての首を刎ねるものとする、と。
 その言葉に庭を埋め尽くしていた人たちは、まるで蜘蛛の子を散らすかのようにどこかに消えてしまいました。
 皆、王様が決して言を違えぬことをよく知っていたのです。
 残ったのは道化師、大道芸人、行商人、踊り子、哲学者のたった五人でした。
 まずその中からまず道化師が一番手に名乗りを挙げました。
 道化師はよたよたとした動きで王子様の前に進み出ると得意の芸を披露しました。
 それは王様を始めとして王宮にいた者を皆、腹を抱えて笑わせるほど滑稽なものでしたが、王子様は冷たく一瞥くれると、もうよい、下がれ、と道化師に言い放ちました。
 すごすごと引き下がる道化師と入れ代わって今度は大道芸人が王子様の前に現れました。
 大道芸人の芸もそれはまた見事なもので、見る者全てが感嘆の声を上げずにいられませんでしたが、王子様はやはり退屈そうに、下がれ、と言って手を振りました。
 その次の行商人の語る話は、まこと血沸き、心躍る、聞く者が思わず身を乗り出さんばかりに面白いものでしたが、今度も王子様は興味なさげに、下がれ、と同じ台詞を三たび繰り返すだけでした。
 それまでの男三人とは打って変わって、踊り子は妖艶な舞いを王子様に披露しました。 その舞いは男であれば誰もが思わず鼻の下を長くせずにはいられないほど艶かしく、あでやかなものでしたが、王子様は今度は言葉すら発さずに、まるで犬を追い払うかのようにシッシッと二度手を振っただけでした。
 がっくりと肩を落として王子様の前から去る踊り子と入れ代わりに、最後に残っていた哲学者がやってきました。
 慇懃無礼に深く頭を垂れる哲学者の姿に、道化師と大道芸人と行商人、そして踊り子の四人は自分たちの命もこれで終わったと深くため息をつきました。
 とても哲学者が王子様の喜びそうな芸を身に付けているとは思えなかったのです。
 頭を上げた哲学者はすすっと王子様のそばに歩み寄ると、他の誰にも聞き取れないほど小さな声で二言三言、何かを耳打ちしました。
 するとどうでしょう、それまで表情一つ変えなかった王子様がたちまち相好を崩し、にっこりと微笑んだのです。
 その様子を見ていた王様は、見事じゃ!とパンパンと手を鳴らしました。
 深々とお辞儀をする哲学者に、王様はどうやって王子を笑わせることが出来たのかと尋ねました。
 すると哲学者はさらに深く、それこそ地面に額がつかんばかりに深く頭を下げ、この魔法の言葉は秘伝中の秘伝、一日に二度口にすれば我が身が呪われまする、と何と言ったか決して明かそうとはしませんでした。
 頑なな哲学者の態度に、一瞬王様は不愉快そうに顔をしかめましたが、まぁよい、とすぐに機嫌を直しました。
 約束の金貨を前に、道化師たち四人を呼び寄せた哲学者は彼らに金貨を百枚ずつ与え、こっそりとこう言いました。
 決して今日あったことを他言してはならぬ、そして少しでも早く王宮を立ち去るように、と。
 哲学者の言葉に四人は首をひねりましたが無論金貨をもらえるならば不服があろうはずもなく、宴の最中、五人は人目を忍ぶようにして王宮を去りました。
 その夜遅くのこと、密かに寝室を抜け出した王子様は王様を弑しました。
 王様の悲鳴を聞いて駆けつけた警護の者に、王子様は穏やかな笑みを浮かべながら言いました。
 これでこの国は救われる、だとしたら、私の命ぐらい安いものだ、と。
 一ヶ月後、父王殺しの罪で王子様は磔刑に科せられましたが、磔にされてなお、その顔から微笑みが消えることはありませんでした。
 王子様の処刑の報を耳にして、哲学者は、王子は悪王を殺したが、自分は善王となる者を殺してしまったのではないか、と自らに問い掛けました。
 あの日、笑うことを忘れてしまった哀れな王子に、自分が悪魔の囁きをしなかったら・・・。
 そのことを想像すると深い悔恨に襲われ、以後哲学者は生涯二度と笑うことがなかったといわれています。
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公共の場。

2006-03-09 22:46:34 | 雑事
ブログや日記、その他掲示板などのコンテンツも含め、個人的なサイトは公共の場である、という考え方があるみたいです。
なるほどなーと思わないでもないですが、個人的な意見を述べさせてもらうと公共の場であると同時に、サイトはそれ以上に個人の家だと思います。
外から自由に覗き見できて、さらに鍵や戸締りの一切ない家です。

無論個人の家であっても守らなければいけないルールはあります。
例えば、
「ここは俺んちなんだから、大麻の栽培ぐらいやってもいいじゃん!」とか、
「ここは俺んちなんだから、幼女を連れ込んでイタズラしたっていいじゃん!」とか、そんなのは言うまでもなくダメに決まってます。
でも「俺は家では三食カレーを食うことにしてるんだよ!」(自分のことではありません。)とか、
「俺は家ではすっぽんぽんで過ごしたいんだよ!」(これも違いますよ?笑。)ぐらいのことは個人の勝手じゃないでしょうか?
もちろんすっぽんぽんのまま外をうろつかれたり、他人の家に上がり込んだりするのは論外ですけど、自分の家で自分がもっともくつろぐスタイルでいて、それがそんなに責められなければならないことでしょうか?例え外から覗き見されることが前提の家であったとしても。

でも中には「三食をカレーだなんて非常識だ!」とか「例え自分の家であってもすっぽんぽんだなんて許されない!」というのと同じレベルのいちゃもんをつけてくる人がいたりして、そういうのに嫌気が差して、ブログや日記の記事で中道的で差しさわりのない意見しか言わない、明るいネタしか採用しない、みたいな風潮があるようです。
いいじゃんねぇ、って思います。たまにはとんがったことを言っても、愚痴を漏らしたり、弱音を吐いたりしても。
全然構わないことですよね?
毎日いいことばかりだから、日記も明るい話題の記事しかない、というのは自然ですけど、いいことと悪いことが起きる確率は半々ぐらいだけど、暗い話題をネタにすると第三者から不快に思われるかもしれないから書かない、っていうのはすごく不自然なことではないでしょうか。
すごく落ち込んだ日に無理矢理明るい文章で日記を書くのは変だし、いいことがあった日だけ記事を書く、みたいなスタンスだと空白の日が多くなるんじゃないでしょうか?
もちろん記事を書く気力も湧かない日でも記事を書け、っていってるのではありません。
でも、あまり更新日に間が空くと、あれ、この管理人の人に何かあったのかな、って常連だったら心配しちゃうものですから。

不特定多数の第三者の目を気にするのもわかりますけど、特定少数の誰かのために記事を書くってことも大切なのではないでしょうか。
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ペガサス。

2006-03-08 23:22:41 | 日常






えー、本日はネタがないので、いや、ネタはいつもないんですけど、昔折った折り紙作品『ペガサス』を引っ張り出してきました。
え~~~、これがペガサス~?という巷の声が聞こえてきそうですが、いいんですよ、作った本人がそう主張してるんだから!!
基本的に自分はコンプレックス系の作品は作らないのですが、というか、作れないのですが、でもペガサスだけは何とか出来ないものかなぁとチャレンジして作ってみた次第です。
まぁ創作折紙作家の宮島登氏の作品と比べたら月とスッポン、というか月とミジンコぐらいの差がありますが、自分では天駆けるペガサスの飛翔感は表せたんじゃないかとそれなりに気に入っています。
それにしても白い紙で制作した作品をカメラに収めようとしたら、フラッシュを焚いたら陰影が全部消えてワケわからんし、逆にフラッシュを焚かなかったら真っ黒くなるし、撮影に結構苦労しました。
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トップ返り咲き♪

2006-03-07 23:07:22 | 日常
2/28の記事で、Yohoo!検索で『せぷ』と入力して検索してもヒットしなくなってしまった!と報告しました。
どーしてヒットしなくなってしまったのか、いつまでヒットしないのか、少しばかり頭を悩ませていたんですが、今日たまたま検索してみたら何と!再びトップに返り咲いていました♪
わ~~~い、めでたいめでたい♪♪
といっても別にトップにこだわっているわけではなくて、まぁ十位以内に(最初のページに)入っておけばそれで御の字なんですけどね。
ともかく、それまできちんと検索されていたサイトが、ある日突然検索の対象外になる。
それもそのことはサイトの管理人には知らされない。(自分はたまたまそれを知る立場にあったけれど。)
これって、、、怖いことではないですか?
だってどんなに精魂込めて書き上げた文章であっても、それを検索ロボットが勝手にはじいてしまったら、誰も読んでくれないのですし。(実際はそれまでの交流があるだろうから、“誰も”ってことはないでしょうけどね。)
ある意味検閲といってもいいのではないでしょうか?

実はYohoo!検索にヒットしなくなったその日、Yahoo! 検索カスタマーサービスにメールを出してみたんですよ。
そしたら意外なことに返事が次の日には送られてきました。
もっと先延ばしされるかと思っていたのでそういった意味では迅速な対応といっていいでしょう。
まぁメールではありますが、Yahoo! 検索の公式コメントと考えてもいいでしょうから、そこまで長くないので全文掲載します。

「>Yahoo! 検索カスタマーサービスです。
>ご利用くださいまして、ありがとうございます。
>
>お問い合わせの件について、ご案内いたします。
>
>ウェブ検索では、Yahoo! Inc.が管理するデータベースより、検索した
>キーワードと関連のあるサイトのなかから、それらのサイトで公開して
>いるテキスト、タイトル、情報源、存在するリンク、Yahoo!カテゴリ
>もしくは他社のディレクトリに記載されている紹介文などの、そのほか
>のドキュメントがもっている特徴を分析して検索キーワードとの関連性
>の強さを判断し、自動的に表示しています。
>
>このキーワード設定、表示順は、Yahoo! JAPANが利用している検索
>ロボット独自のデータやアルゴリズムに基づくもので、上記以上の詳細
>は非公開とさせていただいております。
>
>また、キーワードによって検索結果に表示されるサイト一覧は、その
>キーワードを含むすべてのページが検索結果に表示されることを保証
>するものではありません。
>
>検索エンジン用ロボットは、約2~4週間ごとにインターネット全体を
>クロールし、自動的にデータを更新していきます。
>
>なお、公平なサービスを提供するため、表示順を故意に変更するなどの
>操作は、有料・無料にかかわらず一切行っておりません。
>
>しかしながら、Yahoo! 検索では、検索結果の精度を向上を目指し、日々
>改善への作業を行っております。その為、変更表示順その他の事項につ
>いては、Yahoo! JAPANのシステムの変更などの理由で、予告なく変更さ
>れる場合があります。何卒、ご了承のほどお願いいたします。
>
>これからもYahoo! JAPANをよろしくお願いいたします。」

迅速な対応ではあると思いましたが、、、実際このメールを読んでも自分が知りたかったこと、つまりなぜ自分のブログがある日突然検索対象から外れてしまったのか、またこういった状況がいつまで続くのかについては、さーっぱりわかりません。
検索条件をすべて教えろ、といっているのではありません。
でも突然検索対象から外れたら、やっぱりその理由は知りたいです。
自分に非があるのか、それとも単に検索条件が変更されたためにヒットしなくなったのか、もしくは検索ロボットの何らかのミスか。
もし自分に非があるなら、それが直せるものであれば直したいし、気にしても仕方ないことであれば気にしないように努めます。
でも検索対象から外れた理由は企業秘密です!一切教えられません!!という対応では宙ぶらりんな状況のままでたまらないし、こうして再び検索されるようになってもまたいつ対象から外されるかと思うとどうにも落ち着かないです。
せめて自分に非があったのかどうかだけでも知りたいなぁ。

ps.小夏さん、その節はご心配をおかけしました。
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さよならの代わりに。

2006-03-06 22:40:52 | 読書
貫井徳郎著、『さよならの代わりに』、読了。

タイムトラベルミステリです。(と帯に書いてある。)
これって何だかもったいないなぁと思う。
だってヒロインの祐里が本当に未来から来たのかどうかがこのお話の最大の謎であるはずなのに、こうもはっきりとタイムトラベルミステリと書かれてあっては興味も半減だと思うんだけどなぁ。
でもこれはある程度作者の意向でもあるらしい。
確かにまーったく何もかも情報を伏せたままあの結末だと納得いかない人がいるんだろーか。
自分はどちらかといえば予備知識ゼロで、つまりはタイムトラベルものだとも知らずに読んでみたかったです。

タイムトラベルものとしては、作者なりに新機軸のアイディアが盛り込まれています。
けれどそのアイディア自体の完成度が如何せん低い。
ん~、ちょっと無理があるんじゃないの~?と読後言いたくなりました。

とはいえ純粋に青春ミステリとして読むとかなりイケル!
登場人物は皆魅力的に描かれているし、一人称で書かれてある文章も非常に読みやすいし、なおかつ自分が一人称の文章に課しているハードルもきちんとクリアしていて、その点は好感が持てました。

実はこの本を買ったときは気分的に落ち込んでいて、まぁ落ち込んでいるのは一年のうち三百日ぐらいあるんだけど、何か気分が明るくなる読み物はないかな~と思って本屋を物色していたので、そういった意味ではこの『さよならの代わりに』はピッタリでした。
でも一つだけ文句を言わせてもらうと、ハードカバーで出版された本が文庫になる前にさらに一段階経て新書で出版されるのってなんだか納得いかないなぁ。
文庫でいいじゃん、文庫で、と思う。
まぁ、でもそう思うのは自分が赤貧に喘いでいるせいだからですけどね。。。涙。
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ミュンヘン。

2006-03-05 23:54:31 | 新作映画
スティーブン・スピルバーグ監督、『ミュンヘン』、Tジョイ久留米にて鑑賞。

おそらく、一映画ファンとして自分はもっともスピルバーグを低く評価している一人です。
例えば『プライベート・ライアン』は、トム・ハンクス扮するミラー大尉の回想で映画が始まるのに、ミラー大尉本人は物語の途中で死んでしまう。
つまり、物語自体が成立していない。
どれほど映像が素晴らしいものであっても物語が成立していない映画を高く評価することは出来ません。
また物語が成立していないといえば『ターミナル』も同様です。
結局最後までなぜ主人公のビクターが空港にとどまることに拘るのか、その必然性が理解できませんでした。(これは自分の理解力不足もありますが。)
今後『ターミナル』が語られるとすれば、それは全編セットで撮影されたという点においてのみで、感動ドラマとしての出来ははっきりいってイマイチだと思います。
その他『マイノリティ・リポート』は印象に残っているシーンは目玉がころころと転がっていくところだけだし、『宇宙戦争』も映像は凄まじいものの、物語としてはどうにも中途半端な感が否めないし、『A.I』にいたっては何がいいたいのかすらさっぱりわかりません。
もういいだろう、と思っています。
エンターティメント作家としてのスピルバーグに付き合うのも、期待するのも。

ではこれほどまでにスピルバーグに対して辛口の評価を与える自分が、なぜ『ミュンヘン』は観に行かなければいけないと思ったのか。
それは『ミュンヘン』が、一人の人間としてのスピルバーグの遺言だと自分は受け取ったからです。
遺言という言い方に語弊があるなら命を賭したメッセージと言い換えてもいい。
大袈裟でも何でもなく、ユダヤ人であるスピルバーグは『ミュンヘン』を製作したことによってパレスチナ側ではなくむしろ同胞であるユダヤ人から「裏切り者!」と糾弾されています。
そのことが事前に察知できないスピルバーグではないと思う。
だからこそ『ミュンヘン』は秘密裡に撮影が行われたのだから。

マイケル・ムーアというジャーナリストがいます。
日本では単なる突撃レポーターとしてしか捉えられていない感があるが、自分は個人的にすごいヤツだと思ってます。
何しろ噛み付く相手がただの芸能人や有名人じゃない、相手は仮にもホワイトハウスの間借り人、世界一の権力者なのだから。
並みの人間ではとてもそんな勇気は持てないでしょう。
時の権力者に歯向かえば、いつ殺されたって不思議じゃない。もちろん常識や理屈で考えれば権力者に歯向かったからといって即、殺されるわけではないはずだけれど、今の時代、物事は常識や理屈では割り切れない。
そのムーアが監督した『華氏911』ですが日本では殊の外評判が悪い。なぜか?ドキュメンタリーとして内容が偏っているから、という話も聞くけれど、これは的外れな評価です。
なぜならドキュメンタリーとはそもそも内容が偏っているものだから。
例えば大自然の素晴らしさを謳う内容であれば、同時に物質文明の利便さが語られることはない。
優れたドキュメンタリーは偏った内容とともにどこまでもクールな視点が必要です。
例えばアザラシの赤ちゃんが白熊に襲われたからといって、カメラマンはいちいちアザラシを助けにいってはいけない。
ただひたすらアザラシが白熊に食い殺されるのをカメラに収めなければいけない。
優れたドキュメンタリー作家はそのメッセージを伝えるためにあえて非情に徹しなければならない場合もある。
その点、ムーアは非情に徹し切れなかった。『華氏911』では戦争に行った息子のことを想い泣き崩れる母親に、ムーアが思わず駆け寄るシーンがある。
だがこれは、一流のドキュメンタリー作家ならばやってはいけないことだった。
観ているこちらが白けてしまう。
そのシーンだけでなく、『華氏911』では随所でムーアの感情の高ぶりが感じられる。
だから『華氏911』はドキュメンタリー映画としてはどこまでもいっても二級品でしかない。

一方『ミュンヘン』ですが、こちらは三時間にも及ぶ長尺の作品であるにも関わらず、スピルバーグが込めたメッセージは甚くシンプルです。
報復の連鎖は空しい、ただそれだけ。
当たり前のことでしかないはずですが、今の世の中、当たり前のことを主張するのはひどく難しい。
声高に当たり前のことを主張されても受け手が「ふ~ん、それで?」と交わされてしまう可能性があるからです。
だからこそシンプルな言葉に説得力を持たせるためにスピルバーグは三時間もの長さを必要とした。
そしてさらに自らの言葉にリアリティを持たせるためにスピルバーグが用意したものに自分は驚かずにはいられませんでした。
同胞であるユダヤ人たちからの危険を感じ取った主人公のアブナーは、イスラエル大使館に乗り込むとモサドのメンバーに向かってこう叫ぶ。
「私の家族に手を出したらお前の子供を殺すぞ!!」
吃驚しました。
何しろ、報復の連鎖の空しさを説く作品であったはずなのに、主人公自らやったらやり返すぞ、といってるのだから。
スピルバーグは凡百な映画監督ではありえないな、と思った。
主人公にあえて作品に込めたメッセージを否定するような台詞を口にさせることによって、逆に観客が二重三重にメッセージを考えずにはいられないように仕向けるとは!
すごい。
これは、限りなくドライな、ムーアと対極を為す演出だといえるでしょう。

残念ながら『ミュンヘン』の日本での興行成績は奮わないようです。
有名どころの俳優が一切出ていない、上映時間が長すぎる、演出が残虐すぎる、メッセージはシンプルでありながらわかりづらい、時代背景に馴染みがない、そして何より内容が暗い、と幾つも奮わなかった理由を挙げることが出来ますが、それでもなお、今のような混沌とした時代を生きる我々は、『ミュンヘン』という映画を観に行くべきだと思います。
エンターティメント作家としてのスピルバーグにはこれ以上付き合う気にはなれない、といいましたが、『ミュンヘン』のようなテーマ性の深い作品であればまた次も観に行かないわけにはいかないな、そう思いました。
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サガン鳥栖vsコンサドーレ札幌。

2006-03-04 20:28:57 | 日常



サッカーJ2リーグ2006年開幕戦、サガン鳥栖vsコンサドーレ札幌の試合を観戦してきました!(写真は試合前スタジアムの外で大道芸をやっていた人。デカイ風船を頭から被ってました。笑。)

自慢じゃないですけど鳥栖市に住んでいながら今まで一度もサガン鳥栖のホームゲームを観に行ったことはありませんでした。(スタジアムは家から車で10分のところにあるのにねぇ。)
というか生まれてこの方スポーツ観戦自体したことがなかったです。(野球観戦なら福岡ドームが大学から歩いていけるところにあったのにねぇ。)
スポーツ観戦はテレビで充分!という考えの持ち主でした。
それがなぜ、今日の試合に限って観に行くことになったか。それはですね、歌手の平原綾香が開幕セレモニーで生で歌うという話を聞き、しかも鳥栖市民は事前に配布される招待券を入手すれば観戦が無料だったからです。
さすがに重い腰を上げようか、という気にもなります。笑。

初のサッカー観戦となったわけですが、観に行ってよかったです。
やっぱり実際スタジアムに足を運ばなければわからなかったこと、知らなかったであろうことが多かったですから。
まず、一番最初に「え?」と思ったのが観客席から見たゴールポストの小ささ。
最初観客席に腰を下ろした時ちょうど前座試合のサガン鳥栖U15vs城東中学戦が行われていたんですけど、絶対本試合では別のゴールポストが準備されるはず!そう思えるぐらいゴールポストは小さく見えました。(Jリーグと中学生でゴールポストの規格が同じだということも知らなかったです。)
次に何と言っても応援のやかましさ。(といっても不快なものではない。)
それこそ地を揺る動かし、天を震わさんとばかりにサガン鳥栖、コンサドーレ札幌のサポーターたちは声を上げ、鳴り物を鳴らしていました。
これが臨場感ってヤツかぁって思いました。
あと何と言ってもサッカー観戦は疲れるものだということは実際観に行かなければわからないことでした。
ただのんびりボールの行方を目で追っていればいいというものではなかったです。草野球とは違いますね、やっぱり。

さて肝心の試合結果というと0対1でサガン鳥栖が惜しくも負け。
素人目から見て、というか客観的に見ても、全般的に(特に後半は)サガン鳥栖がボールを支配していたように映ったのですが、決定的なチャンスを幾度となく逃したサガン鳥栖に比べ、数少ないチャンスを確実に決めたコンサドーレ札幌が結局サガン鳥栖よりも一枚上手でした。
残念ながら試合には負けてしまいましたが、個人的には満足したのでまたいつか観に行ってもいいかな、という気にはなれました。

といった感じで観戦レポートを終わらせてもいいんですが、実は続きがあって、試合が終わって家に帰ってみるとお袋が朝日新聞のプレゼントに応募していたサガン鳥栖の(今シーズン限り一回有効の)プレミア席チケットが送付されていました。
これってお前はサガン鳥栖のサポーターになれ!という神様の思し召しなのでしょうか?
モキエルさん、よかったら(敵味方に分かれて)観に行きませんか?笑。
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時には科学的な話題でも。

2006-03-03 23:38:45 | 雑事
突然ですが、氷の上ではつるっと滑りやすいのはなぜか、知っていますか?
何だか当たり前のことすぎて、返って答えにくい質問かもしれないですね。
例えばなぜ空が青いのか、といった類いの疑問と同じなのかもしれません。(空がなぜ青いについてはこちら。
もしかしたら科学に詳しい人であれば、「氷に体重を掛けると圧力が生じ、その部分の氷が水になり、床に水を撒いたような状態になるので滑りやすくなる」といった説明をするのではないでしょうか?
これを「圧力融解説」というのだそうです。
「圧力融解説」という言葉自体はもちろん知りませんでしたが、氷の上で滑りやすい理由、自分もこれに近いものだと思っていました。
なぜかというと教科書に確かこういう記述が載っていたような記憶があるので。
ところがですね、3/1付けの朝日新聞の朝刊の記事によると、どうやらこれが誤りらしいのです。
というか、氷の上では滑りやすい理由、「圧力融解説」の他に「摩擦融解説」、「擬似液体膜潤滑説」、「凝着説」などが考えられるらしいのですが、いまだどれもまだはっきりとは決め手に欠けるとのこと。(「凝着説」についてはこちら。
自分はこの記事を読んで「へぇ~」と思いました。
まず何といっても教科書に載っていることが正しいとは限らないということ、また氷の上というごく身近に存在し、かつ再現もしやすい状況下での事象についてわからないことがあるというのはとても面白く感じられたのです。
もしかしたら宇宙の果てに何があるのか判明した時もまだ氷の上で滑りやすいのはなぜかわかっていないのかもしれないんですよ?
ごくごく身近な世界にも謎はまだまだ残されているんだな~と思いました。
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人を呪わば・・・。

2006-03-02 23:12:21 | 雑事
 自分は2/21の記事でワニchanさんという方のサイトのことを取り上げました。
 あの記事は、見る人によっては個人バッシングにも取れるでしょうから、不快に思った方も多いと思います。
 ただ、一つだけ断っておきたいのは自分は気に入らない相手であれば誰にでも噛み付いているわけではない、ということです。
 先日も、ある人のブログで非常に腹立たしいコメントを残している人がいて、どんなコメントかというと、、、いや、もちろん秘密です。もし万が一自分がどんなコメントを腹立たしく思ったか、気になる方はメールをください。その場合はお教えします。
 ともかく、【ブログや日記において愚痴を漏らしたり、弱音を吐いたりするのは時として悪いことではない】ということと【ネットでのトラブルは気配りだけでは解決できない場合もある】という自分の考えをきちんと述べたかったのです。
 そしてそのことを記事にするに到った経緯で、ワニchanさんのサイトのことを取り上げないわけにはいかなかった。ある人の、あるサイトの、あるコンテンツで、といったあやふやな説明では記事全文が説得力を欠く、そう思ったのです。

 さて、ワニchanさんのサイトにクレームをつけた自分なのですが、人を呪わば何とやらで、今度はある人から自分の書いた記事にクレームをつけられてしまいました。
 クレームをつけた人のHN、及びどの記事に対してのクレームかは事情があって言えませんが、仮にその人のことをAさんとしておきます。
 事の起こりはAさんが自分の記事につけてくれたコメントを、自分が別の記事に引用したことでした。
 コメントを無断で引用したこと自体快くは思われなかったようなのですが、さらに引用後、そのことを一向に報告しにこない自分に対してAさんはひどく腹を立てられ、名指しでこそないものの、自分がコメントを無断引用したことについての記事を書かれました。
 記事の中の、Aさんのあまりの激昂ぶりは、自分が思わずびびって謝罪のコメントをつけずにはいられないほどでした。
 しかし冷静になって考えてみると、このクレームには首を傾げずにはいられませんでした。
 例えば「私のコメントを勝手に引用された!その際文意がまったく捻じ曲げられてしまっている!けしからん!!」というクレームであれば怒るのも当然と思います。けれど自分は全文抜粋でこそないものの、引用の際、文意は損ねないように細心の注意を払いました。
 また「コメントを引用されたが、私のコメントだと書かれていない!許せない!」というクレームでもわかります。もちろん自分はちゃんと「Aさんが述べていたことですが」と断りを入れていますが。
 もしくは「コメントの引用の際、ひどく侮蔑的な扱いを受けた。屈辱だ」というふうなクレームであれば怒るのもわからないではないです。けれど神に誓ってよいですが、自分はAさんのコメントをぞんざいに扱った覚えなどなく、もちろん皮肉もいってないし、批判も否定もしていません。それどころか、Aさんの考えはなるほど一理ある、というふうに紹介しています。
 あえてどういったクレームであれば自分はそうされても仕方ないと思うか、例を挙げましたが、そもそもAさんが立腹されているのはコメント引用後の報告(挨拶?)がないことに対してです。
 これが正直言ってよくわかりません。
 報告せよ、といわれてもどこに報告すればいいかがまずわからない。
 引用したのはAさんのブログの記事からではなく、あくまで自分の記事に対してのコメントからでしたから、自分の書いた記事はAさんのブログの記事とは一切関連はありません。
 ですからトラックバックは出来ませんし、コメントをつけるにしても記事本文とはまったく関係のないコメントになります。
 自分はそうではありませんが、記事とは無関係なコメントを厭うブロガーの方もいらっしゃいます。
 さらにいわせてもらえば、そもそも誰かの発言や何かの記述を引用する際、引用後の報告、または引用前の許諾申請など聞いたこともない話です。
 もしそうしなければならないなら新聞のコラム欄などで有名人や政治家の発言を取り上げることなど出来ませんから。(失言を取り上げられることの多い政治家は特にそうです。)
 一応自分の考えを補足するために著作権と引用について調べてみました。こちら。
 結論からいえばAさんのクレームは荒唐無稽であり、無視しても構わないものであったと思います。
 ただ自分の場合は一度はAさんのクレームの記事において謝罪をしているので、その謝罪を撤回するためにこの記事を書きました。
 結局のところ【ネットでのトラブルは気配りだけでは解決できない場合もある】という自論を身をもって証明する羽目になってしまいました。
 そんなこと、証明したくもなかったんですけどね。

ps.今回の件で知り合いの数名のブロガーの方に相談させてもらいました。(自分だけではどうにも判断がつきかねることだったので。)
 結果としてアドバイスに背くことになった方もいますが、皆さん親身になって相談に乗ってくれ、また有効なアドバイスをしてくれました。
 大変感謝しています。ありがとうございました。
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