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ある平凡な主婦の、少しの追憶(24)

2007年06月22日 11時36分47秒 | ある平凡な主婦の、少しの追憶(一部R18)
「お風呂、一緒に入らない?」
夫が誘ってきた。

これからやること山ほどあるんだけど・・・
ため息をついてみせても、
お構いなしに、太股のあたりに手を伸ばしてくる。

私は素早く計算する。

ここで断ると機嫌が悪くなる。
前回したのは一週間前だから、そろそろしておかないといけない。
それだったら、お風呂でしたほうが早くすむ。
ベッドに行こうと言われる前に、お風呂で手を打ったほうがいい。

「じゃ、お風呂行こう」
言い置いて、さっさと脱衣場に向かった。



この日、子供達が寝静まった後に夫は帰ってきた。

夫が夕飯を食べ終わるのを、横でお茶を飲みながら待つ。
私自身は子供達と一緒に食べてしまっているのだが、
夫は一人で食事をするのが嫌なんだそうだ。

食事をしながら、夫は会社の愚痴をこぼしている。
夫も夫で大変なんだ、とは思う。

でも、私もね。
日中は子供達に付きっきりで何もできないの。
今、あなたがご飯を食べ終わったら、その食器の片づけをして、翌日の朝食と昼のお弁当と夕飯の下ごしらえもしなくちゃいけないの。
洗濯物だってたたまなくちゃいけないし、アイロンもかけなくちゃいけない。
だから自分の時間なんてほとんどないの。
土曜日も日曜日も関係ないの。毎日そうなの。

・・・って、言ったこともある。
すると夫は「大変だよね。偉いよね」と褒めてくれる。
でも褒めてくれるだけで、何かしてくれるわけでもない。
だから言うだけ無駄なので、言わないことにしている。


最近、自分が不感性になったのではないか、と疑いたくなるときがある。
お風呂での行為だと、特にそう思う。
どんなにがんばってくれても痛いだけ、ということが多い。
だから、適当にお付き合いをして、
あとは、夫の物を綺麗に洗ってから、口と手でして、事を終わらせてもらう。
なるべく、夫には気取られないように気をつけてはいる。
この一連のことが、私にとってどんなに苦痛であるか、ということは。

そんな時、いつも考えるのは、
「私は夫のどこを好きになって結婚したんだろう」ということだ。

年上の夫は、頼りがいがあって、いつでも私のことを愛してくれて、守ってくれる。
愛してくれていることは確かだと思うのだ。
それがやや自分勝手な愛情表現であっても、十分伝わってくる。
それを幸せなことだと思わなくてはならない。
ただ、私に対する愛情を少し切り取って、子供達にも向けてほしいと思ってしまう。

価値観が同じだったことも、結婚した理由だった。
でも、子供が産まれてからというもの、その価値観はどんどんずれていった。
夫の価値基準は、自分>夫婦>子供。
私は、子供>自分>夫婦。

・・・変わったのは、私の方なのかも知れない。


お風呂から上がり、寝室で寝そべっている夫に、今日、階下の奥さんから言われたことを報告した。
出来ることなら、一戸建てに引っ越したい、と思うことも正直に話した。
今より駅から少々遠くなれば、なんとか買い替えできるのではないか、と。

「無理に決まってるだろ。そんな金ないし、それに駅から遠くなるのは嫌だよ」

以上、終了。
検討する気もないらしい。

いつでも守ってくれるところに惹かれた、はずだった。
頼りがいのあるところが好きだった、はずだった。

やっぱり、変わったのは私だけではないみたいだ。
コメント (5)
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