“ヘブン”までの道のり、私たちはわざとらしいほどはしゃいで話をしていた。
でも、彼と2人で電車に乗ったり、歩いたりしているところを夫に見つかったら・・・
と思うと恐ろしくて体が固まりそうになる。
数年前、飲み会に彼が来た、と夫に話した途端、
周りにあった本やクッションを壁に投げつけられた。
夫は、私や子供たちに暴力を振るったことは一度もないが、
すぐに物に当たったり、怒鳴ったりするのだ。
普段は優しいのに、激昂すると何をしでかすかわからない。
知らず知らずのうちに、夫の機嫌を損ねないよう、
気を使いながら生活している私がいた。
でも、子供に囲まれて過ごす幸せな毎日だと思う。
夫が働いてくれているから、何不自由なく生活できている。
私が少し我慢すれば、この幸せは続くのだ。
少し、我慢すれば。
「こっちだっけ?」
彼に問われ、我に返る。
そう。この道を曲がれば“ヘブン”に着く。
“ヘブン”は空いていないだろう。
今まで空いていたことなんてないんだ。
でも、あれから何年も経っている。
それに、平日の昼間に来るのは初めてだ。
もしかしたら・・・空いてる?
私はいったいどちらを願っているのだろう。
今まで通り、平穏で幸せで、でも自分を押し殺した毎日?
それとも・・・。
「ホントに入る?」
彼が振り返る。
「ま、空いてないだろうけどね」
ハハハと彼も笑う。
彼自身もそうだ。
結婚を控えている彼。
私とのことを婚約者に知られたら・・・?
答えを出せないまま、“ヘブン”のドアが開いた。
どうせ、空いていないんだ。
それが私たちの運命。
以前と変わらない豪華なロビー。
奥の方に、部屋の写真のパネルが置いてある。
電気がついているパネルの部屋が空いているということだ。
20部屋ある部屋の写真は・・・
全て真っ暗だった。
「・・・空いてないね」
顔を見合わせて笑ってしまう。
お互いホッとしている。
やっぱり、これでいいんだ。
「これからどうする?三時まで時間・・・」
言いかけて、息を飲んだ。
今、中央にある写真のパネルが・・・点灯した。
でも、彼と2人で電車に乗ったり、歩いたりしているところを夫に見つかったら・・・
と思うと恐ろしくて体が固まりそうになる。
数年前、飲み会に彼が来た、と夫に話した途端、
周りにあった本やクッションを壁に投げつけられた。
夫は、私や子供たちに暴力を振るったことは一度もないが、
すぐに物に当たったり、怒鳴ったりするのだ。
普段は優しいのに、激昂すると何をしでかすかわからない。
知らず知らずのうちに、夫の機嫌を損ねないよう、
気を使いながら生活している私がいた。
でも、子供に囲まれて過ごす幸せな毎日だと思う。
夫が働いてくれているから、何不自由なく生活できている。
私が少し我慢すれば、この幸せは続くのだ。
少し、我慢すれば。
「こっちだっけ?」
彼に問われ、我に返る。
そう。この道を曲がれば“ヘブン”に着く。
“ヘブン”は空いていないだろう。
今まで空いていたことなんてないんだ。
でも、あれから何年も経っている。
それに、平日の昼間に来るのは初めてだ。
もしかしたら・・・空いてる?
私はいったいどちらを願っているのだろう。
今まで通り、平穏で幸せで、でも自分を押し殺した毎日?
それとも・・・。
「ホントに入る?」
彼が振り返る。
「ま、空いてないだろうけどね」
ハハハと彼も笑う。
彼自身もそうだ。
結婚を控えている彼。
私とのことを婚約者に知られたら・・・?
答えを出せないまま、“ヘブン”のドアが開いた。
どうせ、空いていないんだ。
それが私たちの運命。
以前と変わらない豪華なロビー。
奥の方に、部屋の写真のパネルが置いてある。
電気がついているパネルの部屋が空いているということだ。
20部屋ある部屋の写真は・・・
全て真っ暗だった。
「・・・空いてないね」
顔を見合わせて笑ってしまう。
お互いホッとしている。
やっぱり、これでいいんだ。
「これからどうする?三時まで時間・・・」
言いかけて、息を飲んだ。
今、中央にある写真のパネルが・・・点灯した。