創作小説屋

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ある平凡な主婦の、少しの追憶⑫

2007年06月08日 09時51分57秒 | ある平凡な主婦の、少しの追憶(一部R18)
結局、その後は、駅近くの屋台の鯛焼きを食べながら、立ち話をしていた。
あっという間に時が過ぎて、彼が会社に行く時間になったので、私は帰ることにした。

「そういえば、8年前もここで別れたよね」

駅の改札口の横。最後のキスをした。

「オレ、帰ってから朝までずっと泣いてたんだよね」
「なにそれ」

自分から振ったくせに。
これだから男は自分勝手だというのだ。

「嫌いになったわけじゃなくて、もっと好きな子ができてしまった」

8年前、そう言われた。
「嫌いになった」と言われた方が楽だったのかもしれない。
そして、彼のことを嫌いになれたら、どんなに楽だっただろう。

「それじゃ、またね」

今度会うのは、彼の結婚式後。
二次会のパーティーの席だろう。

「最後にまたキスでもしとく?」
「バーカ」

ふざけて口をとがらせた彼の左頬に、グーでパンチをくれてやって、
そして、背を向けた。

もう、彼と2人きりで会うことはないだろう。
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