その一言を言った途端、2人はアタフタと色々言っていた。
「でも、祐介君、普通っぽいからわからないわよね」
「大変だと思うけど、がんばってね」
「早めに分かってよかったじゃない。こんなに早く分かったなら早く治るんじゃない?」
等々等・・・。
自閉症は治らないんですよ、なんて訂正する気にもならなかった。
申し訳なさそうに、
「今後またご迷惑おかけすることもあるかと思うんですが、よろしくお願いします」
と、頭を下げるだけ下げておいた。
いつかは言わなくてはいけない日がくるとは思っていたけど、こんなに早くその日がくるとは思ってもいなかった。
でも、今後、長男を公園で遊ばせる際にトラブルが起きることを考えると、言っておいて正解だと思う。
長男は私の鬱々とした心なんかおかまいなしに、まだブランコをこいでいる。
きっと短くてもあと30分はこぎ続けるだろう・・・。
この日、夫は出先から直帰だったため、帰りが早かった。
玄関のドアが思い切り閉められたところを見ると、機嫌は最高潮に悪いようだった。
「おかえりなさい。・・・どうかした?」
聞いてみると、夫は真っ赤な顔をして睨んできた。
「どうかした、じゃないよ。祐介のこと、隣の奥さんに話したのか?」
「・・・・・・」
隣の奥さんには話していない。
話していないけど、もう伝わったということか。
「今、エレベーターで一緒になって『祐介君、大変ですね。私達にできることがあったら言ってくださいね』なんて言われたぞ!」
「そう・・・」
へえ・・・隣の奥さんいい人だなあ。
なんて呑気に思ったが、夫はそうではないらしい。
持っていたカバンを床に勢いよく投げつけた。
「なんで言ったんだよ!まだ小さいんだから、自閉症かどうかなんて分からないだろう!」
「・・・・・・は?」
この期におよんで何を言ってるんだ?
「祐介は自閉症だよ。正式な検査をしてそういわれたんだよ。知能だってまだ一歳代・・・」
「馬鹿なこと言うなよ!」
ドンッと壁を殴りつける夫。
「なんでオレの子供が自閉症なんだよ!」
「なんでって・・・」
「だいたい、なんで近所の人間に言うんだよ! みっともない!」
ドンドンドンッと壁が鳴る。
子供達が何事か、と子供部屋から出てきた。
長女は夫のただならぬ様子を見て、怯えて私にしがみついてきた。
長男は・・・ケタケタと笑いながら、夫の真似をして壁を叩きはじめる。
「祐介!やめろ!」
夫が自分のことは棚にあげて長男を静止した。
長男はやめない。むしろ、楽しげに両手を使ってリズムカルに叩いている。
ぼんやりと、この子結構リズム感いいかもな、なんて呑気に思った。
夫は口をパクパクとさせて、その様子を見ていたが、
やがて大きく大きく息を吐き出し、
「メシいらない。外で食ってくる」
背中でそういって、玄関を開けた。
パタンっと静かに玄関はしまった。
長男はまだ、壁を叩き続けている。
「でも、祐介君、普通っぽいからわからないわよね」
「大変だと思うけど、がんばってね」
「早めに分かってよかったじゃない。こんなに早く分かったなら早く治るんじゃない?」
等々等・・・。
自閉症は治らないんですよ、なんて訂正する気にもならなかった。
申し訳なさそうに、
「今後またご迷惑おかけすることもあるかと思うんですが、よろしくお願いします」
と、頭を下げるだけ下げておいた。
いつかは言わなくてはいけない日がくるとは思っていたけど、こんなに早くその日がくるとは思ってもいなかった。
でも、今後、長男を公園で遊ばせる際にトラブルが起きることを考えると、言っておいて正解だと思う。
長男は私の鬱々とした心なんかおかまいなしに、まだブランコをこいでいる。
きっと短くてもあと30分はこぎ続けるだろう・・・。
この日、夫は出先から直帰だったため、帰りが早かった。
玄関のドアが思い切り閉められたところを見ると、機嫌は最高潮に悪いようだった。
「おかえりなさい。・・・どうかした?」
聞いてみると、夫は真っ赤な顔をして睨んできた。
「どうかした、じゃないよ。祐介のこと、隣の奥さんに話したのか?」
「・・・・・・」
隣の奥さんには話していない。
話していないけど、もう伝わったということか。
「今、エレベーターで一緒になって『祐介君、大変ですね。私達にできることがあったら言ってくださいね』なんて言われたぞ!」
「そう・・・」
へえ・・・隣の奥さんいい人だなあ。
なんて呑気に思ったが、夫はそうではないらしい。
持っていたカバンを床に勢いよく投げつけた。
「なんで言ったんだよ!まだ小さいんだから、自閉症かどうかなんて分からないだろう!」
「・・・・・・は?」
この期におよんで何を言ってるんだ?
「祐介は自閉症だよ。正式な検査をしてそういわれたんだよ。知能だってまだ一歳代・・・」
「馬鹿なこと言うなよ!」
ドンッと壁を殴りつける夫。
「なんでオレの子供が自閉症なんだよ!」
「なんでって・・・」
「だいたい、なんで近所の人間に言うんだよ! みっともない!」
ドンドンドンッと壁が鳴る。
子供達が何事か、と子供部屋から出てきた。
長女は夫のただならぬ様子を見て、怯えて私にしがみついてきた。
長男は・・・ケタケタと笑いながら、夫の真似をして壁を叩きはじめる。
「祐介!やめろ!」
夫が自分のことは棚にあげて長男を静止した。
長男はやめない。むしろ、楽しげに両手を使ってリズムカルに叩いている。
ぼんやりと、この子結構リズム感いいかもな、なんて呑気に思った。
夫は口をパクパクとさせて、その様子を見ていたが、
やがて大きく大きく息を吐き出し、
「メシいらない。外で食ってくる」
背中でそういって、玄関を開けた。
パタンっと静かに玄関はしまった。
長男はまだ、壁を叩き続けている。