「じゃ、帰るね」
財布と携帯を手に取って、靴を履く。
本当に身軽に来てしまったものだ。
「ちょっと待って」
彼が煙草を消してこちらに歩いてきた。
Gパンだけ履いている。
「一つ、お願い」
「何?」
やっぱり、今日のことはなかったことに・・・?
身構えると、両手を差し出された。
「抱きしめてもいい?」
「え?」
「10秒でいいから」
肯くよりも早く、ギュッとかき抱かれた。
彼の素肌の胸に頬を押しつける。
細いわりに筋肉のついた胸。
ざらざらとした背中。
固く引き締まった腰。
ああ・・・なんて居心地がいいんだろう。
このまま時が止まればいいのに。
「・・・・・・」
また、フラッシュバックが起こる。
そう、「このまま時がとまればいい」と、8年前も思った。
ここで手を離したら、彼は彼女の元に行ってしまう。
このまま時が止まってくれれば、彼はずっと私のそばに・・・。
「・・・ハチ、キュウ、ジュウ!」
記憶を追い払うように、大きな声でカウントして、
「じゃ、北海道まで気をつけて帰ってね」
彼の胸を押しやり、下を向いたままドアを開けた。
彼の顔を見ることは出来なかった。
財布と携帯を手に取って、靴を履く。
本当に身軽に来てしまったものだ。
「ちょっと待って」
彼が煙草を消してこちらに歩いてきた。
Gパンだけ履いている。
「一つ、お願い」
「何?」
やっぱり、今日のことはなかったことに・・・?
身構えると、両手を差し出された。
「抱きしめてもいい?」
「え?」
「10秒でいいから」
肯くよりも早く、ギュッとかき抱かれた。
彼の素肌の胸に頬を押しつける。
細いわりに筋肉のついた胸。
ざらざらとした背中。
固く引き締まった腰。
ああ・・・なんて居心地がいいんだろう。
このまま時が止まればいいのに。
「・・・・・・」
また、フラッシュバックが起こる。
そう、「このまま時がとまればいい」と、8年前も思った。
ここで手を離したら、彼は彼女の元に行ってしまう。
このまま時が止まってくれれば、彼はずっと私のそばに・・・。
「・・・ハチ、キュウ、ジュウ!」
記憶を追い払うように、大きな声でカウントして、
「じゃ、北海道まで気をつけて帰ってね」
彼の胸を押しやり、下を向いたままドアを開けた。
彼の顔を見ることは出来なかった。