創作小説屋

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ある平凡な主婦の、少しの追憶(42/50)

2007年07月22日 10時50分08秒 | ある平凡な主婦の、少しの追憶(一部R18)
私の実家は一軒家である。
しかも、二方は私道に面していて、一方は空き地。
唯一隣家と接している一方は、そこそこ広い庭を挟んでいる。
多少うるさくしたところで、迷惑がかかることはない。

黙って家を出ていったことには、文句を言われたけれど、
実家に帰ることについては、夫も賛成してくれた。

騒音にビクビクして生活することに、
私がここまでストレスを感じているということを、
ようやく理解してくれたらしい。

私も私で、実家に帰った直後は「離婚」の二文字が頭を離れなかったけれど、
子供たちのためにも冷静になって考えるべき、と、
その思いをとりあえず横に置くことにした。

土日の夕方になると、夫は夕食を一緒に食べるために実家にやってくる。
日中は家で一人静かに昼寝をしたりテレビゲームをしたりできるので、
夫は夫で快適な生活が送れることを密かに喜んでいるようだ。

私は私で、音を気にしないでいいという開放感を満喫していた。
ついでに、夫の夜の生活の相手というストレスからも解放されて、
心身共にリラックスできていた。

でも、この清々しさは、その理由だけではないのだろう。

時折思い出す、彼との一夜の出来事。
そして、その後の彼からのメール。

「付き合って欲しい」

現実になることはないだろう約束。
そんなことはよく分かっている。
ただ、お互いが特別な存在であることを確認しあえたことが嬉しい。
ただ、それだけだ。

本当にそうなることは、お互い望んでいない。



実家に帰って、早くも1ヶ月が経とうとしていた。

長女はよく行く公園でお友達ができた。
毎日嬉しそうに出かけていく。

長男はビックリするほど落ち着いている。
ブランコだけでなく、すべり台もお砂場遊びも出来るようになった。

「ほら、あんたの考えすぎなのよ。この子に障害なんてあるわけないじゃない」

と、母に言われた。
それには苦笑するしかなかった。
母は長男の障害を認めていないのだ。

反対に父は色々と勉強をしてくれていて、
長男の障害を受け止めてくれている。
長男の障害に関する私の唯一の相談相手は父だった。

障害について色々と話せることが、
こんなにも気が晴れることだとは知らなかった。
長男が最近落ち着いているのも、私が安定しているせいかもしれない。
話すことで、解決法が見つかるかどうかなんてことは問題ではなく。
ただ、今の悩みに寄り添ってくれる人がいることが嬉しかった。

夫がそうしてくれていたら、私がここまで追いつめられることはなかったはずだ。
夫婦というのは寄り添って生きていくものだと思っていた。
最近、私たちはまったく違う方を向いて生きている、と感じてしまっている。
コメント
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