創作小説屋

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ある平凡な主婦の、少しの追憶(28)

2007年07月02日 21時37分13秒 | ある平凡な主婦の、少しの追憶(一部R18)
少し歩いたところに、噴水のある公園がある。
この時間だと水は出ていないのでただの小さな池になっている。

4車線ある道路に面しており、
深夜3時を過ぎてもそれなりに車が通るため、
変な輩に絡まれる心配がないところがいい。

8年前までも、よくこの公園で始発が出るまでお喋りしたりしていた。
こうして2人でベンチに座っていると、
時間が8年前まで戻ったかのような錯覚に陥る。

「懐かしいって感じがしないなあ」

煙草を手に彼が言う。

「一週間前もこうして2人で座ってた気がする」
「うん・・・」

肯きつつも、さりげなく両手を頬にあてて下を向き、
なるべくスッピンをみられないよう小さな努力をしている私。
それに気が付いたのか、また彼がクスクス笑いだした。

「前にもこういうことあったよね」

ベンチ横の灰皿に煙草を押しつけ、彼が振り返った。

「石垣島の旅行の時。風呂上がってから、ずっと下向いてたでしょ」

そういえば。そんなことあった。
初めての旅行で、初めて化粧を落とした顔を見られるのが恥ずかしくて・・・。

「今は何で下向いてんの?」
「・・・・・・」

同じ理由だけど、その恥ずかしさは8倍にふくれあがっている。
あの時は20代前半だったけど、今は・・・。

「こっちみてよ」
「無理」
「無理って?」
「だから無理なものは・・・」

なおも言い募ろうとした、その時。

ぎゅっと右手を握られた。
思わず顔を上げる。

と、同時に。

「あ・・・」

唇が、ふさがれた。
煙草の臭いのする、柔らかい、キス・・・。




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更新してないのに見に来てくださっている方々、
本当にありがとうございます。
アクセス数が励みになっています~っ。
最近更新怠り気味で申し訳ありません。
なかなかパソコンの前に座れる時間が取れなくて・・・。
もうすぐ終わりなので、ぱーっと書き上げてしまいたいのですが・・・。
でも、もうすぐ終わりかと思うと、なんだか寂しいけど。
どうぞ最後までお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。
コメント
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