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ある平凡な主婦の、少しの追憶(31)

2007年07月09日 20時04分55秒 | ある平凡な主婦の、少しの追憶(一部R18)
しまった、と思ったけれど遅かった。
出てしまった言葉は取り返せない。

「いや、でもね、だからどうこうって話じゃないのよ」

あわてて言い繕う。

「あなたには幸せになって欲しいしね、だから・・・え?」

言葉を止めた。
ふいに、抱きしめられたのだ。

「・・・ありがとう」

耳元でささやかれる。
優しい、低い声。

「ごめん、オレ、言わせちゃったね」
「・・・・・・え」

演技かよっ!あの辛そうな顔は演技だったのかっ!

「オレさ、こないだ会ったときから、ずっと思ってたんだよ」
「何を?」
「もしかして、まだオレのこと好きでいてくれてるのかなって・・・」
「う、うぬぼれ屋~っ」

思わず笑い出してしまった。
笑い出したのをきっかけに、彼の腕の中からすり抜けた。
スッピンでいることも忘れて、まっすぐに彼を見上げる。

「でも、私ももう結婚して子供もいるし、あなたももう人のものだし」
「うん・・・」
「本当に、今さらどうこうって話じゃないのよ」
「うん・・・」

彼は真面目な顔で肯いて、そして、つぶやいた。

「でも、オレも・・・まだ好きなんだけどな」
コメント
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