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ある平凡な主婦の、少しの追憶(43/50)

2007年07月23日 09時40分36秒 | ある平凡な主婦の、少しの追憶(一部R18)
日々の生活のあわただしさに紛れているうちに、
彼とのあの時の出来事やメールの記憶が
薄くなっていることに気がついた。

それなのに、心の中が妙に安定している。

それは、子供達が落ち着いているからなのか、
私のストレスが軽減されているからなのか・・・。
とにかく、この8年の間で今が一番、心の中が静かだった。


なぜなんだろう、という疑問に友人が答えてくれた。

彼女は私にとって、唯一、自分を飾らずにいられる存在で、
彼と別れた後に関係が続いていたことも、彼女にだけは話していた。
私が一番苦しかった時のことも彼女が一番良く知っている。

実家生活が2ヶ月目に入った頃に、彼女と会うことができた。

彼と一度だけ関係を持ったこと、
その後にもらったメールのことを彼女に話すと、

彼女はパアッと表情を明るくして、

「やったね!よかったね!!」

と言った。

内心、「それって不倫じゃないの!」と軽蔑されるだろうか、
と覚悟をしていただけに、気が抜けた。

彼女はウキウキしたように言葉を続けた。

「だってね、私もあの時辛かったし悲しかったもん。
でも、今になって、彼にそんなこと言わせちゃうなんて、
勝った!!って感じじゃない?やったね~!私も嬉しいよ!」


ああ・・・なるほどね。

喜んでくれている彼女をみていて、
ようやく納得がいった。

今、この8年の中で最も安定できているのは、
8年前の傷ついた私の心を回復できたからなんだ。

実のところ・・・
別れたこと自体よりも、彼の新しい彼女からの、
私自身や私たちが付き合った2年間を否定する言葉の数々
(それは掲示板にかかれたり私宛にメールが送られてきたりした)
が、さらに私を苦しめていた。

でも、その彼女と別れた後に、私ともう一度付き合いたいと思ってくれたという。
今回のメールでその言葉を聞いて、どんなに救われたことか。
そして、もし条件がととのったら、また一緒いて欲しいとまで言ってくれた。
もう充分だ。

たぶん、彼も・・・、
8年前に私を傷つけたことを気に病んでいた彼も、
今回のことで、罪悪感から抜け出せたことだろう。


私たちは、8年前のあの辛い記憶から
ようやく解放されたのかもしれない。
コメント
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