2月27日(日)晴れ。
若い頃に尾崎士郎の自伝的大河小説『人生劇場』を夢中になって読んだことがあった。映画も皆見た。特に昭和58(1983)年に公開された『人生劇場』は「青春篇」「愛慾篇」「残侠篇」をベースにした作品で、深作欣二が「愛慾篇」、佐藤純彌が「青春篇」、中島貞夫が「残侠篇」をそれぞれ担当する構成らしいが、当時はそんなことに興味があるほど映画通ではなかった。映画の中で、「お袖」役の松坂慶子と「おとよ」役の中井貴恵の二人の過激なシーンにぶっ飛んだ。「飛車角と吉良常」などほとんど東映のやくざ映画の真骨頂のような作品だが、私は、「青春篇」、主人公の青成瓢吉の若い頃の物語が好きだ。
その瓢吉と恋人のお袖が初めて出会うのが柴又の料亭「川甚」と言われている。私は、このお店が好きで何度か行ったことがあるが、どうも川魚料理が苦手で、いつも鰻重ばかり食していた。コロナの影響で閉店してしまったとニュースで見たが、残念なことだ。映画「フーテンの寅さん」でひろしとさくらの結婚式が行われたのもその「川甚」だった。
尾崎士郎は、相手の気持ちや周りの状況を気にすることなく、自分の思うままに行動する「直情径行」の人だったと『痛快無比!ニッポン超人図鑑』(前坂俊之著・新人物文庫)に様々なエピソードが描かれている。一つ紹介してみたい。「胃腸の弱かった尾崎は、戦後まもなく、ある評論家から特効薬を貰って飲んだところ、効果があり、胃腸の調子はスッカリ良くなった。喜んだ尾崎は、その評論家に感謝の気持ちと、その薬効を知らせるため、硬くなったウンコを小包に入れて送った。評論家は最初、その黒い塊が何だか分らなかったが、手に取ってニオイをかぐうちにウンコとわかり、カンカンに怒った。以後二人は絶交した」。「やると思えばどこまでやるさ。それが男の魂じゃないか」。「人生劇場」の歌そのままかもしれない。
夜は、「スープカレー」、水餃子、豚肉とキャベツのみそ炒め。お供は「黒霧島」。酔狂亭にて独酌。※写真は昭和60年頃、「川甚」にて。左から故四宮正貴氏、鈴木邦男氏、蜷川、犬塚博英氏。