14日に放映された第46期女流王将戦挑戦者決定戦。対局日は8月13日。その時点での対戦成績は福間香奈女流五冠が28勝,伊藤沙恵女流四段が11勝。
振駒で先手となった福間女流五冠の中飛車。伊藤女流四段が向飛車に振っての相振飛車になりましたが,先手が2筋に飛車を戻したので,先手の居飛車,後手の振飛車の対抗形に類似した将棋になりました。
後手はここで☖1三角と引きました。これには☗1五歩☖同歩☗同香とする手があります。
もちろんそれは後手も承知の上。☖2四角と逃げて☗1一香成のときに☖1三飛と寄り,☗2一成香に☖1八飛成と進めました。
これは駒損でも飛車を成り込んで勝負ということ。ただこの局面は桂馬と香車を持った先手の☗9五歩からの端攻めが厳しく,あとは一方的に先手が攻め勝つ将棋になりました。飛車が成れるのは大きいとはいえ,駒損の方が大きかったことになります。このように勝負しなければならないのであれば,第1図のように進めたのが疑問だったということになるでしょう。
福間女流五冠が挑戦者に。タイトルを失った第44期以来の三番勝負出場です。
この部分は平板に解釈すればこのようになります。ただそこにスペイクの善意や悪意を介在させた解釈も可能です。スペイクはリューウェルツJan Rieuwertszから肩代わりしていた葬儀費用は受け取ったけれども,遺産相続を主張するレベッカRebecca de Spinozaが現れたので,レベッカからもいくらかを受け取ろうとしたというようなことはあり得ないわけではないでしょう。同様に,遺産相続の権利を有さないリューウェルツが葬儀費用を出してくれたので,その権利を有するレベッカからそれを受け取り,その分をリューウェルツに返還しようとしたということも考えられるわけです。ただこの間の諸事情がどういったものであったのかということは不明なので,史実としては,レベッカはスペイクの家に現れて遺産を相続する権利を主張したけれども,葬儀費用や借金の支払いについては拒んだので,証書を基に請求されたということだけ確定することができるのです。
この部分だけを読むと,レベッカだけがスピノザの遺産相続の権利を主張したように思えるのですが,実際にはそうではありません。前述した3月30日付の公正証書から明らかであるとコレルスJohannes Colerusが指摘しているのは,スピノザにはレベッカとミリアムMiryam de Spinozaというふたりの姉があって,ミリアムはサムエル・カリケリスSamuel Carcerisと結婚してダニエル・カリケリスDaniel Carcerisを産んで,このダニエルがスピノザの共同相続人であると申し出たということだからです。つまりスピノザの相続人であることを主張したのはレベッカだけではなく,レベッカとダニエルのふたりだったのであり,葬儀費用および借金の請求を受けたのもこのふたりだったのです。スペイクの家に現れたといわれているのはレベッカだけなので,それは本当にレベッカだけであったかもしれませんが,もしかしたらそのときにレベッカとダニエルのふたりでスペイクの家を訪れていたのかもしれません。
レベッカがスピノザの姉であるか妹であるのかということについては,通説は姉であるけれども吉田は妹であると考えているということはすでに示しました。渡辺が訳した姉というのも,この定説に従ったものと考えられます。ミリアムはスピノザの姉で間違いなく,レベッカの姉でもあります。
振駒で先手となった福間女流五冠の中飛車。伊藤女流四段が向飛車に振っての相振飛車になりましたが,先手が2筋に飛車を戻したので,先手の居飛車,後手の振飛車の対抗形に類似した将棋になりました。
後手はここで☖1三角と引きました。これには☗1五歩☖同歩☗同香とする手があります。
もちろんそれは後手も承知の上。☖2四角と逃げて☗1一香成のときに☖1三飛と寄り,☗2一成香に☖1八飛成と進めました。
これは駒損でも飛車を成り込んで勝負ということ。ただこの局面は桂馬と香車を持った先手の☗9五歩からの端攻めが厳しく,あとは一方的に先手が攻め勝つ将棋になりました。飛車が成れるのは大きいとはいえ,駒損の方が大きかったことになります。このように勝負しなければならないのであれば,第1図のように進めたのが疑問だったということになるでしょう。
福間女流五冠が挑戦者に。タイトルを失った第44期以来の三番勝負出場です。
この部分は平板に解釈すればこのようになります。ただそこにスペイクの善意や悪意を介在させた解釈も可能です。スペイクはリューウェルツJan Rieuwertszから肩代わりしていた葬儀費用は受け取ったけれども,遺産相続を主張するレベッカRebecca de Spinozaが現れたので,レベッカからもいくらかを受け取ろうとしたというようなことはあり得ないわけではないでしょう。同様に,遺産相続の権利を有さないリューウェルツが葬儀費用を出してくれたので,その権利を有するレベッカからそれを受け取り,その分をリューウェルツに返還しようとしたということも考えられるわけです。ただこの間の諸事情がどういったものであったのかということは不明なので,史実としては,レベッカはスペイクの家に現れて遺産を相続する権利を主張したけれども,葬儀費用や借金の支払いについては拒んだので,証書を基に請求されたということだけ確定することができるのです。
この部分だけを読むと,レベッカだけがスピノザの遺産相続の権利を主張したように思えるのですが,実際にはそうではありません。前述した3月30日付の公正証書から明らかであるとコレルスJohannes Colerusが指摘しているのは,スピノザにはレベッカとミリアムMiryam de Spinozaというふたりの姉があって,ミリアムはサムエル・カリケリスSamuel Carcerisと結婚してダニエル・カリケリスDaniel Carcerisを産んで,このダニエルがスピノザの共同相続人であると申し出たということだからです。つまりスピノザの相続人であることを主張したのはレベッカだけではなく,レベッカとダニエルのふたりだったのであり,葬儀費用および借金の請求を受けたのもこのふたりだったのです。スペイクの家に現れたといわれているのはレベッカだけなので,それは本当にレベッカだけであったかもしれませんが,もしかしたらそのときにレベッカとダニエルのふたりでスペイクの家を訪れていたのかもしれません。
レベッカがスピノザの姉であるか妹であるのかということについては,通説は姉であるけれども吉田は妹であると考えているということはすでに示しました。渡辺が訳した姉というのも,この定説に従ったものと考えられます。ミリアムはスピノザの姉で間違いなく,レベッカの姉でもあります。