スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

印象的な将棋⑲-4&ウイルスと宿主

2023-07-24 19:29:56 | ポカと妙手etc
 ⑲-3で示したように,⑲-2の第2図で☖4六歩と指した場合に,☗4四角と打っていくのは先手の負けです。もうひとつの手段である☗3一角をみていきます。この変化が先手にとっては本命で,かつ変化手順が複雑ですので,これは何回かに分けて検討します。
                                         
 この手も詰めろですので受ける一手。☗4四角と同様に☖6四角と打って受けたとします。
 この場合は☗5三金が成立します。今度は☖5一王に対して☗4二角成と王手することができ,☖6一王に☗6三金と銀を取れるからです。
                                         
 第2図は詰めろの上に角取りになっていますから先手の勝ちです。なので後手は☗3一角に対しては別の手段が要求されます。

 このことから理解できるのは,ウイルスは現実的に存在するためには宿主が現実的に存在することを必要とするということです。この場合でいえば,XはX自身が現実的に存在し,かつその現実的存在を継続していくために,宿主である人間が現実的に存在することを必要とするということです。したがって,第三部定理七にあるように,Xが自己の有に固執するin suo esse perseverareことがXの現実的本性actualem essentiamであることのうちに,Xは宿主である人間の現実的有に固執するということが含まれていなければなりません。あるいは,人間の現実的有に固執するということがXの現実的本性そのもののうちに含まれるのではないとしても,Xの現実的本性から帰結する特質proprietasのうちには含まれていなければなりません。
 したがって,もしもXが自己の力potentia,これは人間に対する毒性という力のことですが,こうしたことによって人間の現実的有を消滅させてしまうなら,いい換えればXに感染することによって人間が死んでしまうのであれば,それはXの現実的本性には適合しないのです。適合しないというよりも,Xの現実的本性に反するといっていいでしょう。宿主である人間の死は,Xにとっては自己の有の持続duratioの停止を意味するからです。よって,Xが人間に対して強毒性を発揮することは,人間にとって好ましくないことであるのと同時に,Xにとっても好ましくないことなのです。よって,Xは何らかの仕方で変異することによって,人間に対しては弱毒化するようになるのであれば,そうした変異をしたXは,変異をしていないXよりも,自己の有に固執していることになります。ですからこのふたつを比較したら,変異をしたXの方が,変異をしていないXよりも,優勢になってくるでしょう。これは,自己の有に固執する力が大きいものの方が,その力が小さいものよりもより自己の有を維持することができるのでなければならないということから明白であるといえます。
 ここで示した例はごく単純なものであって,ウイルスとそのウイルスの宿主との関係は,このことだけで説明することができるわけではありません。しかし第三部定理七は,現実的に存在する個物res singularisの基本的な原理です。

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