犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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「出会い」

2018年05月29日 | LGB&T
「イベントとか、有るんでしょ?そういうのにもっと行きなさいよ。
今のままじゃ出会いが無いでしょ。」
と、言われたことがある。

引きこもって誰にも会わずにいるわけでもないのに、どうしてこの人は「出会いが無い」なんて言うのだろう?



私は、身体的にはすっかり女性だ。
だが、子どもの頃から違和感はずっと持っていた。
小学生の頃から女の子を好きになった。
それはレズビアンというものだ。同性愛だ。

同性愛は病気とされていたが、90年代に病気ではないということになった。
同じ頃、世の中に性同一性障害という病気が設定された。
性別を変える手術が認められるようになった。

自分は同性愛という病気なのか、病気な気はしないが、と思っていたら
病気じゃないよってことになり、今度は性同一性障害という病気なんじゃないの、ということになった。
たとえ病気扱いでも、性別を変えて良いことになったのは、嬉しかった。

女性とは自分にとって異性だ。
しかし、男性が同性であり自分の性別であるとは感じられない。
私は、そういう者です。
と、今なら言える。

自分の中身は変わっていないが、それに当てはまる言葉がずっと無かった。
性別とは「男/女」しか無いので、自分のための選択肢は無い。
「私は○○です。」と言える言葉が無い。
これは、今も無いままだ。

自分にとって女性は異性のように感じているのだから、
女性が恋愛対象であることを「同性愛」とは思えない。
でもハタから見れば、女性である私が女性を好きになることはレズと言われる。

自分をとらえようにも、世の中に自分を表す言葉や自分に当てはまる枠というものが無いと、
なかなか自分が何者なのか、自覚しにくい。
社会のありかたと自分のアイデンティティとは、関係深いものだ。



二十代の頃に付き合った女性が言った。
「レズビアンのひとはレズビアンのひとと付き合うんだと思ってた。」
同じ事を、他の女性からも言われたことがある。

なるほど。
自分とは異質な「レズビアン」というものがどこかに生息していて
そこで自分たちのコミュニティを築いていて独自の排他的な生活をしている。
とでも思われているようだ。

そんな村、無いわ。



私も新宿二丁目のレズビアンバーに行ったことはある。
けれど、通うでもなかった。
特にそこしか生き場が無いとも思っていない。

働いたり、音楽活動をしたりする中で、出会ったひとと恋愛をしてきた。
つまり、特別なことはしていない。

この方法だと、いや特に方法とも思っていないわけだが、
相手は大概、異性愛の女性である。
少なくとも、異性愛と自覚している女性である。
異性愛だと思い込んでいる女性とも言える。

そんな女性に思いを告げれば、相手も葛藤する。
抵抗が有る。

「自分は違うと思ってた。」
「これって私もレズってこと?」
「じゃあ私はバイってこと?」
「でも他の女性も好きになる気はしない。」
「それとも他の女性とも実はセックスできるのかな?」
「次に好きになるのはやっぱり男性。ってことを伝えておかなきゃ。」

はいはい。なんでもいいですよ。
世の中と、その世の中に暮らす自分の意識との共同作業で築いた壁を
乗り越えて私と付き合ってみてくれてどうもありがとう、大した勇気。

「自分が女性と恋愛するとは思ってもみなかった。」
という感覚は、分かる。
私自身、男性と恋愛する気がしない、という側面も有るからだ。
もちろん、私だって今後、男性やトランス男女や性別Xのひとと恋愛することがあるかもしれない。
そんなの、わかんないのだ。



冒頭の話に戻る。

「イベントとか、有るんでしょ?そういうのにもっと行きなさいよ。
今のままじゃ出会いが無いでしょ。」
音楽活動の中でも職場でも、出会いは有る。
はたまた近所に住む人でも、よく買い物に行くお店でも、出会いは有り得る。

出会いを求めているという前提で人が集まるイベントに、私はあまり興味が無い。
初対面の人とあれこれおしゃべりをして知り合っていく、というのは得意ではない。

これを言ったのは感覚の鋭いひとで、初めて会ったときに「あなた男性に興味無いわね」と当てた。
わりに信頼している相手から言われたので、かえってひどく疑問だった。

15年以上経って、ハタと気付いた。
この人も、「同性愛者は同性愛者同士でくっつくもの」と思っていたのではないだろうか。

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