寒い。
手がかじかみ、体が震え、筆をとっても字がうまく書けない。
隷書だって楷書だって、草書でさえ、もうちょっとマシに書けるように
なったと思っていたのに、体がこわばって書けない。
隷書の波磔をかっこよく伸ばすには、筆を右に抜きながら時計回りにひねる。
ひねれない。
楷書の横画は右上がり、縦画はとにかく垂直の場合が多いが、
まっすぐに下ろせない。
草書は筆の動きの緩急が大事だと思っているが、
ぎくしゃくと滑らかにならない。
寒い。
室温は10℃。
外はもっと寒いのか。
春なもんか。冬じゃないか。
※
折しも、孫過庭(そんかてい;648-703)の『書譜』(687)の第二章を臨書している。
書譜は書論である。
書法のなんたるかが書いてある。
寒さに震え、うまく書けなかった昨日、臨書した部分は以下のとおりだ。
また、書こうと思った時にも、調子の良い悪いは有る。
合(ごう:ばっちり)つまり良い時は流れるように書けるけど、
乖(かい:ちぐはぐ)つまり悪い時はぎくしゃくする。
理由をまとめると、それぞれ五つ有る。
一の合:心たのしく余裕のあるとき。
二の合:感覚が鋭く、なんでもすぐわかる時。
三の合:時節がよく、空気のしっとりしている時。
四の合:紙と墨がよくなじむ時。
五の合:書いてみようかな、という気持ちに自然になった時。
一の乖:気持ちは慌ててるわりに体はついて来ない時。
二の乖:考えがとっちらかってくじけちゃってる時。
三の乖:空気が乾燥して陽射しがやけに強い時。
四の乖:紙と墨がなじまない時。
五の乖:なまけ心で手が動かない時。
調子の良い悪いで、書いたものにもできの差が出る。
タイミングをつかむより道具が大事、道具より気分が乗ることが大事。
もし五つの乖がいっぺんに来たら、やる気出ないし手はどこをどうすりゃいいか分からない、
五つの合がいっぺんに来たら、心はほぐれて筆はのびのびと動く。
のびのびと動けばうまく書けないことなど無く、どうしたら分からない時はよりどころも無い。
なんだよ、ぴったりの内容じゃないか。
孫過庭は暑さと乾燥には弱いが寒さには強かったんだろうか…。
とにかく寒くて体がこわばって、やる気だけは有っても体がついて来ないよ。
・・・
一の乖か。
以下、書き下し文と、白文。
また一時にして書するに、乖有り合有り。
合するときは則ち流媚に、乖するときは則ち彫疎たり。
ほぼその由を言わば、おのおのそれ五有り。
神よろこび務閑なるは、一の合なり。
感さとく徇知なるは、二の合なり。
時やわらぎ気潤うは、三の合なり。
紙墨相発するは、四の合なり。
偶然書せんと欲するは、五の合なり。
心せわしく体留まるは、一の乖なり。
意違い勢屈するは、二の乖なり。
風かわき日やくるは、三の乖なり。
紙墨かなわざるは、四の乖なり。
情おこたり手とどまるは、五の乖なり。
乖合の際、優劣互いにたがう。
時を得るは器を得るに如かず、器を得るは志を得るに如かず。
もし五乖ともにあつまれば、思とどまり手くらく、五合こもごもいたれば、神融け筆のぶ。
のぶればかなわざる無く、くらければよる所無し。
又一時而書 有乖有合
合則流媚 乖則雕疏
略言其由 各有其五
神怡務閑 一合也
感惠徇知 二合也
時和氣潤 三合也
紙墨相發 四合也
偶然欲書 五合也
心遺體留 一乖也
意違勢屈 二乖也
風燥日炎 三乖也
紙墨不稱 四乖也
情怠手闌 五乖也
乖合之際 優劣互差
得時不如得器 得器不如得誌
若五乖同萃 思遏手蒙 五合交臻 神融筆暢
暢無不適 蒙無所從
手がかじかみ、体が震え、筆をとっても字がうまく書けない。
隷書だって楷書だって、草書でさえ、もうちょっとマシに書けるように
なったと思っていたのに、体がこわばって書けない。
隷書の波磔をかっこよく伸ばすには、筆を右に抜きながら時計回りにひねる。
ひねれない。
楷書の横画は右上がり、縦画はとにかく垂直の場合が多いが、
まっすぐに下ろせない。
草書は筆の動きの緩急が大事だと思っているが、
ぎくしゃくと滑らかにならない。
寒い。
室温は10℃。
外はもっと寒いのか。
春なもんか。冬じゃないか。
※
折しも、孫過庭(そんかてい;648-703)の『書譜』(687)の第二章を臨書している。
書譜は書論である。
書法のなんたるかが書いてある。
寒さに震え、うまく書けなかった昨日、臨書した部分は以下のとおりだ。
また、書こうと思った時にも、調子の良い悪いは有る。
合(ごう:ばっちり)つまり良い時は流れるように書けるけど、
乖(かい:ちぐはぐ)つまり悪い時はぎくしゃくする。
理由をまとめると、それぞれ五つ有る。
一の合:心たのしく余裕のあるとき。
二の合:感覚が鋭く、なんでもすぐわかる時。
三の合:時節がよく、空気のしっとりしている時。
四の合:紙と墨がよくなじむ時。
五の合:書いてみようかな、という気持ちに自然になった時。
一の乖:気持ちは慌ててるわりに体はついて来ない時。
二の乖:考えがとっちらかってくじけちゃってる時。
三の乖:空気が乾燥して陽射しがやけに強い時。
四の乖:紙と墨がなじまない時。
五の乖:なまけ心で手が動かない時。
調子の良い悪いで、書いたものにもできの差が出る。
タイミングをつかむより道具が大事、道具より気分が乗ることが大事。
もし五つの乖がいっぺんに来たら、やる気出ないし手はどこをどうすりゃいいか分からない、
五つの合がいっぺんに来たら、心はほぐれて筆はのびのびと動く。
のびのびと動けばうまく書けないことなど無く、どうしたら分からない時はよりどころも無い。
なんだよ、ぴったりの内容じゃないか。
孫過庭は暑さと乾燥には弱いが寒さには強かったんだろうか…。
とにかく寒くて体がこわばって、やる気だけは有っても体がついて来ないよ。
・・・
一の乖か。
以下、書き下し文と、白文。
また一時にして書するに、乖有り合有り。
合するときは則ち流媚に、乖するときは則ち彫疎たり。
ほぼその由を言わば、おのおのそれ五有り。
神よろこび務閑なるは、一の合なり。
感さとく徇知なるは、二の合なり。
時やわらぎ気潤うは、三の合なり。
紙墨相発するは、四の合なり。
偶然書せんと欲するは、五の合なり。
心せわしく体留まるは、一の乖なり。
意違い勢屈するは、二の乖なり。
風かわき日やくるは、三の乖なり。
紙墨かなわざるは、四の乖なり。
情おこたり手とどまるは、五の乖なり。
乖合の際、優劣互いにたがう。
時を得るは器を得るに如かず、器を得るは志を得るに如かず。
もし五乖ともにあつまれば、思とどまり手くらく、五合こもごもいたれば、神融け筆のぶ。
のぶればかなわざる無く、くらければよる所無し。
又一時而書 有乖有合
合則流媚 乖則雕疏
略言其由 各有其五
神怡務閑 一合也
感惠徇知 二合也
時和氣潤 三合也
紙墨相發 四合也
偶然欲書 五合也
心遺體留 一乖也
意違勢屈 二乖也
風燥日炎 三乖也
紙墨不稱 四乖也
情怠手闌 五乖也
乖合之際 優劣互差
得時不如得器 得器不如得誌
若五乖同萃 思遏手蒙 五合交臻 神融筆暢
暢無不適 蒙無所從
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます