十何年か前まで、私は水道メーターの検針員をやっていた。
職場にじっとしている仕事、毎日同じ人と職場で顔を突き合わせる仕事ではなく、
一人でできて動き回る仕事がしたいと考えて、職を探していた。
某生活協同組合の配送ドライバーに応募しようと電話したが、
ちょうど担当者が外出中だった。
その間に電話した管工事組合で面接が決まった。
子どもの頃から自転車であちこち走り回って、
住所から友達の家をつきとめたりすることが好きだった。
国土地理院の2万5千分の一の地図を赤く塗りつぶしていった。
市内の道をくまなく移動する仕事は、私にうってつけだった。
一つの地区に200件あまりの水道メーターが在る。
担当地区の住宅地図を持って、自転車で向かって、一軒一軒を歩いて回る。
気候の良いのなんて、4月と10月だけだ。
それ以外は暑いか寒いか。
雨でも出なければいけないし、凍った雪を砕いてメーターを掘り出すことも有る。
※
その後、鍼灸師の資格を取った。
一旦辞めてみると、もう雨の中を外回りの仕事はやりたくない、と思う。
一方で、訪問先のお宅に上り、そしてクライアントの体に触れる仕事は
これまた難しいと思う。
手が冷え切っていては不快を与えてしまう。
家に入って準備して相手に触れるまでには、
移動で冷えた自分の手を温めておかなければならない。
今、老母のために訪問介護や訪問看護や訪問リハビリや訪問歯科の方々が来てくれるが、
いちいちありがたく思うのは、そういう点も有る。
自動車での移動ならまだしも、ヘルパーさんや看護師さんの多くは自転車で移動している。
電動自転車が普及したので漕ぐ労力はマシになったとは思う。
しかし、寒かったり暑かったり濡れたり冷えたりには変わりない。
訪問宅に雨合羽など持ち込まないマナーを皆さん貫く。
その点、家の中に入らないので濡れっぱなしでいい検針員なんて、
気楽だったと思う。
※
私が検針の仕事を辞めてから十年経ち、
一昨年には私の勤めた事務所も検針業から退いたそうだ。
一緒に働いた検針員たちもほとんど辞めてしまったと聞く。
当時の同僚を町で見かけることもほぼ無くなってしまった。
※
気楽ではあったが、楽だったとは言えない。
今でも、見やすくなさそうになっている水道メーターを見ると、
お家の人にひとこと言いたくなる。
※
写真のように、メーターボックスの蓋には、「積載禁止」と刻印されている。
でもまあ、物が置いてあることが多い。
自転車くらいなら自分で動かすが、原付やバイクとなると難しい。
駐車スペースの隅っこにメーターボックスが在ることも多いので、
自動車の下、タイヤの下になっていたりもする。
プランターが並んでいたり、大きな水槽にでっかい金魚が泳いでいたり。
繰り返し車輪が乗るからボックスの蓋が壊れていたり、
だから砂利が流れ込んでいたり。
※
んなこと言っているけれど、自宅のメーターもあまり見やすくしていなかった。
以前の同僚のためではなく、今の見知らぬ検針員さんが仕事しやすいようにしよう。
近付きやすくして、周りから葉や土が入りにくいように、
ささやかに囲ってみた。
近所に住んでいた犬の友達が引っ越してしまったので、
そのお宅から煉瓦をたくさんもらってきた、それを使った。
今までは板で囲っていたが、板は弱って倒れて却って邪魔になったり、
朽ちて却って汚れてしまったりする。
煉瓦をモルタルで固めりゃ完璧だが、まあそこまでしなくても
木よりはマシだろう。三匹の子豚か。
職場にじっとしている仕事、毎日同じ人と職場で顔を突き合わせる仕事ではなく、
一人でできて動き回る仕事がしたいと考えて、職を探していた。
某生活協同組合の配送ドライバーに応募しようと電話したが、
ちょうど担当者が外出中だった。
その間に電話した管工事組合で面接が決まった。
子どもの頃から自転車であちこち走り回って、
住所から友達の家をつきとめたりすることが好きだった。
国土地理院の2万5千分の一の地図を赤く塗りつぶしていった。
市内の道をくまなく移動する仕事は、私にうってつけだった。
一つの地区に200件あまりの水道メーターが在る。
担当地区の住宅地図を持って、自転車で向かって、一軒一軒を歩いて回る。
気候の良いのなんて、4月と10月だけだ。
それ以外は暑いか寒いか。
雨でも出なければいけないし、凍った雪を砕いてメーターを掘り出すことも有る。
※
その後、鍼灸師の資格を取った。
一旦辞めてみると、もう雨の中を外回りの仕事はやりたくない、と思う。
一方で、訪問先のお宅に上り、そしてクライアントの体に触れる仕事は
これまた難しいと思う。
手が冷え切っていては不快を与えてしまう。
家に入って準備して相手に触れるまでには、
移動で冷えた自分の手を温めておかなければならない。
今、老母のために訪問介護や訪問看護や訪問リハビリや訪問歯科の方々が来てくれるが、
いちいちありがたく思うのは、そういう点も有る。
自動車での移動ならまだしも、ヘルパーさんや看護師さんの多くは自転車で移動している。
電動自転車が普及したので漕ぐ労力はマシになったとは思う。
しかし、寒かったり暑かったり濡れたり冷えたりには変わりない。
訪問宅に雨合羽など持ち込まないマナーを皆さん貫く。
その点、家の中に入らないので濡れっぱなしでいい検針員なんて、
気楽だったと思う。
※
私が検針の仕事を辞めてから十年経ち、
一昨年には私の勤めた事務所も検針業から退いたそうだ。
一緒に働いた検針員たちもほとんど辞めてしまったと聞く。
当時の同僚を町で見かけることもほぼ無くなってしまった。
※
気楽ではあったが、楽だったとは言えない。
今でも、見やすくなさそうになっている水道メーターを見ると、
お家の人にひとこと言いたくなる。
※
写真のように、メーターボックスの蓋には、「積載禁止」と刻印されている。
でもまあ、物が置いてあることが多い。
自転車くらいなら自分で動かすが、原付やバイクとなると難しい。
駐車スペースの隅っこにメーターボックスが在ることも多いので、
自動車の下、タイヤの下になっていたりもする。
プランターが並んでいたり、大きな水槽にでっかい金魚が泳いでいたり。
繰り返し車輪が乗るからボックスの蓋が壊れていたり、
だから砂利が流れ込んでいたり。
※
んなこと言っているけれど、自宅のメーターもあまり見やすくしていなかった。
以前の同僚のためではなく、今の見知らぬ検針員さんが仕事しやすいようにしよう。
近付きやすくして、周りから葉や土が入りにくいように、
ささやかに囲ってみた。
近所に住んでいた犬の友達が引っ越してしまったので、
そのお宅から煉瓦をたくさんもらってきた、それを使った。
今までは板で囲っていたが、板は弱って倒れて却って邪魔になったり、
朽ちて却って汚れてしまったりする。
煉瓦をモルタルで固めりゃ完璧だが、まあそこまでしなくても
木よりはマシだろう。三匹の子豚か。
もしやと思い、アプリをダウンロードしたらOK!
楽しみに読ませていただきます。
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