旅は道ズレ

家から７kmほど離れたところからの帰り道。

バイクで出発して、すぐに止まった交差点の右折待ち、
前の車の運転席からタバコが投げ棄てられた。

日暮れ後のこと、火の粉が散って、よく見えた。
こちらはバイクだから丸腰だ。
目の前に火の付いたタバコが落ちて来るのは、
マナー云々以上に危険な感じがする。

なんだこの野郎、と思っていると、
１kmも行かぬうちに今度は助手席側の窓から
タバコが投げ棄てられた。

灰皿が無いのか？

20年ほど前のこと、ある車種で灰皿を備え付けないことが
発表された。
理由は、喫煙者は３割程度であり、少数者に合わせてデザインしない、
とかなんとかいうことだった。

非喫煙者にとって、車のダッシュボードの灰皿は無用の長物だ。
私は小銭入れにしているが、小銭を出し入れしやすい形ではないし、
小銭しか入れないにしちゃスペースを取り過ぎている。
現在ではどれくらいの車種で、灰皿を備え付けなくなっているのだろう。
興味はあるが、調べるほどではないな。

私の前の車には、きっと本当に灰皿が付いていないのだろう。
少し調べてみると、たしかに「ダッシュボードを改造して灰皿を取り付ける」相談とか
「ドリンクホルダー式に取り付けられる灰皿」が商品だったりする。

前の車の人は灰皿を取り付けず、毎日吸殻を投げ棄ててんだろうな。
と、ジロジロ見ながら走る。
するとそのうち、助手席の女性が手に持ったスマホの画面を運転手に見せ始めた。
そのまま走っている。

やめれ。
と、私はその様子に見入りながら走る。
もう何が危険だかわからんが。
しかしよく見ると、ダッシュボード中央にはTVが付いていて、
外国映画が映っている。

テレビ見ながら？スマホ見ながら？カーナビ付けるスペースはあるけど灰皿は付けず？

なんだこの野郎、と思いながら走るが、なんと
幹線道路でもなく、世田谷区と調布市の裏道をこちゃこちゃと走る７km、
私の自宅の400ｍほど手前でその車が右折するまで、
ずーっと一緒だった。

マナーが良けりゃ親しみも湧こうかという道連れになったのに。