犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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サンスクリットの韻律 春の草花篇

2021年02月18日 | 梵語入門

読者が離れる一方の我がブログ。
それもそのはず、このところサンスクリットの韻律の話ばっかり。
間に犬の写真の記事を挟んでみたところで、
その写真もかわいい♪ってタイプの写真じゃないときた。

一日の法螺は騙されて心配する読者がいてよろしくないから
創作だと分かりやすい形や場所を模索するといったような事を書いた。
あたかも読者に配慮しているかのようだが、
実はそんな気はサラサラ無いのが、
ここんとこのサンスクリット連続に表れている。
けっ

[こころざし] カーリダーサの詩を読めるようになりたい。
[あらすじ] サンスクリットの詩は音の数で韻律を作るよ。
そして、音節には1拍分の長さのlaghu(軽)と2拍分の長さのguru(重)が有るよ。
軽重の組み合わせでいろんなリズムのパターンが有るよ。
「たたんたたん」というリズムがよく出てくるよ。
音節を三つずつに区切ったものを「gaṇa」(ガナ)と呼び、
その軽重8種類のパターンに一文字の名前を付けて、
यमापाराजभानसलगाः
yamātārājabhānasalagāḥ
ヤマーターらージャばーナサラガーは
と憶えると、य(ya)から読めばyamātā:軽重重などと、
リズムが分かるよ。インド人すごいよ。
そういった、音節の数と音節の軽重の組み合わせによる様々な韻律に、
いちいち名前を付けている。その数600以上。インド人すごいよ。
その韻律を定義するのがこれまた韻文になっていて、
定義しようとする韻律になっている、
というお話のところからおさらいしましょそうしましょ



たとえば、vasantatilakā
という名前の韻律が有る。

名前の話に寄り道しましょそうしましょ
vasanta は「春」。
とまあ、ひとくちに春と言っても、日本人が思い浮かべる春とは
相当違った気候なのだと思う。
寒い暑いの変化だけでなく、雨期乾期のメリハリが激しいようだ。
と言ってもこれまたひとくちに言えないだろう。インドは広い。
地域によって春が違うだけでなく、季節感そのものが異なるだろう。

tilakā
これが難しかったのだが、どうやらシソ科の植物のようだ。
どうもビシッとこれ!というほど調べがつかない。
春に花が咲くのだろう。

アプテ辞書のAppendixの韻律表を見る。
वसंततिलका
(Also called वसंततिलक
vasantatilakāはvasantatilakaとも呼ぶよ、とある。
このおかげで名前の意味を調べる作業がややこしくなったのだ。
保留。
他にも名前が有るという。
उद्धर्षिणी, सिंहोन्नता)
が、これは名前調べの話題の時に取り上げることにして、今は措く。

ガナの組み合わせはこう。
Sch. G. त, भ, ज, ज, ग, ग (8. 6)
上の
यमापाराजभानसलगाः
yamātārājabhānasalagāḥ
に当てはめてみると、
त 重重軽
भ 重軽軽
ज 軽重軽
ज 軽重軽
ग 重
ग 重
なので、全体は
重重軽重軽軽軽重軽軽重軽重重
だと分かる。
「たんたんたたんたたたたんたたたんたたんたん」
というリズムだ。

ほんで、定義はこうだという。
Def. उक्ता वसंततिलका तभजा जगौ गः ।
uktā vasaṁtatilakā tabhajā jagau gaḥ /
意味は、
「ヴァサンタティラカーは【タバジャージャガウガ】と言うよ」
である。
ウクター ヴァサンタティラカー タバジャー ジャガウ ガハ
たんたん たたんたたたたん   たたたん  たたん  たん

ヴァサンタティラカーの韻律で、ヴァサンタティラカーの韻律を定義している。
というわけ。
そのものをそのもので説明する、という再帰的な言葉遊びだ。



何週間か前、アクロニム(頭字語)から始まって、
アプロニムやバクロニムの話を書いた。
https://blog.goo.ne.jp/su-san43/e/edef4f40f0bdbd6dfc22819cc5ae399e

特にバクロニムは、
そのものをそのもので説明する、という再帰的な言葉遊びだ。

サンスクリットの韻律の定義の詩がいつ頃に形成されていったか、
ということを私はまだ知らないし、知られていることなのかも知らない。
こんな言葉遊びの詩が600以上も有るとなると、
楽しみは尽きない。

まだつづくよ

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