犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
犬のこと、人の心身のこと、音楽や自作のいろいろなものについて

富士見登山部 越前岳と人篇

2013年11月05日 | 流民の窓
[あらすじ] 富士山の南、愛鷹連峰の最高峰、越前岳に登った。
下界は曇天な分、頂上からの眺望は快適だった。


当初、黒岳には寄らないつもりだった。
しかしこの日、私はあまり調子が良くなかった。
10日あまり前に腹を下し

た影響がまだあり、足が重かった。
そこで、黒岳に登って、その後、越前岳へ向かうコースの途中に
展望の良いところが何ヶ所かあるから、どこかで引き返そう、
ということにして登り始「めたのだ。

しかも登り始めで道を間違え、30分ロスした。
友人は、前回の毛無山の時に下山したらちょうど暗くなったことから、
今回も明るいうちに降りたくて心配ばかり口にする。
じゃあ無理なく、ということだったのだ。

黒岳の頂上で休憩し、少し戻って峠を過ぎた辺りで、一人の男性が
道端でフウフウ言っている。
「こんにちはー。
ああ良かった、僕が最後かと思った。
うん、いつも僕こんななの。ヒイヒイ言って。
もう今日はやめちゃおうかなと。誰も見てないし。」

口数が多い。
「見ちゃった。」とだけ返事して、先へ進んだ。

越前岳と位牌岳を結ぶ鋸岳は、両側が切り立った痩せ尾根だ。
これが眺められる所で、もう少し頑張ろうかなと休んでいたら、
さっきの男性がヒイヒイ言いながら登ってきた。

あんまりヒイヒイ言っているのでド素人かと思ったが、
山の説明を始めたら詳しい詳しい。
登山地図には無いが、鋸岳の途中から降るサブコースも有るのだそうだ。
「僕、山始めたの六十過ぎてからで3年前だけんが、
廃道とか聞いたらやりたくなるじゃんか。」

「じゃんか」は富士周辺のことばだが、「けんが」は関西かと思っていた。
富士市の人だと言う。
すれ違う人も、このおじさんと話していろんなコースの情報を聞き出している。

こんなにヒイヒイ言ってるおじさんが休み休み頑張っているんだから、
と思ったら、なんだか元気が出てきた。
友人も途中「足が重い。」とつらそうだったが、やはりおじさんの姿に
励まされたようだ。

最後の25分くらいは、おじさんは私の後ろにぴったり着いて来て、
ずーっとしゃべり通しだった。
私は相槌を打つだけでも息が切れる。
おじさんはもともと息が上がっているのだが、平気でしゃべる。
しかし、内容が面白いし愛鷹山情報にあふれているので、うるさくない。
「この間も天気当てたなー。頂上でさ、
おじさんをはじめとしてみんなの日頃の行いが良いから
って言ったら、なんでおじさんをはじめとしてなのー。って。
十里木のコースも脇道が有ってさ、その方が楽だし早いの。
おじさん、しゃべらない人とはしゃべらないけど、山でしゃべると
知らないコースとか教えてもらえるよね。
こないだ○○山で足元が××で滑っちゃったら地面に△△があって
頭割れたかと思った。ほらここ傷が残ってるでしょ。
鋸岳は初めて行った時はもう真ん中で動けなくなっちゃって
男でもこうなるのね、岩につかまってしゃがみこんで、
膝がガクガク震えるの。
もう俺どうしてこんなことやってるんだろう、ってなって。」
キリが無い。

そんな楽しい声に背中を押されて、登頂。

すでに一時だったので、2時間程度で降りられるコースを選ぶ。
しかし、登山地図には「崩落、荒れている」と書いてある。
そこで、おじさんに聞いてみる。
「十里木の方に降ると7、8分で左側に分岐の立て札があって、
50mくらいはガレてるけど、そこだけ。
50m我慢すればあとは大丈夫。
アシタカツツジが生えてるから、木につかまって行けるよ。」

行ってみるとそのとおりで。
しかし聞いていなければこの立て札は見落としたかもしれない。
しかも鉄板に文字を切った、他では見たことのないちょいとステキな立て札。
そして、ガレ場を降るのはつらいことだけれど、50mと聞いていれば
そんなに長くないや、と気が楽だった。

この「崩落」という情報のおかげか、このコースは
私たち以外に追い越した人が一人だけ。
他に踏み跡は無く、雑木や草花の美しいとても快適な道だった。

下山後、私は駐車場でしばらく時間を潰し、降りてきたおじさんと再会。
また20分あまりおしゃべりした。
「僕、三角点マニアじゃないんだけど、そういうの読んだら、
黒岳にもあるでしょ、二等三角点、
これがグラグラしててさ、歯槽膿漏みたいに、だから周りを踏み固めといたの、
そしたら次に行った時にはもっとしっかりなってて、
こういうのが面白いよね。
○○に一等、そこから○kmの××山に一等、そこからやっぱり○kmの△△岳に一等、
これで国土を測る。
それからもっと近い△kmの□□山に二等、そこから△kmの◎◎山に二等…」
へええ、なるほど、それも面白い。

「またどこかで会いましょう。」

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 富士見登山部 愛鷹連峰越前岳篇 | トップ | 愛鷹登山拾得物篇 »

コメントを投稿

流民の窓」カテゴリの最新記事