前の犬は、仔犬から飼った。
半野良の母犬と7匹の仔犬を、我が家で一旦引き受けた。
生後3ヶ月になる頃、次々とそれぞれに引き取られていった。
来た時は生後5週だった。
片手でつかめるサイズだった。
仔犬らしく、みんな「クンクン」とか「フンフン」とか
かわいらしく鳴いた。
どんどん育った。
ある日、「ワン」という声が聞こえた。
初めて吠えたのだ。
仔犬から犬になっていく一段を昇ったのだ。
※
飼い犬ウーゴくん去勢オス5歳。
とても静かな犬だ。
鳴き声も「あふん」とかなんとかひとこと言うくらいで、
しつこくピーピー鳴くことは無い。
それに、とにかく吠えない。
「ワン」というのを聞いたことが無い。
近所のドッグトレーナーさんによると、
保護犬は吠えない、という。
野良で生きていた犬、という意味のようだ。
やたらに吠えると敵に見つかって危険だから、
声をひそませて暮らすのが野性なのだそうだ。
キャンキャンうるさいのは飼い犬の特徴だという。
騒いだって甘い飼い主が「ダメよ」なんて言うくらいで、
どってことないもんな。
(小型の愛玩犬が嫌いらしいワタクシ)
※
朝、早起き過ぎる。
暗いうちから散歩に行くと、ウンチを拾うのがたいへんである。
やめて欲しい。
夕方の餌の時間を1時間あまり後ろにずらしたら、
朝起きる時間が遅くなってきた。
しめしめ。
と思っていたが、今朝は4時半頃から起き出してきた。
朝起きて、飼い主の私がまだ寝ていると、
犬ウーゴくんは退屈そうに、庭を見て伏せて待っている。
昼間はちっとも外を見ないが、朝だけは庭を見る。
出かけたい時は部屋の出口の方に行くから、
庭を見るのは別に「外に出たい」という意味ではなさそうだ。
今朝も、庭に向かって伏せた。
そして、呻り始めた。
うなることも、滅多に無い。
なんせ、そこいらで猫に出会っても、見向きもしない。
近所の猫はウーゴのことを憶えて、通りすがっても逃げなくなった。
そのウーゴが、何かに向かって呻っている。
ガラス戸の外は暗い。
そこに何かいるのか。
私はウーゴに気付かれないよう、物音を立てないようにそっと
首を持ち上げて、ガラス戸のほうを見てみた。
真っ暗ではない。薄明るくはなってきているが、
何も見えない。
おいおい。
何もいない所に向かって呻るのって、
あれかい、あれじゃないかい、
あれは御免だよ。
犬のうなり声は普通、「ウウウウウ」と表現される。
実際、そう聞こえる。
ところが、我が犬ウーゴの呻り声は、
「ワアアアア」だった。
しかも低い。かなり低い。
地の底からわき上がるような、なんとも言えず恐ろしい響きを持った声だ。
ずっと呻っている。
怖いぞ。
そして、ひと声、小さくまざった。
「ワッ」
おお?吠えたか?
「ワアアアア、
ワッ」
おおお。吠えた。
脅しているから、弾むような
「ワン!」
ではないが、
ついに吠えた。
伏せて身構えて、呻って脅して、尾を振って吠える。
「ここは俺の家だ。」
と相手に示して、護っている。
心強いじゃないか。
※
咄嗟にスマホで動画を撮った。
とは言え、真っ暗で何も写ってはいない。
暗闇でひたすら動物が呻るという、恐ろしい動画をご覧になりたいという
お数寄な方はどうぞ↓
https://youtu.be/niFufCidgwI
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