犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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複弦バリトンウクレレの

2020年04月10日 | なりもの
数ヶ月前に、表板からブリッジが剥がれた。
弦の張りに接着が耐えられなくなったのだ。

こういうことが無いように、弦を緩めておいた。
えーと、全部の弦でなく、何本かだけ。
それがいけなかった。

ある日、見たら、写真のような有り様であった。



使っているウクレレは全て、
京王線明大前駅の商店街にあるハナムラ楽器で作ってもらっている。

最初はフツウの小さなソプラノウクレレ。
パイナップル型とよく言われるが、ハナムラ楽器のものは横が直線だ。
曲線のほうがかわいらしいと思うのだが、
ハナさんが型を削るのがめんどくさかったんじゃないかと私は邪推している。



次はテナーくらいのサイズのもの。
チューニングは適当に低めにしていたが、
これも弦の張りに耐えられなかった。

ハナムラの楽器の何が良いって、表板が単板一枚板のところだ。
単板とは、ベニヤ板のように重ねて貼り合わせた合板ではない、ということ。
一枚板とは、板を組み合わせたりせず、ボディ全面が一枚でできている、ということ。

そういう材を使っているから、軽やかによく鳴る。

この素晴らしい単板が、たわんでしまった。
弦を支えているサドルを載せているブリッジが弦に引っ張られ、
接着されている表板をも引っ張る。

この力が表板をたわませた。
波打ってしまった。
全体的には波打つ形の力が掛かっているが、
ブリッジの部分は平たい。
その境目に捻るような力が掛かったのだろう、
ヒビが入ってしまった。

こうなると鳴りが悪くなる。
こまめに弦を緩めなかったのがいけない。
また、チューニングが少し高過ぎたのだろう。

この楽器は裏板は厚めのものを使って、
少しくり抜いて曲面にしていた。
そのおかげか、低音の響きがとても豊かだった。

あーあ。
もう一度、鳴らしたい。

魂柱のようなものを入れてみたりしたが、
元通りの音までは出ていないように思う。



ブリッジに溝を切って、サドルをはめてある。
この溝にかすかに余裕が有って、弦を貼るとサドルがネックの方に向かってちょっと傾く。

このかすかな傾きのせいで、弦長がわづかに短くなることになる。
すると、オクターブが合わなくなる。
ーハナさん、オクターブが合わないんだよ。
「どれどれ須山ちゃん。そうかあ?
ウクレレってこんなもんだよ。」

ハナさんの耳には気にならない。
えー。
金管アンサンブルで純正な和音を求めて練習してきた私の耳には、
ひどく気になる。
まあ、そんなことを言い出したら平均律でできているフレット楽器やピアノなどできなくなってしまうが。

そして、表板がたわんでしまうと、ブリッジがネックの方に向かってちょっと起き上がることになる。
サドルの傾きが強くなるわけだ。
もう、オクターブどころか、7フレットくらいでもズレが気になる。
使えなくなってしまう。



3本目は、弦長約60㎝、表板に穴を開けてそこに皮を張ってもらった。
皮の上に駒を立てる。
バンジョーや三味線のようなものだ。

ハナさんは面白がって作ってくれた。
「裏も皮にしてみたよ」
これを見てプロのギタリストが一本注文してくれたよ。
でもそっちは裏板に皮は張ってない。
だからこれは唯一無二の楽器だ。」

それが音色にどう影響しているのか、
私は比較してみていないので、分からない。
ハナさんのみぞ知る。



次に、同じくらいの弦長で複弦の楽器を作ってもらうことにした。
ハナムラ楽器の高音のシャリシャリした感じと低音の厚みは、
複弦の効果を引き立たせる。

しかし、複弦ということはウクレレのくせに弦が8本。
張力も強くなる。
ということは、ブリッジを介して表板を引っ張る力も、大きい。

また表板がたわんでしまったら、チューニングの合わない悲しい楽器が増えるだけだ。

私は考えた。
単板一枚板はハナムラの美点だ。
音色に関わるこれは変えるつもりは無い。

オクターブが合わないのなんのと言っても、ハナさんは気にならない。
同じように作ってもらったら、同じ結果になるのは目に見えている。

考え方を変えねば。



私はある提案を持って、ハナムラ楽器へ向かった。

つづく
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