竹田驛園 竹田舊站 (台灣省屏東縣竹田鄉)
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時刻は正午前。今夜の宿は予約しているが、チェックインにはまだ早い。これからどうするか。市内観光でもよいが、寝不足で疲れており、あまり歩きたくない。列車に乗って、ガイドブックにも出ている竹田へ行ってみようと思う。昨年、この駅は枋寮から高雄へ戻る車窓から見ている。
すっかり慣れた自動券売機で切符を買おうと思うが、手持ちの硬貨では足りない。自動券売機では紙幣が使えないようだ。近くに両替機がないかと探すが見つからない。一階にある切符売り場へ行く。幸い窓口に列は出来ていない。窓口氏に行き先を伝えようとするが、竹田の読み方が解らない。今は「たけだ」ではないはずだ。筆談に備えてメモ紙は用意してきたが、一々書くのも面倒くさい。時刻表の竹田を指差して、ここまでと伝える。窓口氏が「竹田?」(中国語)と聞き返して、無事に切符は買えた。區間車で高雄-竹田間の車票は47元。100元紙幣でお釣りをもらう。
入場して月台へ向かう。ディーゼル機関車に牽引された客車列車が待っている。汽車は客車が一番。中国語では汽車は自動車、列車は火車だが。座席は回転式クロスシート。窓側の席に腰掛ける。便當(弁当)でも買って乗りたいところである。実際に便當売場はあるが、さっき牛肉拌麵を食べてきたところである。高雄始発の區間快175次は12時15分に発車した。車内は若い人が多い。つまり運転免許を取ったら、自動車・バイクに流れているのだろう。各駅で客は降りてゆく。高屏渓を渡り、高雄縣から屏東縣に入って屏東12時44分着。この先は単線非電化となり、ローカル線らしい風情となる。途中駅では小さな白い蝶が大量に飛んでいる。南国なんだなあと思う。そして竹田に13時03分到着。まだ列車が停止しないうちに扉を開ける。自動扉ではないのだ。止まると同時に月台に降りる。車掌が集札するのかと思ったが、意外にも駅員がいる。そして列車は枋寮へと去っていった。
旧駅舎と紀念石埤 (竹田驛園)
竹田車站は、大正8年(1919)に潮州線(現屏東線)頓物驛として開業。翌9年に地名の改称に合わせて、竹田驛と改称。現在の建物は昭和14年(1939)の建築とのこと。日本式の木造駅舎である。戦後、取り壊して、建て替える計画だったが、地元の人たちの努力で保存される事となり、駅舎と周辺は竹田驛園となっている。
月台の方から見た旧駅舎 (竹田驛園)
旧駅舎内は閉まっており、入れない。他にいた女性客は旧駅舎の前で写真を撮っている。鉄分の濃い人が来ているのではなく、普通の観光客が古い建物を見物している風である。昭和14年ではあまり古くはないが、南国の風景に日本式の数少ない木造駅舎という事に価値があるのだろう。日本人として大切に保存されている事が嬉しい。維持するのも大変だろう。日本では壊して貨車を改造した駅舎(待合室?)になった、見るに耐えない駅も多い。
尤もらしく鬼瓦なぞ撮ってみる (竹田驛園)
池上文庫 (竹田驛園)
池上一郎博士文庫ともあるが、池上一郎博士を存じ上げていない。ガイドブック等によると、昭和18年(1943)に当地の野戦病院の院長として赴任された軍医で、戦後に日本から寄贈した書籍が当文庫に収められているそうだ。残念ながらここも閉まっていた。
駅前より旧駅舎を望む (台灣省屏東縣竹田鄉)
趣のある旧駅舎から、一旦簡素な現在の駅舎(切符売り場とベンチがあるだけ)へ行って、高雄までの切符(47元)を買う。自動券売機はないので、駅員(委託かな?)から買う。旧駅舎を見ていたら「たかを」と言いたくなるが、「ガオシュンまで」と言って買った。(結局は日本語である)
新駅舎には自動券売機はないが、清涼飲料水の自動販売機はある。また竹田驛園内には喫茶コーナーもある。しかしアルコールが見当たらない。酒を求めて駅前の道を歩く。コンビニエンスストアもないのに、郵局(郵便局)はあるなあと歩いていたら、商店か、簡易食堂かといった店があり、店頭に南方系の顔立ちのおばはんがいる。
わし「啤酒有嗎?」(ビールあります?)
おばはん「有」(あります)
缶の台湾啤酒を冷蔵庫から出してくる。
わし「多少銭?」(なんぼ?)
おばはん「三十」
30元を払い、「謝謝」と言って店を後にした。これ以上の中国語会話は出来ない。
旧駅舎内部 (竹田驛園)
旧駅舎に戻ると、嬉しいことに戸が開けられていて、中に入れる。何か記念品か地元の特産品でも販売しているようだが、売り上げには貢献せずに、記念スタンプに熱心な女性に続いて押してゆく。「あら、日本人?」みたいな反応があった。旧駅舎内でラジカセで音楽を流している。唱歌「桃太郎」である。「桃太郎さん、桃太郎さん♪」の節だが、歌詞は中国語で歌われている。意味は日本語と同じなのか、違うのか解らない。桃太郎さん♪を聞いていて、ここは一体どこなのだろうかと思う。そして、これが台湾だとも思う。
台鐵 屏東線 竹田車站 (台灣省屏東縣竹田鄉)
そろそろ月台へ行き、列車を待つ。本当の駅舎は月台の端に設けられた簡素なものである。他の竹田驛園を観光した風な客と共にベンチに腰掛けていると、地元と思われる若い女性がやってきて、「ピントン」と言って切符を買っている。屏東を「へいとう」と読んだら何ともないが、中国読みだとかわいいな。
站名標(駅名標) (竹田)
1時間あまりの滞在で竹田を後にする。區間車176次、14時07分発。屏東へ行く女性が同じ車両に入るので、扉が閉まらないように抑えていたら、「謝謝」と言う。ここでパッと「没関係」くらい言えればいいのだが、頭に浮かばなかった。窓側の空席を求めて更に車両を移動する。ようやく席を見つける。進行方向と逆向きになっているので席を回すが、前の客がリクライニングを倒しているので、上手くいかないが、強引にまわす。衝撃があったので音楽を聴いていた男性がこちらを見る。「すみません」と言っといたが、ここは「對不起」が正解だろう。列車はもと来た線路を戻り、架け替えで廃線となった橋梁を見ながら高屏渓を渡り、高雄に14時55分到着した。 (つづく)
台鐵 屏東線 區間車 176次 (竹田)
いずれも民國96年11月25日撮影