2013年撮影作品シリーズ その10
トワイライトエクスプレスでの旅のプランを練った時に、「レール&レンタカー」を使えば運賃が割引になると
ひらめいて、そのレンタカーをどこで借りるのかを思案しました。摩周駅で借りるのがベストでしたが、残念ながら
ここに駅レンタカーはなくて、仕方なく斜里駅で借りることにしたのです。それでなくても慣れない雪道を、ここからだと
それなりの距離を走らねばならず、時間がかかり、摩周湖や屈斜路湖にたどり着いた時にはすっかりトップライトで、
天気はまずまずだったのに撮影にはあまり適さない時間帯になっていました。
冬の美幌峠、初めて訪れた時以来だなあ、懐かしい。ともかく大迫力のパノラマビューに圧倒されたのを
今でも鮮明に思い出します。あの時一緒だったスリーリトルキャッツたちも、すっかりいいおばさんに
なっているんだろうなあ。構図をがんばらねばと、冬枯れた熊笹を前面に配置してみた結果、どこで撮影したのかを
いちいち説明しなければわからない写真になってしまいました。
【厳冬の美幌峠にて/2013.03.17撮影】
旭川まで移動、あらためてレンタカーを借り直して美瑛に数日滞在します。しかし冬の美瑛は基本天気が悪く、
一日中晴れということはまずなくて、山が見える確率も極めて低いと思います。特にこの日は曇り空で日差しがなく、
丘での撮影は難しい条件です。こんな時に時間つぶしに出かけることが多いのが白金温泉にある白髭の滝。
撮影ポイントが限られるので構図に工夫をこらすことはできない代わり、シャッタースピードをあれこれいじってみて、
写真ならではの描写を試します。デジタルは費用を心配しなくていいので、あとのことは考えず適当に撮りまくります。
【冬の白髭の滝/2013.03.20撮影】
車中泊中心の旅とはいうものの、一週間に一度くらいの割で宿に泊まり、その際にカメラや
携帯電話の充電をまとめて行おうと考えていました。デジタル一眼レフカメラの充電地も、
これまでの使用実績からして、それくらいの頻度の補充で十分間に合うと思っていたんです。
ところがバルブ撮影を多用すると、予想以上に電池を消耗することがわかりました。
電池は、バックアップのEOS5DMK2に入っているのと合わせて予備に2個あるので、
よほど長引いた撮影が続かない限り、当初の思惑通り一週間程度なら大丈夫でしょうが、
「万が一大事な局面で電池切れ!」という悲劇は避けたいなと思います。
今回の九州でも、日帰り温泉施設の休憩室で二回充電させてもらい、特別差し迫った事態にまでは
至りませんでしたが、一度フル充電するのに二時間近くかかるので、そうそう温泉施設を当てには
できないなと思いました。阿蘇の某日帰り温泉では休憩室のコンセントに「フタ」をして使えなくしていて、
あからさまに充電などでの使用を嫌がっているところもありましたしね。いつもいつもこちらの
思惑通りには充電できるとは限らないようです。
それで念のために、車のシガーライター(DC)からAC電源に変換できるインバーターを購入しました。
オートバックスへ行ってみたら、ピンきりでいくつか製品があった中で、あくまでも非常用との位置づけで、
一番廉価(1580円)のを買ってみました。できたらなるべく車のバッテリーには余計な負担を
かけたくはないのですが、これくらいでしたら問題ないのでしょうか? 電池もゼロ近くまで使い切らずに、
もう少し早く充電するように心がけたら、もっと早く完了するかもしれません。頴娃町で一緒になった奈良の
写真好きおじさんは、こまめに受電しているようでした。
いずれにせよ、電池がなければ「タダの箱」のデジタル一眼ですから、さらに残量に注意しながら
撮影旅行を続けなければならないでしょう。
奈良の写真好きおじさん(Oさん)の話を少ししておきましょう。69歳、基本すべて車中泊で撮影旅行を
楽しんでおられるようです。元々富士山の写真を撮っていたとかで、今はそれを卒業して、
「ふるさと富士」をテーマに撮影、「河口湖なんとか美術館?」のフォトコンテストに応募し、昨年度
佳作に選ばれて、大きく引き伸ばされた作品が、一年間この美術館に展示されるんだそうです。
何かしら目的を持って撮影に挑んでいるからでしょうか、若々しくて達者でしたわ。ソロ写真家
全般に言えることですが、この方もすごくおしゃべりで、元々堺の出身、大阪弁のマシンガントーク
ですから、すさまじいですね。写真家の方々は、日頃単独行動が中心なので寡黙、同類と見るや、
うっ憤を晴らすかのように一転多弁になる傾向があるようです。家ではお酒も嗜みながら、撮影旅行中は
「一滴も飲まん!」徹底振り、頭が下がります。「習慣になっているだけ違うか?」という私へのご指摘は
ごもっともでした。基本暗くなったら「寝るだけ」の車中泊、せめてもの慰みに「寝酒を一杯」、
睡眠導入剤代わりに飲んでいるわけですが、体のためにも、諸経費削減のためにも、やめたらいいのは
わかっているんですがね。
「写真のテーマはなんや?」と聞かれましたが、これの返答には困ります。今回はたまたま海に面した
開聞岳を撮影したために海辺での撮影になったものの、私としてはこれは極めて珍しい出来事です。
では「山岳写真」なのかというと、私の体力や技術では、これ以上急峻な山々へ機材を担ぎ上げるのは
まず無理ですし、ましてや冬山へは行けそうもありません。冬の情景が一切ない山岳写真なんて、
「クリープを入れないコーヒー」みたいですわな。そしたらよほどオリジナリティのある写真なのかというと、
どれも既視感のあるものばかりで、独自性とは程遠い気がします。三脚が乱立するような有名撮影ポイントでは
なるべく撮影を避けたい気持ちはあるものの、土地勘のない場所では、まずポピュラーなところから
撮影を始めなければならないでしょう。時間とか季節をずらすなどして、できるだけ混雑を回避する工夫を
するとしてもね。「テーマはあとからついてくる」といえば聞こえはいい、まずは自分の嗅覚を頼りに、
なるべく人工的(近代的)な建造物を廃し、自然を中心に幅広く写していくしかないと思っています。
1から10まで一緒に行動したわけではないけど、たまたま私が気に入った寝場所に奈良のおじさん
が先にいて、撮影場所でもしばしば顔を合わせることになりました。3泊で切り上げようとした朝、
予報が変わってさらに晴天が続きそうなので、「あと二泊しますわ!」とOさんに告げて、結局5日間、
車を並べて眠ることになりました。Oさんはさらに粘って撮影続行、九州南部はその後も晴天が
多かったので、より素晴らしい写真が撮れたかもしれません。九州南端はとても暖かくて居心地よく、
私もなかなか離れがたかったです。また、一人旅なので元々あまり他人を当てにはしていないとはいえ、
同じような目的で行動している人がいるという安心感は強く、一度安定した関係が築かれると、
これを破棄するのはとても勇気のいることです。たとえばユースなどで泊まり合わせた烏合の衆でも、
連泊を重ねているとなにかしら連帯感みたいなものが育まれ、その関係を断ち切り、元の一人旅に戻るのが
とてもつらいのと同じかもしれません。
最後の朝、撮影を終えて、これからすぐ北上するとOさんに告げたら、「道中食べろ」と『スイート・スプリング?』
という名のオレンジを5個くれました。和歌山県人でもあまり聞いたことのない名前のオレンジでしたが、
これがなかなか美味で、結局途中1個いただいて、残りは母へのお土産を兼ねて持ち帰りました。
お世話になり具合からすると、本当はこちらからなにか贈り物をしてもいい関係だったのに。
♪ 土産にもらった~サイコロ二つ~ じゃあないけど、なんだかジンとしちゃってねえ。お互い命あったら、
またどこかの道の駅や撮影ポイントで一緒になることもあるでしょう。ユースなどに宿泊するよりは
はるかに人事交流は少なくなるでしょうが、車中泊中心の旅でも、この先また新たな出会いがあり、
刺激を受けるなどして、自分なりの目標やテーマが見つかればと思います。