横溝正史エッセイコレクションの第3巻「真説 金田一耕助/金田一耕助の
モノローグ」を図書館でお借りして読み終えました。表題作二編のほか、
『横溝正史自伝的随筆集(抄)』、さらに未発表エッセイ数編が収録され、
前2巻と合わせ、これで横溝さんが書かれたほぼすべてのエッセイを
読めたことになります。
真説~、~モノローグともに金田一耕助の名前がタイトルに列挙されていて、
これは注目をより高め、読者増を狙う意図が明らかで、中身は金田一のことに
触れられたものばかりではありません。当時は私自身も含め、横溝ブーム=
金田一ブームといった様相でしたので、その人気にあやかって相乗効果を
狙ったのは間違いないところです。
それでも特に真説~に関しては、フィーバー渦中の混乱ぶりが生々しく描かれ、
末席ながらそれを同時体感していた私などにも、その頃のことが懐かしく
思い出されます。映画化され、さらにそのヒットの余波でテレビシリーズが
制作されることになり、それを楽しみにしていたファンの私もひとりでしたしね。
当時主にテレビシリーズで金田一を演じた古谷一行さんが先日お亡くなりに
なられました。私にとっての金田一は、古谷版が一番イメージに近いというか
それですり込まれている感があります。改めてご冥福をお祈りします。
横溝ブームだった頃中学生だった私は、当時の角川文庫が仕掛けたムーブメント
にまんまと乗せられてしまった部類です。もしかしてそれ以降、性格がますます
注意深く懐疑的になり、そうしたブームにはできるだけ乗らないようにしている、
極力避けて通るようになったのは、その裏返しなのかもと思ったりもします。
しかしたしかにその当時はブームに踊らされ、勢いに任せ多くの金田一ものを
読みあさったことを否定はしませんが、それだけではなく、横溝さんが描く
探偵小説が根っから面白い本質を、若輩ながら見逃してはいなかったのだと
最近思い直しています。それは、近年当時の文庫本を読み返し始め、いずれも
引き込まれるように魅了され読み進めることができることで確信に至りました。
すっかりストーリーを忘れてしまっているマイナー系作品はもちろんのこと、
犯人やトリックを覚えている代表作でも関係なく再読を楽しめることから、
今後すべての作品を読み返せるのを心待ちにしています。
その一端を担ってくれた柏書房による横溝コレクションシリーズは、今回で
最後となります。現在では入手困難になっていた有名作以外の横溝本を一挙
収録、テーマごとまとめ読みできた功労に深く感謝いたします。