光山鉄道管理局・アーカイブス

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鉄道ミステリとNゲージ28・「天空の魔神」

2018-09-18 05:03:53 | 小説
 鉄道ミステリとNゲージのネタ。
 いつもなら鮎川哲也編の大人向け鉄道ミステリアンソロジーからピックアップするのですが、今回は少し趣を変えてジュブナイルから

 江戸川乱歩の少年探偵シリーズの一作「天空の魔神」から

 先に「消えた貨車」と言う作品で「荷物を積んだ貨車が1両丸ごと抜き取られる」と言う題材を紹介しましたが、こちらの方は伝票や書類の操作でもとから存在しない貨物を消失させ、代金を詐奪するという話でした。
 ですから実際に貨車が消えるという性格のトリックではありません。

 ですが本作では「本当に列車につながれた貨車が消える」それも「編成の真ん中の1両だけが!」という魔法じみたトリックが使われるのですからたまりません。
 少なくとも専用列車がひと編成丸ごと消えるコナンドイルの「臨時急行列車の消失」よりも難易度は高そうです(笑)


 休暇でとある山中の温泉宿に逗留していた少年探偵団の小林少年他2名の団員。
 そこでは近くの村で「空から巨大な手が降りてきて動物をさらい、畑に大穴をあける」と言う騒ぎが持ち上がっていました。
 迷信だと笑う団員たちですが、あるとき貨物列車が駅について見たら列車の真ん中に繋がれていた美術品を運んだ専用貨車が1両だけ消えているのが発見されます。

 はたして天空の魔神は実在するのか?もしそうでないならそのトリックは!?


 と言うのが大まかなストーリー。
 実は本作は少年探偵団ものとしては珍しい事に怪人二十面相や魔法博士は登場せず、それどころか他の全作品に登場している明智小五郎すら出てこない、全て小林少年だけで推理、解決が図られるというシリーズきっての異色作でもあります。

 ラストで小林少年によるトリックの解明が語られるのですが、ただ読むだけだったら「鉄道模型ファンなら誰でも実験したくなる」という難儀なトリックが登場するというのが本作の肝だったりします(爆笑)
 ネタバレも避けたいですが、実はトリックがあまりにも複雑なので一々解説する気になれないので出来れば一読をお勧めしたいです。
 但し机上の空論としては一応可能なトリックではあると申し添えておきます。


(ポプラ社「江戸川乱歩全集・空飛ぶ二十面相」229Pより画像引用)

 (因みに普通の模型機関車を使う限りレールへの通電の都合上、TOMIXやユニトラックのポイントでは実験できません。あ、これはネタバレかw)
 このトリックでは当然貨車が主役となりますが、これは国鉄の制式貨車ではなく地方私鉄にまだ残っている(という事になっている)旧式の連結器(ねじ式?)とバッファーが付いた貨車でないとできないと思います。

 こんな貨車や客車はNゲージで探すとなると外国形しか思いつけません。
 私の手持ちからそれらしいモデルを探すとこんな感じの車両になります。

 むしろプラレールの方が実験しやすいかもしれませんね。

 トリックが複雑なだけに他の作品に比べて理屈っぽくなってしまい面白みに欠けるのが本作の弱点です。犯人も一応登場しますがこれまたキャラクターの個性に欠けますし。
 ですから、これを面白がるのは模型ファンか鉄オタの中でも変わり者だけ(後、私みたいなボンクラ野郎)かもしれません。