光山鉄道管理局・アーカイブス

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「鉄道ミステリーの系譜・シャーロックホームズから十津川警部まで」

2022-10-18 05:57:01 | 書籍
 今回は久しぶりの衝動買い本のひとつ
 交通新聞社新書の「鉄道ミステリーの系譜・シャーロックホームズから十津川警部まで」(原口隆行著)

 わたし自身、当ブログで「鉄道ミステリとNゲージ」なんて言う無理矢理なネタを続けているだけに本書を見逃すわけにいきませんw

 本書は20世紀直前の時期から現在に至るまでの鉄道ミステリの流れを世界編(専らイギリス物ですが)と日本編に分けて俯瞰したものです。
 俯瞰本なので、ミステリ小説の歴史と鉄道ミステリがその流れの中でどう絡んできたのかを把握するにはよくまとまった一冊だと思います。

 実際、本格推理(昔は「探偵小説」の呼び名が一般的でした)の勃興・発展期は鉄道の発展期と重なるため、ある時期までこのふたつの進歩がパラレルに進行していました。当時のハイテク、時代の最先端だった鉄道を題材にしたミステリが多いのは当然と言えるかもしれません。
 それだけに古典ミステリの中には同時期の(今となっては古典機)鉄道風俗がリアルに描かれている事が多いですし、鉄道描写が作品を彩る背景としてうまく使われているケースも多いと思います。
 

 ただ、これはわたし個人の我儘なのでそのつもりで読んで欲しいのですが、本書に取り上げられている戦前や戦後の一時期の鉄道ミステリ(各作品のあらすじ付き)の紹介で鮎川哲也編のアンソロジーからの引用が多すぎて、同じアンソロジーを読んできた身からすれば少なからず物足りなかったのが残念な点でした。
 (同じ理由で鮎川哲也没後の鉄道ミステリの流れが突っ込みに欠ける嫌いをも感じましたし)

 鮎川哲也自身、載せ漏らした佳作がいくつもある点をアンソロジーの巻末で惜しんでいましたから、せめて本書の中ででもそれらの中の何作かを発掘、掲載してくれるだけでもだいぶ印象が違ったのではないかと思います。

 今回の感想は個人的な文句が多くなってしまってすみませんが、ガイドブックとして古典鉄道ミステリに興味を持っていただくにはなかなかの良書ではあると思います。