tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

郵便配達は二度ベルを鳴らす

2007-06-18 19:56:57 | cinema

まずはタイトル。「郵便配達はいつも二度ベルを鳴らす/THE POSTMAN ALWAYS RINGS TWICE」と、きちんと原題のalwaysを訳したタイトルの文庫も出ていたと思うが、映画の邦題は「郵便配達は二度ベルを鳴らす」だ。
原作者のジェイムズ・M・ケインは、この作品のタイトルは、この作品が13もの出版社から出版を断られており、断りの手紙を届ける郵便配達が2度ベルを鳴らしてやってくることから名づけたとしている。そして、14番目の手紙がベストセラーの架け橋となったのだ。やっぱり、あきらめちゃいけない。

"The title is something of a non sequitur; nowhere in the novel does a postman character appear, nor is one even alluded to. When asked for an explanation, Cain stated that the manuscript had been rejected by 13 publishers prior to being accepted for publication on his 14th attempt, so that when the publisher asked him what he wanted the work to be entitled he drew on this experience and suggested The Postman Always Rings Twice." http://en.wikipedia.org/wiki/The_Postman_Always_Rings_Twice

原作が出たのは1934年。1929年の大恐慌以来、アメリカは不況のまっただ中にあり、失業者や浮浪者が溢れていた。この映画の主人公も失業者の流れ者である。不倫、殺人、詐欺がテーマの過激なこの小説は絶賛を浴び、ベストセラーの一冊となった。しかし、道徳観の欠如した物語は当時の観客にはあまりにも衝撃的だったため、小説はしばらくは映画化されずにいた。

この小説は4度、映画化されている。フランスで1939年にピエール・シュナル監督が、『Le Dernier tournant』のタイトルで最初の映画化を行った。そして、 1942年に、イタリア人監督ルキノ・ヴィスコンティが、映画化権を得ずに『OSSESSIONE(邦題は『郵便配達は二度ベルを鳴らす』)』のタイトルで映画化。このヴィスコンティの処女作は高い評価を得たものの、アメリカでは上映されなかった。
ハリウッドで映画化されたのは、1946年版(ラナ・ターナー主演)と1981年版(ジャック・ニコルソンとジェシカ・ラング主演、ボブ・ラフェルソン監督)の2本だ。1946年版では、ケアリー・ウィルソンが製作者となり、物語を一般受けしやすいように全体の調子をあげて原作の過激な性と暴力描写は大幅に抑えさせた。監督には職人監督のテイ・ガーネットが起用され、ヒロインであるコーラの官能の度合いを薄めさせ、彼女の着る服を白一色に統一させた。その悪女コーラ役には、当時25歳のラナ・ターナーを抜擢。原作では粗雑、下品、大酒飲みで、妻に暴力をふるう男として描かれているコーラの夫ニックは映画版では大幅に変更され、原作のイメージからは程遠い人物に設定された。

1941年版では、ラナ・ターナーが最初に登場するシーンで、真っ白なショートパンツをはき、太股を大胆に晒している。主人公がひと目で魅惑されてしまうシーンだから相応の魅力的な女優が必要だが、ラナ・ターナーの美しさは際立っていた。一方、1981年版ではジェシカ・ラングが身体を張った演技で、ジェシカ・ラングの太もものSEXYさに衝撃を受けた作品だった。
時代の変遷は、セリフの過激度も変えた。1941年版では”fuck”あるいは”fucking”という言葉は1度も出てこないが、1981年版では2回出てくる。映画がより刺激的になったというか、観客の感性が麻痺してきたというべきであろうか。

なお、有名どころの映画のセリフに出てくる回数を比較してみた。調べた範囲では、どうも1970年を境に、”FUCK”なる言葉が使われるようになり、近年に至ってはそのふぁっきんぐな言葉なしにはふぁっきんぐな会話が成り立たないほどになっているようだ。

『暴力脱獄』 cool hand luke (1967) 0回
『明日に向かって撃て』  butch cassidy and the sundance kid (1969) 0回
『マッシュ』 mash (1970) 1回
『ラスト・ショー』 the last picture show (1971) 1回
『時計じかけのオレンジ』 a clockwork orange (1971) 2回
『フレンチ・コネクション』 the french connection (1971) 5回
『ゴッドファーザー』 the godfather (1972) 0回
『エクソシスト』 the exorcist (1973) 10回
『スティング』 the Sting (1973) 0回
『ディパーテッド』 the departed (2006) 258回