tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

未完成型のチャップリン

2007-06-22 19:57:36 | 日記

オトコの友情とは一体ナンなのだろう。
仲間の一人がボトルが入っているとのことで、その店での2次会。ほどなくして、はしゃぎまくっていたそいつは、カウンターで酔いつぶれて寝てしまった。その店でつぶれて寝るのは、いつものことなのだろう。店のママがため息をついた。
「これがなきゃいい人なのにねエ・・・・・・」
我々は、そんな風に言って貰えるそいつとその店のママの関係に疑惑の念を抱きはじめていた。
こいつ、いつも一人で来て、この店で酔いつぶれて寝ちまうんだ・・・・・・。
ママは、そのうち、飲んでいたワインのコルクをライターで炙って火をつけて燃やし、消し炭をつくった。
そして、おもむろに、酔いつぶれていた友人の目の周りを消し炭でこする。

例えばだ。飲み屋で寝込んでしまい、閉店で起こされたら顔がヤマンバになっていたとしよう。その人はどういう反応するのだろう。悪い夢の続きだと、また睡眠に戻っていくのだろうか。いや、この場合は、目の周りだけが黒いから、ヤマンバではなくチャーリー・チャップリンだ。つぶらな瞳で目を数回、まばたきすると、あのモダンタイムスを思い出させる。きっと、帽子をかぶってステッキを持てば、絶対にチャップリンに見えると思ったが、よくよく考えると、チャップリンには鼻の下の口ひげが必要だ。
ということで、仲間の一人の猛者がチャップリンを完成させるため、そいつの鼻の下にスミを擦り付けようと鼻先にコルクを持っていった。
ところが、どうしたことか。鼻の下にスミを塗るつもりが、鼻の頭にスミがついてしまったではないか。明らかな初歩的ミスである。
そして、さらに由々しき事態が起こった。完全に酔っ払って寝ていたはずのチャップリンが目を覚ましたのだ。
うーん。こうも中途半端な状況が、我々、酔っ払いをドキドキさせる。その店にいたすべての人間は、未完成のチャップリンを完成形にするチャンスがもう一度来るように祈ったのは言うまでもない。
しかし、敵も然るものである。未完成型のチャップリンは、その後、完全に復活してしまったのだった。

未完成型チャップリンよ。鼻先と目の周りだけ黒いと、まるでパンダなんすけど・・・・・・。
ここで、完成型としてパンダが良いか、チャップリンが良いのかは意見が分かれるところであろう。私は、あくまでもチャップリンに固執する。そのわけは、パンダ目だったらすでにヤマンバ達がその基礎を築いており、見知らぬ人からはそういうオールドファッションなんだと思われてしまう可能性があるからである。どうせやるなら、オリジナルのニューファッションをすべきだろう。チャップリンのメークして、街中を歩けば、すれ違う人がすべて振り返るだろうことは酔っ払いの私にも分かる。

ということで、閉店の時間になり、我々はその店を追い出された。駅に向かう道すがら、大勢の通行人とすれ違う。
が、我々の誰一人として、彼の顔に塗りつけられたスミについて触れる者はいない。みんな鬼である。

パンダから隠れて、我々は歩きながらヒソヒソとやっていた。
「バレると思ったけど気づかないもんだなぁ」
「このまま駅に着いちまうぞ」
「どうすんだよ」
「たぶん、そのうち自分で気づくよ」
ひどい連中である。

そして、電車の中。そのときには、我々はパンダのことはすっかり忘れていた。見慣れぬヤマンバが一時、大量に発生した頃に、だんだん慣れてきてなんとも思わなくなってきたように、パンダ目のメークも見慣れるとそれは刺激がなくなってしまうのだろう。
かうくして、パンダは若妻が待つ自宅へと一人で帰っていった。
その夜、パンダの家でなにがあったのかは、誰も知らない。・・・・・・オトコの友情とは一体ナンなのだろう。

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