映画の話をするまでもなく、日本でも花嫁探しは大変だ。過疎に悩む自治体を中心に、「異国の花嫁」探しはひきも切らないのが現状のようである。この時、もしもデビット・ベッカムの写真を添えて、異国に花嫁募集をしたのなら・・・・・・。まあ、実物がせめて私のようにブラッド・ピットを少々変形したようなガイジン離れした顔の持ち主なら、さほど罪は大きくないだろう。と書くのは私が得意とする謙遜だ。決して冗談ではない。
因みに、お気づきかもしれないが、動物行動学では、メスがオスを選択する。これは、人間行動学にも当てはまると言う意見が私の周りで聞こえる。メスがオスを選択する際に、ベッカム>>>>>>私という誤まった選択をするケースが多い。この時の基準が顔である。ちなみに、所得を基準にしても、選択結果には変わりはない。なぜ、変形していない顔が選択の基準になるのかというのが、今回の私の話の要点だ。映画は、それなりにみんなが幸福をつかむ。ついでに、ネタバレもしておけば「理想は高く、妥協は早く」、これが肝要だというのがこの映画のテーマだ。はい、そこ!もう終わってどうすんだ?というツッコミはつつしむように。
遺伝子は生物を乗り物として悠久の時間を旅する。遺伝子のコピーを残す戦略が動物そして人間の行動を左右するというのが最近の流行のようである。
近代生物進化論はラマルクの“獲得形質遺伝説=用不用説”、ダーウィンの“自然淘汰論”(環境に適応した個体が生き残り子孫を残す事がたび重なり種が進化する)に始まった。その後 様々な進化論が発表される中で、今西錦司(1979年文化勲章受賞)は個体進化から種の進化を説明するダーウィン説の無理を退けて“種は変わるべき時に変わる”と種全体の進化過程を説明した。
遺伝子(DNA)の研究が進み遺伝のメカニズムが解明され、進化論も木村資生(1992年ダーウィンメダル受賞)の“中立進化説”など新しい学説が発表された。一方DNA研究の成果は動物行動学の分野にも広く取り入れられている。動物行動学創始者ローレンツ(1973年ノーベル賞医学生理学賞)は“動物の行動は遺伝子が決めている”と仮説を唱えている。
1964年、イギリスの生物学者、ウィリアム・ドナルド・ハミルトンは、“血縁淘汰説(動物が利他的行動を起こすのは血縁者を助け、血縁者の遺伝子を残すための遺伝子が組み込まれているため)を発表し、ドーキンス(1997年コスモス国際賞)は、“利己的遺伝子説”(生物は遺伝子の乗り物、全ては遺伝子の命ずるまま)としている。
早い話が、メスがオスを選ぶ際には遺伝子(DNA)レベルでの本能的な意思が左右するのである。つまり、私はメスに遺伝子レベルで嫌われていることになる。
メスがオスを選択する基準のひとつが顔であることを前述したが、これに関しては面白い仮説がある。竹内久美子(1992年講談社出版文化賞)の『シンメトリーな男、 2000年新潮社 ISBN 4103781041、2002年新潮文庫 ISBN 4101238154』によれば、「左右対称の身体を持つ人間の男性ほど異性にモテて、床上手」(行動生態学者:ランディ・ソーンヒルと心理学者:スティーヴ・ガンゲスタッドによる研究)らしい!竹内の一連の著作をめぐっては、専門の生物学研究者から論理の飛躍、曲解との激しい批判が出ており、いわゆるトンデモ本と見る向きもあるが、その反面、素人をだます説得力もあることは否めない。というのも、オスがメスを引き付ける重要な要素については寄生虫が強く関与しており、体あるいは顔がシンメトリー(左右対称)であることが寄生虫に対して強い個体であることをメスにアッピールすることができるとしているからだ。(つまり、寄生虫に寄生されてなければ、左右対称に成長できるって意味ス)
人間の顔の表情については、44通りの基本動作(AU=action unit)があるとされる。これらを組み合わせていろいろな表情ができる。たとえば、笑い顔はAU12、AU26、AU6によって合成できる。〔AU12:口の端を引き上げる、AU26:顎を少し下げて口を開ける、AU6:頬を少し上に上げる〕。心理学では、人間の感情には六つの基本感情があり、その組み合わせで、感情が表現できるとされている。六つの基本感情とは、「驚き」「恐れ」「怒り」「嫌悪」「悲しみ」「幸福・喜び」の六つである。つまり、生きていく上で「幸福・喜び」の多いオスは、その表情から自然とメスを引き付けることができるのかもしれない。一方、「驚き」「恐れ」「怒り」「嫌悪」「悲しみ」など強いストレスに晒されているオスは、顔の左右のバランスが崩れがちで、表情が暗くなり自然とメスから嫌われることとなる。
事実、原島博(東京大学工学部電子情報工学科)の 著書『人の顔を変えたのは何か:河出書房新社』によれば、個人個人の顔には、「左右の不均衡」があるが、複数の人の顔を平均すると、その「欠点」とも言える不均衡が取り除かれるとしている。つまり、右に崩れた顔と、左に崩れた顔の平均をとれば左右のバランスがとれるようになるのだ。このようにして合成した顔写真は、より魅力的な顔になるらしい。実際、平均する顔が増えれば増えるほど「魅力的」に見えるようになるようだ。
http://www.hc.ic.i.u-tokyo.ac.jp/facegallery/index.html
半信半疑ながらも興味深い説ではあるのだが、この件については検証のしようがない。なお、「オトコは顔じゃないのよ」という妙齢の女性がいらっしゃいましたらご連絡ください。私のベッカムじゃない写真をお送りいたします。