今日、こんなこ難しい話をしようと思ったきっかけは、実は今の寄主の行動に問題があったからだ。私の寄主は、健康な独身のOL。ひとり暮らしOLライフをお洒落に楽しみながら、夢に向かって節約&資格取得をガンバっている。仕事は経理&営業サポート、性格は典型的なO型の性格で、イヤな事はすぐ忘れる。だが、短所は小心者なとこと短気さ。スポーツジムへ通いだしてからもうすぐ6年になる。好きな俳優はチョン・ウソン(韓)という、どこにでもいるようなOLだ。ただ、この寄主が、2ヶ月前からとんでもない男と付き合いだした。
相手の男は自称36歳。2人は某有名出会い系サイトで知り合った。相手はコンピュータ関係の某大手会社に勤めており、年に1~2回海外へ仕事で行くと言っている。外見は若々しく見え、バリバリに仕事ができるような印象を与える。結婚歴は無く、デート中には「早く結婚して子供が欲しい」と、よく口にする。
デートは、車でドライブ。ホテルのラウンジでお茶をして、夜は家まで送り、2回目のデートで結婚しようと言ってきた。デートはいつも高級レストラン。「僕は君を守る。君のような人に出会えてうれしい、結婚しよう」が、そいつのセリフだ。女性が喜ぶツボを心得ていて、知り合ってわずか1ヶ月というのにいろいろアプローチをかけてくる。あまり恋愛なれしていない寄主は、男から言われたことや、してくれることすべてに夢見心地の想いをしている。
ここまではいい。恋している女は、異性を惹きつけるために瞳孔が開いて瞳が潤んで見えたり、肌も美しくなったり、心身のバランスがとれて我々寄生虫にとっても非常に居心地の良い環境となる。しかしだ。交際が始まって1ヶ月が過ぎた頃、「結婚して欲しい」と相手の男が切り出したのだった。「結婚に機に会社を辞め独立しようと思うのだが、独立資金が少し足りないので、150万円ほど貸してほしい」と相手が言い出したのである。その言葉を聞いて以来、寄主の精神状態は危うくなった。つまり、相手に対する不安、疑心暗鬼、期待、信頼など種々の感情が沸き起こり、夜も寝られず、食事ものどを通らない状態になってしまった。もう、お気付きと思うが、寄主は我々寄生虫にとってはなはだ居心地の悪い環境になってしまったのである。
結婚詐欺にあって、寄主が自殺でもすれば、一蓮托生の身の上の我々は無理やり寄主と道連れになるしかない。言ってみれば、自覚のない無理心中だ。と、このように命にかかわる重大事だったので、私も必死だった。寄主の脳に向けて、いろいろなイメージを送って、事態の改善を図った。そして、こうした地道な努力が実って、寄主も自分ひとりでくよくよ悩んだりせずに、友達に打ち明けて相談するようになっていた。
「とにかく冷静になりなよ。燃え上がっちゃうと盲目になっちゃうよ」
「すごくやさしい人なの。いつもおしゃれなお店に連れてってくれるし、今度、海へ行こうってドライブに誘われたの」
「へー、そんな素敵な人なんだー。良かったわね。私も一度会ってみたいなあ。既婚者の目で私がみてあげるわ。でも、なにがあっても絶対にお金は貸したらダメだよ」
相手との結婚を信じていた寄主は、「どうせ結婚費用に貯めたお金だから・・・・・・」と思い、貯金をおろし150万円を用意した。そして、その週末に友達と3人で逢ってもらおうと相手の携帯に電話したところ、仕事が忙しくてしばらく会えないと相手の男は言う。そして突然、相手の男の携帯電話が不通になってしまったのだ。男との連絡方法は携帯電話しか無く、途方に暮れた寄主は男から聞いていた会社に問い合わせてみたのだが、その会社にそのような男は実在しなかったのだ。
「お金渡す前に気がついてよかったね」
「でも、いまでもあの人が結婚詐欺師だったなんて信じられない」
「メールしてて悪い人間ってわらかなかったの?」
「毎日かならずメールしてくれるから、大丈夫だと思っていた・・・・・・」
「よっぽどやり方がうまかったのね!私が会ってもだまされてたかも」
「今考えれば、2人で居る時に携帯電話が鳴っても電話に出ないことが多かったし、3人で会おうって言った時はみょうにきょどってたし。会社に電話したのは、きっと虫の知らせがあったからよ」
「よかったね」
本当によかった。これでもう少し生き延びられそうだ。寄主が若いといろいろ苦労が多い。我々の苦労、わかっていただけただろうか?あの年代の女性が、不意に気が変わるのは、実は我々のせいなんだ。
虫 の 知 ら せってやつだ。
おわり。