事業承継税制の納税猶予制度で株式を担保提供する件で、「会社の登記事項として公示する」ことが議論されているようなことを、複数の方が著書でお書きになっているようである。当該解説は、司法書士の立場からすると、登記制度に関して甚だ理解不足の記述であり、信憑性にかけるように思われる。
例えば、「新時代の事業承継」(清文社)では、税理士今仲清氏(事業承継税制検討委員会委員)が、次のように書いている。
(以下、引用。)
1 登記事項とされる
平成21年1月1日から株式は電子化され、紙ベースの株式はなくなります。したがって担保に供されるといっても、具体的には代表者が保有していて相続によって取得した株式について、会社の登記事項の中の一つして相続税の納税猶予額を債権とし、財務省を債権者として抵当権設定されることとなると思われます。
(引用おわり)
「株券」の電子化は、上場企業だけの話であるし、事業承継税制の納税猶予制度は、そもそも上場企業は使えない。出発点から狂っている。また、「会社の登記事項の中の一つして・・・抵当権設定」???「株主」の納税猶予について、なぜ「会社」の登記事項にする必要があるのだろうか?農地に関する納税猶予のように、不動産に担保設定するというのなら話はわかるのだが・・。
今仲氏の私見なのか、事業承継税制検討委員会委員の共通認識なのかわからないが、「会社の登記事項」は、会社法その他の法律の規定により規定される(商業登記法第1条)のであり、法改正が必要であるが、未だそのような改正は行われていないし、そもそもあり得ない話である。
いささか旧聞に属するが、記事として取り上げていなかったようであり、誤解している向きもあるかもしれないので、取り上げておく。