第3部 その他
第3 その他
1 募集株式が譲渡制限株式である場合等の総数引受契約
募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合(第205条)であって,当該募集株式が譲渡制限株式であるときは,株式会社は,株主総会の特別決議(取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議)によって,当該契約の承認を受けなければならないものとする。ただし,定款に別段の定めがある場合は,この限りでないものとする。
(注)募集新株予約権を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合(第244条第1項)であって,当該募集新株予約権が譲渡制限新株予約権であるとき等についても,同様の規律を設けるものとする。
cf.
平成20年2月12日付「総数引受契約を締結する場合に、取締役会の決議を要するか?」
松井信憲「商業登記ハンドブック(第2版)」(商事法務)168頁,287頁
募集株式の発行の手続に着手する前から新株の引受先が既に決まっており,迅速に募集株式の発行の手続をとりたい株式会社にとっては,会社法第203条及び第204条の規律が障害と感じられ,その適用を回避するために,会社法第205条の規定による総数引受契約の締結を選択する面があった。
したがって,改正するのであれば,公開会社でない株式会社においては,割当先の決定(会社法第204条第2項)について株主総会の決議を原則としつつ,取締役の決定(取締役会設置会社にあっては取締役会の決議)に委任することができるものとし,総数引受契約の承認についても,同様の規律を採用すべきであったと考える。
しかし,上記のとおりの要綱案となってしまった・・・。
登記実務の取扱いとしては,このような場合の募集株式の発行による変更の登記の申請書には,総数引受契約の承認に係る株主総会議事録又は取締役会議事録を添付しなければならないものとされるであろう。