司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

賃料債権の差押えの効力発生後に賃貸借契約が終了した後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることの可否

2012-09-04 15:54:26 | 民事訴訟等
最高裁平成24年9月4日第3小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82521&hanreiKbn=02

「賃料債権の差押えを受けた債務者は,当該賃料債権の処分を禁止されるが,その発生の基礎となる賃貸借契約が終了したときは,差押えの対象となる賃料債権は以後発生しないこととなる。したがって,賃貸人が賃借人に賃貸借契約の目的である建物を譲渡したことにより賃貸借契約が終了した以上は,その終了が賃料債権の差押えの効力発生後であっても,賃貸人と賃借人との人的関係,当該建物を譲渡するに至った経緯及び態様その他の諸般の事情に照らして,賃借人において賃料債権が発生しないことを主張することが信義則上許されないなどの特段の事情がない限り,差押債権者は,第三債務者である賃借人から,当該譲渡後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることができないというべきである」
コメント (1)

司法書士法第3条第2項第2号の法務大臣の認定(平成24年9月3日付け)

2012-09-04 15:05:14 | 司法書士(改正不動産登記法等)
司法書士法第3条第2項第2号の法務大臣の認定(平成24年9月3日付け)について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00126.html

司法書士法第3条第2項第2号の法務大臣の認定(平成24年9月3日付け)の基準等について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00127.html

 今回は,考査受験者数1259名,認定者829名,認定率65.8%である。
コメント

会社法制の見直しに関する要綱案についての考察(4-2)

2012-09-04 14:38:40 | 会社法(改正商法等)
第3部 その他
第3 その他
4 発行可能株式総数に関する規律
http://www.moj.go.jp/content/000100819.pdf
※ 27頁

会社法
 (株式の超過発行の罪)
第966条 次に掲げる者が、株式会社が発行することができる株式の総数を超えて株式を発行したときは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。
 一 発起人
 二 設立時取締役又は設立時執行役
 三 取締役、執行役又は清算株式会社の清算人
 四 民事保全法第56条 に規定する仮処分命令により選任された取締役、執行役又は清算株式会社の清算人の職務を代行する者
 五 第346条第2項(第479条第4項において準用する場合を含む。)又は第403条第3項において準用する第401条第3項の規定により選任された一時取締役、執行役又は清算株式会社の清算人の職務を行うべき者


 いわゆる授権資本制度とは,募集株式の発行を随時,機動的に行う必要性と,取締役会に無制限な発行権限を付与するのは適当でないという要請から,一定の枠内で取締役会に募集株式の発行の権限を付与するものである。

 したがって,会社法第966条は,通常,公開会社において取締役会で募集事項を決定する場面を想定している。

 しかし,公開会社でない株式会社において株主総会で募集事項を決定する場合であっても,取締役等が議案を提出したような場合には,本罪は成立し得る(葉玉匡美・「論点体系 会社法6」(第一法規)502頁)。

 ところで,超過発行がされた場合,募集株式の発行の無効事由であると解されている。したがって,6か月の提訴期間を経過しない限り,これによる変更の登記をすることはできない(会社法第828条第1項第2号,商業登記法第25条)。逆に言えば,6か月を経過すると,発行可能株式総数を超過する発行済株式の総数の登記ができちゃうわけである。

 公開会社で超過発行がされた後に,株主総会において,発行済株式の総数の4倍を超えない範囲内で発行可能株式の総数を増加する定款の変更の決議がされた場合には,民事上の瑕疵が治癒され,6か月の提訴期間を経過しなくても,募集株式の発行による変更の登記及び発行可能株式の総数の変更の登記は,いずれも受理されているようである(松井信憲「商業登記ハンドブック(第2版)」(商事法務)235頁)。

 しかし,枠外発行を条件として,発行可能株式総数を増加する定款の変更の決議がされた場合,無効事由を条件とする定款の変更の決議には瑕疵があり,上記のように枠外発行の瑕疵を治癒することができず,登記をすることもできない(松井・前掲)。超過発行がされた後に改めて株主総会の決議を行わない限り,6か月の提訴期間経過後に,募集株式の発行による変更の登記をすることができるのみである。



 さて,取締役会設置会社においては,株主総会は,会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り,決議をすることができる(会社法第295条第2項)。会社法に違反する内容の決議をすることはもちろんできないものである。

 しかし,授権資本制度は,取締役会の専断的な募集株式の発行によって既存の株主の持株比率が希釈化されてしまうことを防止することが本来の目的であるから,枠外発行となる場合であっても,株主が許容しているのであれば,これを否定する理由はないはずである。超過発行後の追認で瑕疵が治癒されるのに,枠外発行が効力を生ずる前の定款変更では瑕疵が治癒されないというのも,不合理な感がある。枠外発行を条件として,発行可能株式総数を増加する定款の変更の決議がされた場合に,4倍規制の枠内となるのであれば,是認してもよいのではないだろうか。

 この点,吸収合併における事案であるが,吸収合併に際しての発行可能株式総数を超えた株式の発行及び当該枠外発行の数を前提とする発行可能株式総数の増加に係る条件付定款変更の可否について,法務省民事局商事課長通知(平成20年9月30日付法務省民商第2665号)により「吸収合併に際し,公開会社である吸収合併存続会社が,吸収合併消滅会社の株主に対して合併対価として当該吸収合併存続会社の株式を交付するために,当該株式をその発行可能株式総数を超えて発行することとするとともに,あらかじめ当該吸収合併の効力発生前に当該吸収合併存続会社の株主総会において当該効力発生を停止条件としてその枠外発行の数を前提とする当該発行可能株式総数の増加に係る定款の変更の決議をすることは可能である」として許容されており,同通知の射程を募集株式の発行の場合にも拡げることは可能であると考える。
コメント

助成金制度悪用詐欺に懲役4年

2012-09-04 09:10:21 | 会社法(改正商法等)
産経新聞記事
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120904/kyt12090403370002-n1.htm

 真の意味で活用されている助成金は,どれほどあるのだろうか。コンサルタントを儲けさせているだけのような・・・。
コメント

会社法制の見直しに関する要綱案についての考察(5)

2012-09-04 05:34:57 | 会社法(改正商法等)
第1部 企業統治の在り方
第2 社外取締役及び社外監査役に関する規律
(1)社外取締役等の要件における親会社等の関係者等の取扱い
(2)社外取締役等の要件に係る対象期間の限定
http://www.moj.go.jp/content/000100819.pdf
※ 5頁以下

 社外取締役の選任の義務付けはされなかったが,「監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る。)のうち,金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならない株式会社」において,社外取締役が存しない場合には,社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告の内容とするものとされた。この点,相当な理由がない限り,社外取締役を置かなければならないと解すべきとの指摘もある。

 社外取締役等に関する規律の適用について,経過措置をどのように定めるのか。ちなみに,これまでの改正時における登記実務の経過措置は,次のとおりである。

(1)平成13年改正商法(法律第149号)により,社外取締役の登記制度が導入された際
 改正法施行の際現に在任する取締役が社外取締役の要件を満たす場合には,改正法の施行の日を含む任期中に限り,当該取締役が社外取締役である旨の登記をすることを要しないこととされた(改正附則第2条本文)。

(2)会社法施行の際
 社外取締役の登記をしている旧株式会社は,会社法の規定により当該登記の必要がなくなる場合であっても,当該社外取締役の任期中に限り,当該登記の抹消をすることを要しないとされた(整備法第113条第7項)。


 今般,社外取締役等の要件の厳格化により,改正法施行の際現に在任する取締役が,現行会社法下において社外取締役の要件を満たすものの,改正法上の要件を満たさない場合があり得る。したがって,施行に当たっては,十分な周知期間が必要であるし,改正法施行の際現に在任する取締役が現行法上の社外取締役の要件を満たす場合には,改正法の施行の日を含む任期中に限り,当該取締役については改正法を適用しないこととする等の経過措置をとるべきであろう。
コメント