国会がこうゆう状況となったため,「会社法等の一部を改正する法律案」等が秋の臨時国会に上程されるのか予断を許さない状況になりつつあるところであるが,「会社法制の見直しに関する要綱案」について,商業登記実務の観点から若干の検討を試みることとする。
cf. 会社法制の見直しに関する要綱案
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900149.html
第3部 その他
第3 その他
2 監査役の監査の範囲に関する登記
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社について,当該定款の定めを登記事項に追加するものとする。
cf. 平成24年8月15日付「法制審議会会社法制部会第22回会議(平成24年7月4日開催)議事録」
平成24年4月11日付「整備法第53条と監査役設置会社」
平成24年4月10日付「会計監査限定監査役と監査役設置会社の登記の問題~会社法制の見直しの裏事情?」
改正の趣旨は,監査役設置会社(会社法第2条第9号)であるか否かの公示をすることにあるわけであるから,会社法第2条第9号の監査役設置会社についてのみ,その旨を登記事項とし,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社については,監査役設置会社と登記しない,すなわち登記事項から外す,という取扱いが最も明瞭であるはずである。
しかし,上記のとおりの要綱案となってしまった・・・。
さて,登記事項が追加されるわけであるが,登記実務の観点からは,それほど単純ではない。上述のとおり,改正の趣旨は,監査役設置会社(会社法第2条第9号)であるか否かの公示をすることにあるわけであるが,改正法の施行前から存する株式会社について,当該定款の定めの設定の年月日を登記事項とするか否かにより,会社法施行時に遡って監査役設置会社である旨を公示対象とするのか否かの別が生じることとなることから,二つの立場があり得る。
(1)改正法施行日において,当該定款の定めが存する旨を登記する(設定の年月日は,登記事項としない。)。
(2)当該定款の定めを設定した年月日も登記事項とする。
(1)であれば,話は単純であるが,(2)の立場を採るとすると,次のような場合分けが必要となろう。
ア 会社法の施行日(平成18年5月1日)において,整備法第53条の適用により,当該定款の定めがあるものとみなされた株式会社
イ 会社法の施行日後に設立された株式会社であって,設立の時から当該定款の定めを設けていた株式会社
ウ ア又はイ以外の株式会社であって,会社法の施行日後に,定款の変更により,当該定款の定めを設けた株式会社
エ 会社法の施行日後において,当該定款の定めの設定及び廃止を繰り返し,改正法の施行日において,当該定款の定めを設けている株式会社
アの場合,会社法の施行日(平成18年5月1日)において,整備法第53条の適用により,当該定款の定めがあるものとみなされた旨を登記する。変更の登記を申請するときの添付書面としては,定款及び代表者からの上申書(整備法第53条の適用により,当該定款の定めがあるものとみなされた旨)が考えられる。
イの場合,設立の時から当該定款の定めを設けていた旨が判ずるように登記する。変更の登記を申請するときの添付書面としては,定款及び代表者からの上申書(設立の時から,当該定款の定めがある旨)が考えられる。設立後5年以内であれば,登記所に設立登記の際の申請書等が保存されていることから,定款等は不要であるとも考えられるが,設立後に当該定款の定めを廃止していないことを証する意味から,定款等を添付しなければならないものとすべきであろう。
ウの場合,当該定款の定めを設定した旨及びその年月日を登記する。変更の登記を申請するときの添付書面としては,定款の変更の決議を行った際の株主総会議事録が考えられる。
しかしながら,改正法の施行前から存する株式会社について,当該定款の定めの設定の年月日を登記事項とする立場を採り,アからウまでのような区分して登記する取扱いを採るとすると,エの場合をどうするかという問題が生ずる。設定及び廃止の経緯を登記せよなどという取扱いは,あり得ない話であるが,直近の当該定款の定めの設定についてのみを登記するというのもアからウと整合的でないように思われる。
このように考えると,(1)の立場を採って,改正法施行日時点において,当該定款の定めがある株式会社について,その旨を登記する(設定の年月日は,登記事項としない。)という取扱いを採るべきなのであろう。
猶予期間は,例によって,6か月・・・かな。
cf. 会社法制の見直しに関する要綱案
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900149.html
第3部 その他
第3 その他
2 監査役の監査の範囲に関する登記
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社について,当該定款の定めを登記事項に追加するものとする。
cf. 平成24年8月15日付「法制審議会会社法制部会第22回会議(平成24年7月4日開催)議事録」
平成24年4月11日付「整備法第53条と監査役設置会社」
平成24年4月10日付「会計監査限定監査役と監査役設置会社の登記の問題~会社法制の見直しの裏事情?」
改正の趣旨は,監査役設置会社(会社法第2条第9号)であるか否かの公示をすることにあるわけであるから,会社法第2条第9号の監査役設置会社についてのみ,その旨を登記事項とし,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社については,監査役設置会社と登記しない,すなわち登記事項から外す,という取扱いが最も明瞭であるはずである。
しかし,上記のとおりの要綱案となってしまった・・・。
さて,登記事項が追加されるわけであるが,登記実務の観点からは,それほど単純ではない。上述のとおり,改正の趣旨は,監査役設置会社(会社法第2条第9号)であるか否かの公示をすることにあるわけであるが,改正法の施行前から存する株式会社について,当該定款の定めの設定の年月日を登記事項とするか否かにより,会社法施行時に遡って監査役設置会社である旨を公示対象とするのか否かの別が生じることとなることから,二つの立場があり得る。
(1)改正法施行日において,当該定款の定めが存する旨を登記する(設定の年月日は,登記事項としない。)。
(2)当該定款の定めを設定した年月日も登記事項とする。
(1)であれば,話は単純であるが,(2)の立場を採るとすると,次のような場合分けが必要となろう。
ア 会社法の施行日(平成18年5月1日)において,整備法第53条の適用により,当該定款の定めがあるものとみなされた株式会社
イ 会社法の施行日後に設立された株式会社であって,設立の時から当該定款の定めを設けていた株式会社
ウ ア又はイ以外の株式会社であって,会社法の施行日後に,定款の変更により,当該定款の定めを設けた株式会社
エ 会社法の施行日後において,当該定款の定めの設定及び廃止を繰り返し,改正法の施行日において,当該定款の定めを設けている株式会社
アの場合,会社法の施行日(平成18年5月1日)において,整備法第53条の適用により,当該定款の定めがあるものとみなされた旨を登記する。変更の登記を申請するときの添付書面としては,定款及び代表者からの上申書(整備法第53条の適用により,当該定款の定めがあるものとみなされた旨)が考えられる。
イの場合,設立の時から当該定款の定めを設けていた旨が判ずるように登記する。変更の登記を申請するときの添付書面としては,定款及び代表者からの上申書(設立の時から,当該定款の定めがある旨)が考えられる。設立後5年以内であれば,登記所に設立登記の際の申請書等が保存されていることから,定款等は不要であるとも考えられるが,設立後に当該定款の定めを廃止していないことを証する意味から,定款等を添付しなければならないものとすべきであろう。
ウの場合,当該定款の定めを設定した旨及びその年月日を登記する。変更の登記を申請するときの添付書面としては,定款の変更の決議を行った際の株主総会議事録が考えられる。
しかしながら,改正法の施行前から存する株式会社について,当該定款の定めの設定の年月日を登記事項とする立場を採り,アからウまでのような区分して登記する取扱いを採るとすると,エの場合をどうするかという問題が生ずる。設定及び廃止の経緯を登記せよなどという取扱いは,あり得ない話であるが,直近の当該定款の定めの設定についてのみを登記するというのもアからウと整合的でないように思われる。
このように考えると,(1)の立場を採って,改正法施行日時点において,当該定款の定めがある株式会社について,その旨を登記する(設定の年月日は,登記事項としない。)という取扱いを採るべきなのであろう。
猶予期間は,例によって,6か月・・・かな。