本日は,商事法務研究会の新春会員講演会&新年賀詞交歓会に出席。基調講演は,筒井健夫法務省民事局大臣官房審議官。御題は,「民事法制をめぐる現状と課題」。
1 概況
昨年の通常国会は,法務省関係で5本の法案を提出。異例な繁忙期といえる。今年の通常国会も同様。
債権法の改正に時間がかかったため,他の改正が停滞していた。
成立した改正法について,施行準備及び周知啓発活動をしている。
2 平成30年常会で成立した法律
(1)人事訴訟法等の一部を改正する法律(平成30年法律第20号)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00217.html
施行期日は,平成31年4月1日である。
cf. 内野宗揮(法務省大臣官房参事官兼民事局参事官)編著「一問一答 平成30年人事訴訟法・家事事件手続法等改正――国際裁判管轄法制の整備」(商事法務)
https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=7821588
(2)商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律(平成30年法律第29号)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00219.html
施行期日は,平成31年4月1日である。
cf. 松井信憲(法務省大臣官房国際課長(元法務省民事局参事官))=大野晃宏(法務省民事局参事官)編著「一問一答 平成30年商法改正」(商事法務)
https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=7234662
(3)民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)(平成30年法律第59号)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html
施行期日は,2022年4月1日である。
cf. 笹井朋昭・木村太郎編著「一問一答 成年年齢引下げ」(商事法務)
https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=7665460
(4)民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(相続法の改正)(平成30年法律第72号)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html
施行期日は,
・自筆証書遺言の方式を緩和する方策 2019年1月13日
・原則的な施行期日 2019年7月 1日
・配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等 2020年4月 1日
(5)法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
施行期日は,2020年7月10日である。
* 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号)
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000022.html
一部は,平成30年11月15日から施行された。残部は,2019年6月1日施行予定である。
3 法制審議会における調査審議の状況
(1)については,答申済み。その余は,今年2月に答申されることが見込まれている。全て,今年の通常国会に上程の方向(ただし,(2)は,先送りになりそうである。)。
(1)民事執行法制の見直し
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00295.html
(2)公益信託法制の見直し
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingikai_shintaku.html
(3)会社法制(企業統治等関係)の見直し
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00297.html
(4)戸籍法制の見直し
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00298.html
(5)特別養子制度の見直し
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00299.html
4 今後の課題等
(1)債権法の改正(2020年4月1日施行予定)に関する施行準備
あらゆる根保証について,極度額を定める必要がある(強行規定)に注意。入院や施設入所の場合の保証についても,該当する可能性がある。
cf. 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
(2)物権法制の見直し
・変則型登記の解消に向けての特例法を今年の通常国会に上程する予定。
・民法及び不動産登記法の見直し(所有権の在り方,相続登記の義務化等)について法制審議会への諮問を含めて検討。
・担保法制の見直し(譲渡担保の法定等)も取り組んで行かなければならない課題。
cf. 登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会
https://www.kinzai.or.jp/specialty/registration.html
(3)家族法制の見直し
動かし方がわかってきたので,今後進めて行く。
cf. 嫡出推定制度を中心とした親子法制の在り方に関する研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/cyakusyutsusuitei
(4)裁判手続のIT化
近い将来立法の動きが出てくるだろう。
cf. 民事裁判手続等IT化研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/saiban-it