取締役会設置会社において,
取締役A(平成19年9月○日就任)
取締役B(平成24年8月○日就任)
取締役C(平成24年8月○日就任)
代表取締役A(平成19年9月○日就任)
と登記されている場合(決算期は,9月30日)に,その後,取締役会設置会社の定めを廃止して,次のような登記がされたとする。
取締役A(平成23年12月31日退任)
取締役B(平成28年12月31日退任)
取締役C(平成28年12月31日退任)
代表取締役A(平成23年12月31日退任)
取締役D(平成30年7月○日就任)
代表取締役D(平成30年7月○日就任)
登記記録から読み取れるのは,おそらく定款の任期の定めを失念して選任懈怠となっていたところ,今般,会社の機関設計をリニューアルし,役員も総替えしたのであろう,であり,何の問題もなさそうである。
ところが,閉鎖事項証明書で確認すると,取締役B及びCが就任する前の取締役については,
取締役E(平成19年9月○日就任,平成24年8月○日辞任)
取締役F(平成24年1月○日就任,平成24年8月○日辞任)
とあるとする。
とすると,平成19年9月○日という同じ日に就任した取締役について,取締役Aについては平成23年12月31日退任,取締役Eについては平成24年8月○日辞任という,一見明らかに矛盾した登記がされていることがわかる。
おかしい話ということになる。
もちろん,可能性としていえば,取締役ごとに異なる任期の定めを設けることは可能であるし,「退任」も任期満了のみを意味するものではないが,一般的ではない。
おそらく,取締役E及びFの辞任の登記を申請する際に,任期中だと勘違いしたのであろう。辞任の登記は,辞任届だけで簡単にできてしまう(登記所は,10年以内であれば,任期中の辞任と善解する。)が,定款の任期の定めをよく確認しましょう,である。
cf.
平成21年2月27日付け「取締役の辞任と定款の添付の要否」
また,仮に辞任の登記の当時はうっかりしたとしても,今回,取締役Aの退任の登記をするにあたって,取締役B及びCについて登記されている就任日がそれよりも後の日付であることから,申請する側も受理する側も「おかしい」と気付くべき事案であろう(いわゆる任期揃えの定めがなければ,あり得ないではないが。)。
話題の事件の関係会社の登記記録を眺めていて,ふと気付いた次第。